見出し画像

『ブックサンタ』してみませんか。

こちらは、「稀人ハンタースクール Advent Calendar 2023」に参加するために書いたエッセイです。カレンダーをクリックすると、「クリスマス」をテーマにした書き手のnoteを見ることができます。

数年前から、12月が近づくと「今年の『ブックサンタ』、どうしようかなあ」とワクワクし始める。

『ブックサンタ』は、NPO法人チャリティーサンタが全国の大変な境遇に置かれた子どもたちに本を贈るため2017年に書店と連携してスタートした社会貢献プロジェクトです。
本を贈りたいと思った人が本を買うと、チャリティーサンタをはじめとした全国数百のNPOを通じて、子ども達へ本のプレゼントが届きます。

「ブックサンタ」ウェブサイトより

『ブックサンタ』は、子どもたちに自分が選んだ本を、サンタクロースになった気分で届けることができる、すてきな取り組みなのだ。

昨年は二冊の本を選んだ。一冊は憶えているのだが、もう一冊は憶えていない。(そんな残念な記憶力なので、その前の年の記憶など完全に無である)

『そらいろのたね』福音館書店

その一冊というのが、小学生のときに大好きだった『そらいろのたね』。

主人公がきつねと物々交換で手に入れた「そらいろのたね」。
それを蒔いて水をやると、植物の芽ではなく、家がぽこっと生えてきた!
水をやるたびどんどん大きくなる家。最初は小動物が入れるサイズのかわいい家だったけれど、最終的には森のみんなが入れる大きなマンションに…!

この絵本は何度も何度も読んで、絵を描いたり粘土作品にしたりして楽しんだ。わたしの妄想力を育んでくれた作品の一つだから、ぜひ、子どもたちにも出会ってほしかったのだ。

さて、今年はどんな本にしようか。
幼いころに大好きだった『赤毛のアン』はどうだろう。
桜が満開の季節に、地元の公園にある丘(大人になってみれば、プリンスエドワード島感はゼロ)をグリーンゲイブルズに見たてて、従姉妹と赤毛のアンごっこをしたことを思い出す。(『赤毛のアン』未読にもかかわらずダイアナ役をやってくれた従姉妹のRちゃん…ありがとう…)
あのころ、マシューとマリラはわたしの頭のなかに、たしかに住んでいた。
これも、わたしの妄想の世界を豊かにしてくれた作品だ。

この『ブックサンタ』では、幼児や低学年向けのいわゆる「絵本」のほうが比較的集まりやすく、高学年向けの「読みもの」がやや少ない、という情報を見かけた。今年は『赤毛のアン』にしようかな。

わたしが読んでいない本で、大人になったいま、ものすごく読みたいと思っているのが、ミヒャエル・エンデの『モモ』。
ずっと気になっていたのに、他に読む本が多くなかなか手をつけられずにいた。すこし前に、ふとAmazonレビューを見てみたら、こんな文章を発見した。

痛烈に心に刺さった。忙しい、一分も無駄にしたくない、コスパ、効率的、それ意味あるの?生産性、稼いでなんぼ。時間泥棒に、利子付けて返すから、お得ですよ、と騙されて、時間を節約した分、ひとかどの人間になって、みんなにうらやましがられますよ、とそそのかされる、何を得て何を失ったのか?まさに私。

のんぴさんのレビュー「モモに会いに行かなくては」

まくしたてるような文章に、この人の心がどれだけ揺さぶられたのかが表れていて、わたしも「モモに会いに行かなくては」という気持ちになった。
レビューの中には「難しかった」という人もいたけれど、そういう読書体験こそ、子どものときにいっぱいしてほしい、と思う。「むずかしくてよくわからない」という体験を蓄積させながら、世界を広げていってほしい。

『モモ』は、今年のクリスマスに、どこかの子どもたちと自分のために二冊買うことになりそうだ。

みなさんなら、どの本にしますか。
子どものころに好きだった本とそれにまつわる記憶をたどりながら、『ブックサンタ』しようと本を選ぶ時間は、忙しない12月の日常の中に充実した気持ちをもたらしてくれます。

『ブックサンタ』への参加のしかたはこちら
全国の参加書店は
こちらから(ネットでも参加できます)

わたしは今年も、友人の勤めるジュンク堂書店福岡天神店で参加予定。
昨年、忙しそうにレジに立つ店員さんにおそるおそる「ブックサンタしたいのですが…」と声をかけたら、とってもうれしそうに対応していただいて、心があったかくなった。なので、また買いに行きます。

どんな子どもたちが、わたしが選んだ本を手に取ってくれるのだろう。
それを妄想するのも楽しい。一人でも多くの子どもが楽しいクリスマスを過ごせますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?