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フランスから、食関連ニュース 2020.05.06

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

⒈ 今週の一言

フランスに来たばかりのころ、驚いたことのひとつ。あるデザイン学校で、生徒たちが卒業制作物を作る光景に居合わせたことがありました。模型を作っていたのですが、それに使うセロハンテープを、ツルツルとした本の表紙からはがして使っている。新しいものを使わないのと聞くと、いや前回使わなかったセロハンテープをはがして、ここに取っておいたんだという。一回使ったセロハンテープを次回のためにとっていたのです。見ると、何度も使っていることがわかるような切れ端でした。その時、なんて彼らは貧乏性なのだろう、あるいはフランスには十分にモノがないのかしら、と思った自分を今でも覚えています。そして、モノが溢れる日本からパリに到着したばかりの当時の自分を振り返り、恥じいるばかりです。

このロックダウン中に、家にいるからこそ、ゴミをまとめる人たちへの計らいもいつも以上に生まれました。出来るだけコンパクトにして、負担のないように。しかし、一番に頭が痛いのは、買占めされる商品の一つでもある紙類です。理想的には3−4時間で新しいものに変えるのが良いとされるマスクの使い捨ても、今は議論の余地はありませんが、いずれ問題になるのではと感じています。

アラン・デュカス氏のレストランの内装やオブジェのデザインを手がけることでも知られるパトリック・ジュアン氏が、現在、デュカス氏とともにロックダウン後のレストランの内装整備について検討しています。この内装整備を検討する時に、大きな問題が2つ発生しているとのこと。世界的にモノの行き来が滞っており、欲しい素材が手に入らないという現状が1つ。また、こうした内装整備に使う備品は、公衆衛生のため、都度、取り替えなくてはならないという見地から、リサイクルができることも今後の原則としていかなくてはならないということがもう1つ。注目しているのは、花屋が使っている花を包むための透明なフィルムだそうですが、エコロジーからは程遠く、大きな課題となっています。今のデザイナーは「謙虚であり、実践的で、戦う人」であるべきだというジュアン氏。極限にまでそぎ落とされたジオ・ポンティのアームレスチェアのスーパーレジェーラ、はたまた、シャネルのリトル・ブラック・ドレスなどを生む境地で臨むということ。

ピエール・エルメ氏が、世界のお客を頼りにしてきた自分たちのような企業は、もっと地元のお客を大切にしていかなければならないと発言していました。年末年始のストを経験したレストランもすでに同じような境地に置かれていましたが、その必要性はよりはっきりしてきたかもしれません。足元のこと、身近なことに注目して、いらないことを削ぎ落とす、本当に必要なことは何かと反芻する。そこから生まれることは堅固で持続的なことに違いありません。


2.今週のトピックス 【A】3つ星シェフが続々、出張、テイクアウト、マーケットなどに挑戦。【B】『カルフール』が前線で働く被雇用者に一律1000ユーロ支給。【C】ランジス市場、個人向けのデリバリー成功。【D】『J’aime mon bistrot』、前払いシステムとボーナスで、フランス全国のビストロを支援する。【E】パトリック・ジュアン氏が提言するロックダウン後のレストランのインテリア。


2. 今週のトピックス

【A】3つ星シェフが続々、出張、テイクアウト、マーケットなどに挑戦。

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