2021年同人問題を語れ(中編)

イベントを開けないことに頭を抱えているのはコミケだけではない。自身にとってはコスプレ撮影が不可能…そもそもコスプレ自体認めていない…と云う理由で無関係と云う認識でいる、コミティアと云うイベントも同じだ。
このイベントも、秋に予定しているイベントが飛べば、復活は難しいと云うツイートが回ってきた。コミケもそうだが、あくまでも表現発表と交流の場を提供すると云う名目が有る一方で営利目的ではなく、それが他のイベント陣営には真似できないと言われている部分でもある。
しかし、営利目的ではないことが「一度でも飛べば団体として終わる」危険性の要因だと認識している。そして、直近の東京を見ると、飛ぶ可能性が日に日に高くなっている。
更には、営利目的である企業イベントも同様だ。今頃、経理担当は電卓を叩きながら頭を抱えているだろう。

イベントが開かれなければ、イベントは潰れる。サークル代や来場客の入場料…パンフレット含む…が収入源であり、それがゼロになる一方、事務局としての経費は少なからず掛かる。
前回のイベントの利益をまるごとプールして、そのまま次回に投じると云う簡単な話は、元々の活動費を私財から捻出し手弁当でやっているような、個人名義で開く小規模イベントであれば可能だろうが、一定の規模になるとそれは成り立たなくなる。

イベントが潰れても、ネット通販やショップ委託販売と云う販売チャネルは有るため、売買だけを見れば大して困ることは無い。ただ、特にネット通販は決済ボタンを押した後に注文確認メールが届くだけだ。
それは便利で効率的な反面、財布を開いて現金と交換する形で「現物」を手に入れる、その物理的な重みを売買の時点で得られる、イベントの楽しさには到底敵わないと思う人も、少なくない。
それに、目当てのもの以外は簡単に言えば一目惚れの衝動買いだ。その時の本能的な購買行動は、ネット販売には無い。注文成立までの間に各種情報入力を経るため、決済ボタンを押す前に熱が冷め
「やっぱりいいや」
となることも有る。イベントなら、数秒のうちに財布を開いて現金を漁ることができ、熱いうちに入手できる。こう云う、謂わば「賢くない買い物」も、イベントの醍醐味とされる。
ショップ販売分では、物理的な重みを得ること可能だが店内を回遊し、店頭のレジに並ぶまでの間に熱が冷めることは有り得る。その上、特に売り手との交流も楽しみたい連中にとっては、金を渡す相手がショップの店員と云うのも物足りない。

さて、イベントが潰れても同人誌が制作され販売される限り、業界の規模は縮小されても同人文化は残る。では、一体何を恐れているのか。それは印刷所の存続危機で、2021年同人問題の本丸と云える。

同人誌の印刷は、所謂オフセット印刷が主流とされ、印刷所に入稿して印刷するのが基本的だ。中には、同人誌を専門に扱う中小業者も多い。
そしてコミケは、それに合わせた新刊の大量印刷を受注できる最大のビジネスチャンスだ。中には、危険なことだがコミケ向けの新刊に年間の売上を大きく依存している業者も有ると聞く。
しかし、それもイベントが飛ぶことで売上が出ない。ネット通販とTwitterのハッシュタグを組み合わせる形で、エアコミケなるものもTwitter上で開かれたが、売れ行きはイベントに比べて悪く、コミケの完全なる代替イベントにはならないのだ。

当然、受注の有無に関わらず、人件費などの固定費は毎月発生する。このままイベントが復活しなければ、廃業を余儀なくされる業者が何時出てきても不思議ではない。
印刷屋が潰れれば同人誌は作れない、同人誌が無ければ即売会イベントを開く意味は無くなる、そして買い手がいなくなり、結果同人誌を作る人が減る。この繰り返しが、同人文化を風前の灯火に追いやるとされている。
だから、表現手段としても重な同人文化を絶やさないためにも積極的に同人誌を作り続け、印刷屋に仕事を与え、ネット販売などで売ってほしいと云う呼び掛けも出回る。
だが、ネット通販は前述のように買い手の動きが鈍い。印刷屋に仕事を与えて同人文化を守ろうとする心意気は感心するが、過剰在庫に苦しむようになっては本末転倒だ。

印刷所が潰れれば、前述のような悪循環の末、同人文化は絶える。それは正しくない。認知度は一定数有るが、浸透しているとは言い難い…そして時には邪道扱いされる同人販売のチャネルが有る。それは、ダウンロード販売だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?