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グラフィティ──言葉と共に眠る #002

強い初期衝動に突き動かされるまま、わたしはページを捲り続けた。





こんにちは。綾羽アキです。
今回は岡本啓さんの第一詩集「グラフィティ」を取り上げます。


といっても、この詩集は2014年に発売され、すぐさま話題になり、2015年の詩の賞を総なめにした詩集でして、2020年になった今わたしが書くことは大してないような気もしています。

グラフィティとは、落書きの意。橋とかに書かれたスプレーアートのイメージが近いです。


この詩集には、13編の詩が収められていて、うち12編はアメリカから詩誌に投稿されたものでした。

装丁はシンプル。ざらざらとした白い紙に、水色1色の印刷。

フォントや色合いのポップさと紙のざらつきは、どこかアメリカ的なよそおいがあります。色数が絞ったデザインなので、落ち着きもある。



中身ですが、淡々としてどこか退廃的でもありますが、濃密な生への思いを強く感じました。相反する要素を両立させている。
詩の中で(大胆に比喩を織り混ぜながら)色んな出来事に触れています、衝撃の強い描写もありますが、そこに悲壮感はありません。情景描写が巧みで、情景を想像しやすかったです。圧倒的な生と死の気配。生はどこまでも熱い。言葉に強い力が宿っている、勢いとエネルギーがある詩集です。
その衝動と勢いに負けないよう、わたしはたくさんお酒を煽りながら一気に読み進めました。

昨晩はあそこから
火の曲線が鋭くあがった
おそろしい
隕石がおちたみたいに爆発して
十二時を知らせる鐘が
街中の教会から鳴りわたった
なんとか目をつむろうと
耳までシーツをたくしあげる

(赤い花より引用)


岡本啓さんがこのとき書きたかったものはなんだろうと、考えながら再読している。
わたしはたぶん、存在している、あるいは存在した命を、そのときの感情を、衝動的に残しておきたかったのだと思う。ゆえに、落書き。

そして、当時の生きていくことへの決意表明を残しておきたかったのだと思う。
そしてそれは、落書きだから、見られたら嬉しいけど、見られなくてもいい。


見当違いかもしれない。わたしは少なくとも、そういうものとして読みました。自由な読みが許されるのも、詩という媒体の強みだと思います。

詩や短歌を紹介するシリーズをやっていますが、わたしは詩の技法については全くわかりませんし、詩や短歌を書くことはできません。あくまで詩や短歌の言葉の美しさやリズム感、伝わってくる情景を楽しんでいる人間です。

深い読みをしなくても伝わってくる、生々しい命。

しんどいときに救いを求めて開いた詩集でしたが、その圧倒的な熱量と生への衝動に救われました。頑張って生きてゆくよ。
これからも大切な一冊として読んでいきます。

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