見出し画像

幸せな死神

読れぽvol.2

『すべての神様の十月』
著:小路幸也


もしも、人間の姿をした神様が身近にいたら。
帆奈がバーで隣り合ったイケメンは、死神だった!? 死神は、これまでに幸せを感じたことがないらしい。なぜなら幸せを感じた瞬間…(幸せな死神)
その他、貧乏神や疫病神、道祖神に九十九神、福の神が登場する小路幸也先生が描く、神様たちの優しい物語。


🧸💭
中学校の図書館で入学して
はじめて手に取った本がこの本でした。
この本には6章に渡って死神や貧乏神、福の神など
いろんな神様が私たちの日常に顔を出します。

…神様って、いると思いますか。
〝神頼み〟なんて言葉をよく使うけれど、
実際のところ神様って目に見えないし。
と、ちょっと遠い存在なのが神様。
でもこの作品では神様たちが割と普通に、
ごくごく自然にそこら辺にいるんです。
この本を読むと、神様が見守って
くれてるんじゃないかな、なんて気になって
少し元気になれるかもしれません☺️

1番好きなのは第1章の「幸せな死神」です。
死神って、人を殺すとかっていう
怖いイメージを持っていませんか?
私もそう思っていました。
でもここに出てくる死神、メッチャ紳士!
ジェントルマン!イケメン!
そして、すごく儚い。
何故だか涙が流れるんです。
ひとつひとつの言葉が優しくて
どこか寂しいような気がして。


「ごめんなさい。嘘をつきました」

死神が言うんです。
この言葉にどれだけの意味が含まれているのかな。
どんな顔で言ったんだろう。
この場面を何度も何度も頭の中で映像化した。
考えるといつも胸がぎゅっと苦しくなる。
それで、気がつくと涙がつーっと頬を伝っている。
でもきっと悲しい涙じゃないんだと思う。

一章「幸せな死神」が好きな理由は
最も〝生〟に対して考えることができるから。
生まれてくること、死んでいくこと
残るもの、消えるもの
忘れていくこと、忘れないでいること
私たちが生きている上で
消えていくものっていうのは必ずあって、
忘れることもある。
小学生の時に好きだった本とか
好きだった子との秘密の会話とか
内緒で貰ったお小遣いとか
あの時忘れないな、と思ったことって
意外と忘れちゃってたりする。

そういうなんて言うのかな、儚さっていうのかな。
あたりまえのことだけど
実はちょっぴり寂しいことで
でもそういうのって普段考えないからさ
そんなこと考えてる余裕なんかないから。
でもこの本を閉じたあと、余裕ができるかも
そうしたら少しだけ考えてみて欲しい
生きていくのっていろんなことがあるけれど
なにを大切にしたいのか
なにを覚えていたいのか
なんかそんなちょっとしたことが
すごく大切に思える本なんです。

この本に出会えてよかったと思わせてくれるのは
きっと私たちが生きているからで
いつか死ぬからで
幸せだから。
大切なことはきっと昔から何も変わっていない。
どんな形であろうと、一生懸命に生きる人が幸せになれる。
愛とか幸せとか、形のない〝なにか〟
そういうのを考えるきっかけになる1冊だと思います。

幸せって、なんだと思いますか。