見出し画像

がんの治療と副作用の中医ケア

母が「私が死んだら、コスモスを飾って」と言っていました。
父は今年も種からコスモスを育てましたが、残念ながら芽が出ませんでした。

コスモスを見ると母を思い出します。
がんで他界した母を見送り、がん治療についての知識や中医ケアについて考えることが増えました。

がんの早期発見は、本当に大切だと思います。

早期であれば根治を目指せるからです。

ただ、一番の目的は延命だと思います。
がんと共存していくことで通常の生活ができ、がんが暴れださなければよいのです。

根治には手術が第一選択になります。

がんのマーカーが正常化、腫瘍の消失ができれば幸福ですが、それは本当に稀なことです。
一度がんと診断されたら、一生付きまとうものかと思います。

がんと診断されたら、まずは局所治療が可能な範囲かどうかを見極めます。
局所治療は手術か放射線治療のことです。

一方、局所治療だけでは、がんの進行が防げない時は全身治療となります。
全身治療は漢方薬を始め、抗がん剤や分子標的薬や免疫療法、ホルモン療法があります。

全身治療とは延命や緩和が目的です。

局所治療と全身治療を合わせていく集学的治療が一般的です。

手術はがん組織を取る・減らすことが目的

根治ができれば良いですが、
転移があれば、がん組織を減量手術して放射線治療や薬物療法へと続きますが、がん組織が大きく手術が出来ない場合もあります。

母は、膀胱がんはステージ3でリンパ節に転移しており、手術対象から外され抗がん剤治療を半年続けました。

食事がとれなくなって、病状が悪化してきました。
発熱と腹痛を繰り返し、主治医が慌てて家族に知らせてきたことを、今でも鮮明に覚えています。
膀胱がんが小腸に浸潤して、小腸が閉塞していると。
主治医は以下の2択を家族に選択させました。

①腹膜播種(がん細胞が腹膜全体に広がっている)になり、手術対象ではないので、このまま腹膜炎を様子見ますか?
②術後目覚めないかもしれないが、がんはそのままでがんによる閉塞部分を避けてバイパスをつくるなどの姑息手術をしますか?

もちろん、腹膜炎で苦しむ母を見過ごせません。苦しむ母も、いつ手術してもらえるの?と言い続けました。
本人と家族は②を選択しました。
その選択を提示した時点で、すでに主治医と手術担当の外科は①を選択していたようで、手術の予定を入れていなかったのです。

手術を懇願した時には、すでに帰宅してしまった外科の医師を呼び寄せるという状況。夜中から手術が始まり、明け方に手術が終わりました。

姑息手術でも、その後5か月延命できたことは、母の気力生命力の強さがあったからだと思います。

がんの治療において、手術の適応を十分に考えなくてはなりません。
年齢、体力、術後の生活などを総合的に考え、術後の生活が出来ない状況であれば意味がなくなります。

母においては、成功しないかもしれない手術でも、本人の生きる気持ちと家族の思いが延命に繋がったと思います。

手術の前後は中医学ケアでサポート

一般的に手術前は免疫力を高め、がんの進行や再発を緩和する目的で漢方薬や健康食品を選択しています。

手術前はとても不安が強く、手術に耐えられるような体つくりが必要で、術後は機能や体力の回復ができるようにしていくことを目的に体質や不調に合わせていきます。

放射線療法の被爆による組織の損傷(やけど)を回復させる

放射線療法は局所治療で、体外から放射線を照射する場合と、体内に放射線物質を留置したり取り込んで、局所に集中させていく方法とあります。

最近は化学放射線療法(CRT)という局所の放射腺療法と全身の薬物療法(化学療法)を合わせて治療効果を高めるとされています。

抗がん剤の転移先に対する効果とともに、放射線の敏感性も高めていくことも期待されています。

しかし、放射線はいわゆる”やけど”の皮膚粘膜や組織の障害と、被爆による骨髄の障害を起こします。

漢方薬では、放射線を熱毒による気血水ともの損傷として、症状に合わせて選択します。

抗がん剤の副作用を軽減させる中医学のサポート

細胞毒性がある抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える目的ですが、新陳代謝や細胞分裂が早い組織(骨髄、皮膚粘膜)も損傷されやすいので、その副作用のおかげで相当に辛い治療だという印象があります。

内臓では心・肺・腎・肝臓・膀胱へ、また手足の皮膚や末梢神経の末端まで影響していきます。

漢方薬はこれらの副作用をなるべく軽減させて、治療の継続を支えたり、効果を上げる目的で併用されます。

副作用に多い骨髄抑制は、気血不足として補中益気湯や十全大補湯、人参養栄湯が臨床ではよく使われています。
中医学では骨髄は腎精(生命エネルギーの源)から作り出されるとして、腎精不足を補う漢方薬が選択されます。

また嘔吐は中医学では胃の寒熱を見分けて対応します。
激しい嘔吐や治療のストレスからの反射的に嘔吐する場合、ストレスによる胃の不調(肝気犯胃)として対応します。

口内炎は急性なら心・脾(消化器系)や肝の熱として清熱の漢方薬を選択します。長引く慢性化した場合は陰虚火旺の漢方薬で対応します。

最近の分子標的薬の副作用の中医学ケア

抗がん剤は細胞毒性が強いものが多く、副作用をなるべく減らし、正常細胞でなく、がん細胞を認識してターゲットを絞る薬の開発を目指して研究されました。

2000年頃から分子標的薬が脚光を浴び、2014年頃から免疫治療が始まりました。

抗がん剤は正常細胞にも攻撃してしまうのを、なるべくがん細胞を標的にしていくことができるものとして分子標的薬が開発されました。

分子標的薬は薬物の構造により、がん細胞の表面の分子と結合する抗体薬と、がん細胞中の分子と結合する小分子薬により分類されます。

ターゲットになる標的分子に対する抗体薬は、タンパク質の製材で、アレルギーのような過敏反応(皮膚粘膜の炎症)やショック症が出たり、ターゲット分子をもつ臓器や組織にどうしても副作用が出てしまいます。
小分子薬も上皮組織障害や血管新生の障害が出てしまいます。

これらのそれぞれの症状に、炎症には清熱解熱の漢方薬を、また障害を受けた組織の再生促進には気血を補う漢方薬で中医ケアをします。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用の中医学ケア

もともと、がん細胞は免疫細胞により、増殖を制御されています。
ではがん細胞が増殖してしまうのはなぜか?
それは、がん細胞の免疫細胞と結合してしまうことで、免疫細胞の働きが止められ、がん細胞が暴走が起きるからです。

免疫チェックポイント阻害薬により、がん細胞と免疫細胞の結合ができなくなり、がん細胞をフリーな免疫細胞がしっかり攻撃ができるようになります。

がんの場所が違っても、がん細胞膜に同じ免疫チェックポイントであれば効果があり、徐々に適応するがんが広がっています。

ただ、むりやり免疫細胞を上げすぎることで、多種の副作用が出やすくなります。

免疫暴走というと”サイトカインストーム”という言葉をコロナ禍で耳にされたことがあると思います。

新型コロナのサイトカインストームを防ぐため、中医学での対応が求められ免疫暴走を調節する作用をもつ漢方薬を探していました。

血栓予防の漢方薬などが対策のひとつに挙げられましたが、免疫調節作用のある漢方薬がコロナ感染予防も治療にも良いことが分かりました。

最近の免疫チェックポイント阻害薬の副作用軽減にも、中医学ケアが貢献できると考えます。

最後に母のがん治療をみて、思ったこと

最新治療は魅力的だが、どんな反応が出るかが心配です。
できるだけ、自己免疫を上げるために何をすべきかが、がん患者と家族や周りが一番望むことだと思います。

私は、漢方薬は副作用軽減だけに使うものではなく、免疫調整やQOLの向上に貢献できるものと信じています。

ただ、漢方薬も口から入るもの。食事が摂れなくなってからでは、ほぼ効果を期待できなくなると思います。

食事がとれず痩せていく、がん細胞が体を支配し始める”悪液質”という状況にもっていかないようにするには、食事・睡眠といった日常生活を継続できるように必要な栄養素や精神環境を用意してあげたいと思います。

がん以外にも病気に負けない、病気があったとしても日常生活を続けられるように養生に役立つことを探求し続けるしかないと思っています。














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?