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コミュニケーションは武器であり弱味

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コミュニケーションについて考え、自分の強さも弱さも味わった1日。

隠岐島から春休み中の高校生が社会科見学にきて、午前中だけ預かった。

数時間だけということもあり、とくに手伝いもふらずコーヒースタンドで過ごしてもらう。

と書くと、ただ無為に過ごすだけのように感じるが、この場所はかわるがわるどこかに行くひと、家に帰るひとの一瞬がぱっと現れる。

名前もわからない、初めましてのひととのコミュニケーション。
楽しんでほしい、というより、その時間を懐に持って帰って欲しい、という気持ちだった。

Instagramであらましだけ書いてみたが、なんとなく来てみた、というなにも知らないご近所さんが圧倒的に多く、雨にも関わらずコーヒースタンドは賑わった。

感想はあえて聞かなかったが、ここは東京じゃないみたい、と呟いていた。
今日のこの数時間が、彼女の行先のなにか手助けにはなるといいなと思う。

コーヒースタンドをしめたあとは、他県に住む友だちがひとり暮らしを始めるので内見に誘われついていった。
食をテーマにしたリノベーション物件。
彼は料理が趣味。
わたしも食を生業にするので意見を聞きたいとのことだった。
必要最小限の空間が、これから暮らしで彩られる風景を想像するのは楽しかった。

大家さん、管理会社、建築家、仲介業者。
たくさんのひとや組織が関わり、それぞれの意図がある。
こういう住民に入って欲しい、という理想が第一優先に感じて、すこし窮屈さもあった。
普段身を置いている意図しない多様性。慣れすぎてしまっているが貴重なのかもしれない。
しかしわたしも大家業や管理業をするので、気持ちもわかる。

友だちが部屋を見ている間、管理会社の方に自分の運営するレンタルスペースについて話した。
シェアキッチン、という意味では同業なのであまり話を広げるのも失礼かと思ってそこそこにしたが、ちょうど菓子製造について思うところがあったらしく、保健所への申請の相談や菓子製造業を目的にした部屋を案内してもらえた。
社交辞令かもしれないが、なにかあれば手をとりましょう、と言ってくれた。

菓子製造業付き住居

帰り道、友だちが尋ねる。
コーヒースタンドをしめたあとはなにしてるの?
こういうことしてるの、と答えたら腑に落ちない顔をしていた。
こういうこと、というのはつまり外にでてひとと話すこと。
今運営しているスペースも、ケータリングも、講演も、外に出たからこそ得た仕事だ。
仕事を得るには外に出る、という経験を繰り返しているから、コーヒースタンドをしめたあと出かけるのもわたしにとっては仕事のひとつ。

腑に落ちない顔は、収入源はどこにあるのか、という質問の意図の答えになっていないからだろう。
からくり、というほどのこともないが、収入の柱について話すと、これだけ長く付き合うと、ふわふわしててもしっかりしてるって知ってるよ、と彼は言った。
わたしは贅沢をしたいと思わない。
友だちや家族と財布を気にせず食事ができればいいと思っている。
最近は働き方について、たくさんのひとと話し、考える。やはりキーワードは幸福度。

別れたあと、少し仮眠をした。近ごろ眠くてしょうがない。
通知が鳴る。
夜はサラリーマンの友だちと行政書士の女性が企画する大人数の飲み会がある。
仕事も切り上げられたので0次会をします、とのこと。
しませんか、ではないところを挑戦状と受け取り、身支度を整えて家を出た。

行政書士の彼女のオフィスで缶ビールを開けた。ふたりは参加者の名簿を見ながらこのあとの飲み会への期待感を膨らませていた。
それを眺めながら、飲み会の趣旨やタイムスケジュールが事細かで企画書みたいだなと思った。それくらい抜かりなく全力で楽しみたいのだろう。

オフィスにある緑青吹いた時計、気になる

時間になり、店へ移動する。
大人数になる前に自分の注文を済ませると、すぐに店内は満員になり賑わった。
見知った顔も何人もいた。
知り合いで固まるほうが気楽ではあるが、企画した友だちが他業種や異なるコミュニティを混ぜた意図のひとつは交流だろう。

コンプレックスのひとつ、声が通らないこと。
わたしの社交性は環境によって大きく左右される。
騒がしい空間だと自己紹介ひとつでも、相手がわたしの声を聞き取るために耳をそばだてる姿に申し訳ないと思って萎縮してうまく話せなくなる。

苦手意識はありつつも、今回は見知った顔のグループで少し過ごしたあと離れて他業種のひとの輪に近づいた。
が、なにを話したらいいんだろう…とさらに苦手意識は膨らみ、途中で足が止まり壁にもたれて飲み始めてしまった自分がいた。
それを見兼ねたのか、話しかけてくれたひとから名刺をもらう。
名刺交換も苦手だ。限られた時間のなかで手のひらより小さい紙から情報を読み取って会話を膨らます…難易度が高すぎる。
その理由で、わたし自身は名刺をいまだに作っていない。
というよりこの状況、わたしナンパ待ちみたいだった?
と、自己嫌悪のループに陥る。

1対1コミュニケーションを武器に場を拓き仕事を得るのも、多勢のコミュニケーションが苦手で落ち込むのも、どちらもわたしなのだ。

ふう、とひと息つくと、
ねえ、と話しかけられた。
官・民連携コンサルタント兼コミュニティ花屋のまちの仲間。
今度シェアキッチンを始めるんだけどね、と。
彼女にはビジョンが見えているようで、力添えができたらとオープンニングに関わらせてもらうことなった。
そう、こうやってまちに出ることで、仕事(の種)を得るのだ。
社交が苦手でも、やはりわたしはひとと関わりたい。

安心できる友だちもたくさんいたのに、ちゃんと知らないひとと関わろうとしたわたしはえらかった。
惨敗だったけど。

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