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フランスから、食関連ニュース 2020.05.12

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを週間でお届けします。

1 今週の一言

フランスは今週11日よりロックダウンにより規制が段階的に解除され、経済活動のできる基礎体力作りへと動き始めました。月曜日朝は、生活必需品以外の商業施設もオープンできるようになり、街中の小売店では安全衛生基準に応じた準備やら掃除に取り掛かっていました。そうはいっても生活は実際にはほぼ戻っていない環境です。例えば、学校の中で、いち早く開校されるはずの小学校。通学できる生徒の学級は限定。医療機関従事者、警察などの親を抱える子供優先。あるいは班別にローテーションを組むなどと、「小学校については、5月11日以降、100万人の生徒が学校に戻り、13万の教師がそれに対応する。この数字は50500校のうちの80〜85%に当たる」という公約とは反する状況です。子供を抱える親が仕事と家庭をどう両立させるかなど、問題は山積みですが、政府としては経済活動をこれ以上停滞させるわけには行かず、国民の協力を切に求めるという発言は、このところさらに高まっています。

私たちの事務所も昨日からオープンし、共同経営者とともに、このロックダウン中に考えたこと、活動したことなどを共有し、今後の指針、計画を立てて、邁進していく所存です。人々の考えや行動の変化。そうした中、何が必要でそうでないかなど、考えさせられたことはキリがないほどです。

9年前に発生した震災の時も思い出しました。祖国から離れている置き場のない気持ちを抱えたあの時。パリの家族と慕っているビストロ『ポール・ベール』のオーナーのベルトラン・オーボワノが、一緒にチャリティディナーをしようと声をかけてくれました。ベルトランの息子さんは日本人女性と結婚し日本に住んでいる。彼らを心配しているという気持ちを打ち明けてくれ、チャリティに至ったのです。200名近くもの会食者で、募金もたくさん集まりましたが、その時に来ていただいた方々から励まされたひと時、仲間たちの心は、今の私の指針の一つとしても繋がっています。ただ残念なこともありました。ちょうど、インターネットでの拡散が可能になった時代。イベントをより多くの方々に知っていただくためのコミュニケーションをすべきという外野からの意見もいただいたのですが、私はそれに真っ向から反対でした。知ってもらうためにするわけではない、という私の気持ちは今も昔も変わりません。

今回、医療従事者を助けるためのボランティア活動、あるいは食関係従事者や生産者などを守るための社会活動をしている料理人さんたちがいて、頼もしい限りですが、それを過剰にメディアが取り上げているように見受けます。それとは反対に、ボランティアをしていない人々に対し、非難の矛先が向かうという浅はかな考えが蔓延しているのも確かです。社会的影響力があり、ボランティアをしていない店やシェフに対し、怒りのメッセージが届いている。ボランティアは自発的行為であり、発信すべきものとは限らないですし、各人ができることを行うことが、一番の社会貢献と私は考えます。手を洗うこと、マスクをすることなどの基本や、普段向き合えない家族とのコミュニケーションを大切にすること、ささやかな助け合い、あるいは買い物や散歩に出かけた時の周囲の人々への気遣い。あるいは社会とのつながりを考えること。などなど。それぞれが今必要なことに向き合うことが、大きな力になる。

片付けコンサルタント近藤麻理恵さんは、フランスでもコンマリ・メソッドと親しまれて、爆発的な人気です。友人でパリを拠点に『MIWA』を主宰される佐藤武司さんが、コンマリ・メソッドの真髄を神道の『中今』思想と言い当てて、納得しました。欧米の人々に日本の伝統礼法である折形の儀式を伝える『MIWA』は、佐藤さんの鋭い感性から生まれた、新しいブランディングのメソッド。「この今を懸命に生き切ることで、過去も未来も祝福できる」という『中今』。日本独特の考えかもしれませんが、メソッドとした時に、決して利己的ではない利他的な合理的な個人主義を軸とするフランス人の心にも響いている。『中今』思想を追求することで、本当に大切な他者、他物との関係性が見えてくるのかなと思います。

バスも地下鉄も間引きで、閉鎖駅も多く、衛生面においても公共機関に頼れないパリ。そんな中、自転車をゲットしまいsた。通勤控か、車もロックダウン以前よりも少なく、自転車道もアンヌ・イダルゴ市長の政策のお陰で整っており、かなり快適にセーヌ沿いを駆け抜ける毎日が始まりました。

2。今週のトピックス。【A】パリ市、道路をレストランに開放?【B】3つ星シェフのコラボレーションコースメニュー47ユーロ。【C】QRコードで客がメニューを見ることのできるアプリ、無料提供。【D】テイクアウトサイトを手軽に開設できるプラットホームがオープン。

2 今週のトピックス。

【A】パリ市、道路をレストランに開放?

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