BTS【花様年華】⑩~⑪関連作品まとめ-MV他
前回の関連作品まとめの記事でもお伝えしたように、①~⑨の記事で整理したyear22.05.22までの出来事は、主に花様年華~WINGSシリーズの作品で描かれていました。
⑩~⑪で整理したyear22.05.22以降の出来事は、主にLOVE YOURSELFシリーズの作品で描かれています。今回はこの辺りの関連作品を整理していこうと思います。
前回同様、これまでに投稿したBTS【花様年華】⑩~⑪の記事(余力があれば①~⑨も!)を頭に入れて読んでいただくとより分かりやすいかと思いますので、まだの方はそちらもお時間ある時にぜひ目を通してみてください。
この記事の最後に「特に見て欲しいもの」をまとめた項目を作っておくので、お忙しい方はそちらだけでも見てみてください。
YouTube(MV他)
まずは、公式YouTubeにアップされているMVやTeaserから整理します。多くの方がすでに見たことのある映像かと思いますが、【花様年華】の時系列を頭に入れた上で、気になったものからもう一度見てみてください。
より詳細な関連事項は各記事にある年表の下記の部分に記載があります。
■LOVE YOURSELF Highlight Reel '起'
仲間を得て永遠の青春を祈った花様年華シリーズ、誘惑を知り大人へと成長する中で自己の探究に苦悩したWINGSシリーズに続いて展開されたこのLOVE YOURSELFシリーズでは、7人が新たな出会いやお互いへの更なる理解を通じてありのままの自分自身を受け入れ、自らを偽ることからの脱却を目指す過程が描かれています。
一つ目に公開されたHighlight Reel '起'では、7人それぞれに訪れる新たな出会いの場面が描かれています。(関連記事【⑩それぞれの出会い-1】【⑪それぞれの出会い-2】)
year22.05.31にホソクが回想するのはyear09.05.31に母親と最後に訪れた遊園地での出来事です。(関連記事【①7人の過去】)13年前のこの日、ホソクは母親に置き去りにされて養護施設に引き取られました。幼馴染のお姉さんが、誕生日ではないのホソクにお祝いのケーキを持って来たのはそのためでした。
冒頭のナレーションは
このナレーションに登場する「この瞬間」「そんな瞬間」とは一体どの地点を指すのでしょうか。「路地」「交差点」といったワードはWINGSシリーズの作品でも度々使われていましたね。
■LOVE YOURSELF Highlight Reel '承'
2つ目に公開されたHighlight Reel '承'では、それぞれに訪れた出会いによって変わっていく自身と、疎遠になっていた6人を互いに薄っすらと意識する日々が描かれています。
テヒョンが親しくなった女性と線路脇の空き地で過ごす様子が描かれているシーンがありますが、映像の中でもわかるように、prologueのMVに登場したyear22.05.21に廃プールで集まり海へ行った日の出来事とリンクしています。しかし、ここで思い出していただきたいのは、廃プールで遊んだ世界線ではその後テヒョンが展望台から飛び降りることでタイムリープが起きているということです。(関連記事【⑦叶わないテヒョンの救済】)
LOVE YOURSELFシリーズを生きている7人は、EuphoriaのMVで描かれた世界線の延長にいます。このような一瞬のカットからも、テヒョンが無意識に、タイムリープによって書き変えられた本来であれば知る由もない出来事を認識していると汲み取ることが出来ます。
そして、何度も服を着替えるソクジンのカットでは意味深に花瓶が倒れます。この描写は時系列整理の記事では触れませんでしたが、のちに回収されるので覚えておいてください。
最終的にソクジンが着替えたシャツは、'I NEED U' Official MVの中でyear22.04.11に目を覚ましたソクジンが着ていたもので、勘のいい方であればこの辺りで、もしかしてここからyear22.04.11に繋がる=タイムリープが起きてしまうのではないかと想像することが出来るのではないでしょうか。
冒頭のナレーションは
そして、後半のナレーションへと続きます。
「この瞬間」が「最も幸せな瞬間」であり、同時に「嘘」によって成り立っていることがわかりました。この「嘘」とは”自分自身を偽ること”であると解釈します。
■LOVE YOURSELF Highlight Reel '轉'
三つ目に公開されたHighlight Reel '轉'では、出会った女性たちとの転機が描かれています。
テヒョンの残したバス停のグラフィティはBTSの楽曲のタイトルにもなっている「I’m fine(僕は大丈夫)」、後述するLOVE YOURSELFのポスターにも描かれています。
冒頭のナレーションは
愛されようと吐いた「嘘」の上に成り立っていた「最も幸せな瞬間」は、些細なきっかけで失いうるものでした。
また、「知っている」のではなく「知っていた」という表現を用いていることに違和感を覚える文章です。その瞬間、起こる出来事を「知っている」わけではなかったが、後になって考えてみるとそれが起こるということを僕は「知っていた」、という意味合いを持たせた表現なのではないかと思います。
Highlight Reel '轉'で描かれる出来事は、ソクジンにとって一度目の出来事で、具体的に起こる不幸を予想出来ていたわけではありません。しかし、「嘘」によって成り立つこの幸せな日々が永遠に続くものではなく、いつかまた最悪の事態が起こり、簡単に崩れ去ってしまうのだということをソクジンは「知っていた」のです。
この”心のどこかで恐れてことがやはり起きてしまった”というような印象は、ソクジンが意中の女性との待ち合わせ場所に向かう車中や、彼女の事故を目撃した直後の得も言われぬ絶望の表情からも共通して受け取ることが出来ます。
そして、タイムリープが起こります。
■LOVE YOURSELF Highlight Reel '起承轉結'
前半部分は’起’’承’’轉’と重複し、11:13付近からHighlight Reel '結'のストーリーが始まります。
Highlight Reel ’承’から続く逆再生のシーンは、これまでソクジンが書き変えてきた、6人の身に降りかかった不幸な出来事が起こった場面の数々です。過ぎた現実を遡り、再びyear22.04.11へと戻ってしまうソクジンのタイムリープを象徴する描写になっています。
逆再生の映像と共に流れるナレーションは、
タイムリープのきっかけとなった一度目のyear22.05.22に、ソクジンが聞いた”猫”との契約であるとされる台詞「時間を巻き戻すことが出来たら、あらゆる失敗と過ちを正して、みんなを救えると思うかい?」とリンクする内容が登場します。この問い掛けに対して心の中で「本当にみんなを救えるなら、昔のようにまたみんなで幸せになれるなら、何だって出来る。」と答えたことで、ソクジンはタイムリープの力を手に入れました。(関連記事【④本当の現実と最初のタイムリープ】)
Highlight Reel '起承轉結'の中で二度目に訪れるyear22.08.30でソクジンが倒れる花瓶を受け止める(=花瓶が倒れることが分かっていた)描写は、花様年華 THE NOTESやウェブ漫画が公開されるまでの間、ソクジンがタイムリープをしているという設定の根拠であるとされていました。そして、タイムリープの法則が不明確な中、多くの見解では単にソクジンが再び同じ日をやり直すことが出来る能力を持っているのではないかと解釈されていたようです。
しかし、のちに公開された作品からソクジンがタイムリープで戻るのは必ずyear22.04.11であることが明らかになっています。ソクジンは意中の女性を事故で失ったあと、単にもう一度year22.08.30をやり直したのではなく、year22.04.11からの約4ヶ月半の全てをやり直して二度目のyear22.08.30に辿り着きました。
二度目のyear22.08.30でキャップを目深に被るソクジンからは、とてつもない疲労を感じ取ることが出来ます。その約4ヶ月半の間にも様々な出来事が起こっているので、時系列としては次回以降の記事で整理する予定です。
最後のナレーションは
LOVE YOURSELFシリーズのテーマとなる重要なメッセージです。
そしてこの後、前回の関連作品まとめの記事でご紹介した'Euphoria : Theme of LOVE YOURSELF 起 Wonder'のMVが公開されます。起承転結と続いたHighlight Reelの物語が終わることなく再び”起”へと続き、それらを繰り返しながら未来へと進んでいく中で、自分自身を受け入れることによってその未来が少しずつ拓かれていくのです。
■'FAKE LOVE' Official Teaser 1
FAKE LOVEのTeaserは2つ公開されていますが、BUcontentのクレジットがついているのは1のみです。花様年華シリーズ・WINGSシリーズと同時期の精神世界を表現したBlood Sweat & TearsのMVと同様に、FAKE LOVEのMVはLOVE YOURSELFシリーズの時期における7人の精神世界の表現であると考えられます。
冒頭に現れるメッセージは
後述する”スメラルド”の伝説の世界観を彷彿とさせる空間(マジックショップ)を訪れた7人は、それぞれに花様年華・WINGSシリーズで登場した自分が抱えている問題に関連するアイテムを持参し、LOVE YOURSELFシリーズで登場した肯定的なアイテムへと交換していきますが、唯一ジョングクだけがアイテムの交換ではなく、別の空間へと繋がる扉の鍵を受け取ります。そしてその空間で待ち受けるのは、黒いマントを被り仮面で顔を隠す謎の人物です。
蛇足ですが、先日公開された'Film out' Official TeaserがFAKE LOVEのMVとリンクした構成になっていることが話題となりましたね。'Film out' Official MVに関しては現時点で【花様年華】であるともそうでないとも明言されてませんが、BUcontentクレジットの有無を前提にする当noteでは一旦スルーしたいと思っています。
■'FAKE LOVE' Official MV (Extended ver.)
'FAKE LOVE' Official MVにもBUcontentのクレジットがありますが、お芝居のシーンがより多く含まれている(Extended ver.)を見ていきたいと思います。前述したように、7人の精神世界を表す演出が多いため、具体的な日付を拾えるエピソードはありません。
これまでのタイムリープの象徴であった、ソクジンが目を覚ましてカーテンを開けるという動作に反して、このMVはソクジンがカーテンを閉めるカットから始まります。ソクジンがいるこの部屋は、Teaserで鍵を受け取ったジョングクが開けた扉の先にあった空間です。
ナムジュンはコンテナと鏡、ホソクは遊園地とスニッカーズ、ジミンは練習室と水、テヒョンは電話とグラフィティ、ユンギはピアノと火など【花様年華】の世界でのトラウマや出来事に関連する描写が続く中、Teaser同様にジョングクだけはこれまでの立場とは違い、どこか第三者的な視点を持っているように描かれています。
歌詞にも注目してみると、自分自身を偽った(「嘘」の上に成り立つ)愛=FAKE LOVEと定義付けするLOVE YOURSELFシリーズの前提がより色濃く見えてくるかと思います。BTSはこの楽曲の中で、相手に向ける愛自体が偽りなのではなく、相手を愛している自分自身そのものが偽りの存在であると歌っています。
MVの中のソクジンは、爆風が吹き荒れる部屋で「咲くことのない花」を具現化した”スメラルド”の花が入ったガラスケースを守るように抱きかかえます。「夢=偽りのない自分自身のままで愛されること」「花=偽りのない本当の自分自身」と考えると、自分自身のままでは愛されない状況(=「叶うことのない夢」)の中で偽りの姿(=「咲くことのない花」)を守っているという解釈が出来るかと思います。そして風が吹き止んだ後、ガラスケースに”スメラルド”はありません。
少し話が脱線しますが、RMはこの楽曲の制作過程を語るV LIVEで「愛は人と人の間で生まれるものであると同時に、自分と自分との間にも存在するものである」と発言しています。また、2017年のBBMAsで初めて受賞スピーチをした際にも「Please, ARMY, remember what we say, "Love Myself, Love Yourself"(アーミー、僕達の言う事を覚えていて。”まず自らを愛して、あなた自身を愛して”)」と目に涙を浮かべながら発言していたのも印象的でした。
BTSの発するこの一貫したメッセージを踏まえて、LOVE YOURSELFシリーズにおける『FAKE LOVE』というリード曲の持つ意味を考えてみると、単純に愛だ恋だと歌うラブソングではないことは明白です。
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⑩~⑪の記事で整理した出来事に関連した映像作品のまとめは以上です。
以降は映像以外の関連作品をご紹介します。
Flower Smeraldo
”スメラルド”とは【花様年華】の中に登場する架空の花で、前述したHighlight Reelやポスタービジュアルではソクジンのソロカットに登場している淡い青紫の花です。
イタリア北部に残るとある悲しい伝説を持つ花であるとされている”スメラルド”の花言葉は「伝えられなかった本心(『The Truth Untold』)」で、これはBTSの楽曲のタイトルにもなっています。
”スメラルド”の存在は、Highlight Reel公開直前の2017.08.09にJINによって突然Twitterに投稿されました。
しかしこの投稿以外に公式からの明確な情報提供はなく、世界中のARMYが答え合わせに奮闘しました。その結果として紐解かれた”スメラルド”に関連する公式と思われるコンテンツをご紹介します。
■Flower Smeraldo blog
【花様年華】の世界の架空の花であるはずの”スメラルド”を販売する花屋の店主が投稿していると思われるブログが存在しています。
現在投稿されている記事では、主に”スメラルド”の歴史や店主が花屋開店に至るまでの経緯について説明されていますが、このブログはその後BTSがカムバックを準備しているタイミング(Love Yourself(2017)、Map of the Soul(2019)、dynamite(2020))で何度か書き換えられていることが確認されています。
そして、2017年のブログ開設当時に投稿されてた記事では、ソクジンがyear22.08.15に偶然オープン前の花屋を見つけて”スメラルド”のブーケを注文したエピソード(関連記事【⑪それぞれの出会い-2】)と合致する内容も記載されていました。
当時の投稿を翻訳してくださっている方のブログをご紹介します。
この投稿の中に「今日(投稿日:2017/08/15)”スメラルド”を探す青年が内装工事中の店を訪ねてきた」「”スメラルド”を贈る理由を尋ねたら「”いい人”になりたくて」と答えた」というエピソードが書かれていたこと、そして注文書に残された筆跡がJINのサインと酷似していたことが決め手となって、Big Hit Entertainment(現 HYBE)の仕掛けた演出であると断定されました。
■SMERALDO BOOKS
Twitter上にSMERALDO BOOKS(@Smeraldo_Books)というアカウントが存在しています。単発のNOTESや選択式のストーリーが投稿されていて、投稿数は89と少ないので、興味のある方はぜひ遡って全て見ていただきたいです。
■”スメラルド”の伝説
FAKE LOVE Teaser 1の紹介で触れた”スメラルド”の伝説についても、簡単にご紹介したいと思います。前述したFlower Smeraldo blogの2020.07.20投稿の記事に詳しく記載されている内容です。
男が完成させた花こそが、”スメラルド”でした。”スメラルド”の持つ「伝えられなかった本心」という花言葉は、この伝説が由来になっています。
【花様年華】の世界では、長い間伝説の中にのみ登場するとされていたこの”スメラルド”が、2013年に発見され話題になったようです。この辺りの経緯もFlower Smeraldo blogに記載があるので、気になる方は読んでみてください。
Posters for ‘Love Yourself’
LOVE YOURSELFシリーズのポスターが、各メンバー毎、そして【花様年華】におけるペアでの計11種類公開されています。ここではビジュアル(良すぎる)はもちろん、それぞれに書かれているキャッチコピーに注目してみてください。
車椅子に乗り、小さなブーケを持つジョングクの明るい表情の印象から、一見前向きなコピーのように思えます。では、ジョングクの「心が向かう方向」とは一体どこでしょうか。
事故にあって以降、本当の兄のように慕っていた6人を信じることが出来なくなっていたジョングクに追い打ちをかけたのは、親しくなった女性が突然いなくなってしまった喪失感でした。
【花様年華】の中で幼い頃に父親に見放され、新しく築かれた家庭にも居場所のないジョングクは、自身に対して強い無価値感を持っています。ジョングクの行動の節々に、あと一歩踏み出せば、というような瀬戸際の状況(塀の上を歩く、不良にわざと絡まれる、高いところに登るなど)で死を身近に感じることで”今、生きている”と実感する傾向が見て取れます。Highlight Reelの中にも、ふと思い立ったように車椅子で危険な疾走をする描写がありました。
これは【花様年華】の中でユンギが常に思考の根底に抱えている想いです。ユンギは6人、特にジョングクに対して、自分と関わることで相手を不幸にしてしまうという考えを持っています。
ユンギの自己肯定感の低さは、幼い頃に母親が口にした「あなたを身ごもらなかったら、あなたが生まれてこなかったら…」という言葉に起因しています。ユンギは些細なことで”自分は生まれてくるべき存在ではなかったのだ”と感じてしまうストレスに耐え切れず、自分が傷付くことへの先回りとして、周りに対して「近付くと不幸になるぞ」と予防線を張ってしまうのです。
前回のまとめ記事でも触れましたが、ジミンには「嘘」に関するエピソードが多いですね。【花様年華】の中のジミンは幼少期に起きたある出来事によって、自分自身が”赦されない存在”であるように感じているようです。
year11.04.06にプルコッ樹木園で幼いジミンに起きた出来事に関して、現時点で明かされているのは「誘拐事件の目撃」です。遠足で訪れた樹木園の裏門近くの倉庫で、全身に痣のある同年代の子供を追い詰める男を目撃し、ジミンは雨の中ただ怯えて息を潜めていました。子供は男に制圧されて連れ去られ、その時に見た子供の流血と雨、泥だらけになって逃げ出した記憶がジミンの発作の原因です。幼いジミンにとって耐え難い出来事で、ジミンは自分自身の保身のために「何も知らない」と嘘を吐き続けていました。
ビジュアルのように、作中でナムジュンがバスや図書館で自分と近い境遇であると思われる女性の後姿をそっと眺める描写が何度も登場します。ナムジュンはヘアゴム一つ手渡すことも躊躇い、結局最後まで女性に声を掛けることはありませんでした。
家族のため、少年の頃から”大人”にならざるを得なかったナムジュンは、自分が友人たちのように気持ちのままに行動することが出来ないもどかしさを感じていました。周囲の抱える問題に気が付いていながら自ら声を掛けることはなく、ソクジンの裏切りにも目を瞑り、衝突しようとするテヒョンを嗜めて事を治めようとする描写もありました。そして、そんな自分を頼りにするテヒョンやジョングクに対して誠実ではないという葛藤があります。
どんな時も理性的に行動するナムジュンとは対極に、テヒョンはいつでも気持ちのままに行動します。【花様年華】の中の具体的な出来事としてテヒョンが”離れていった”と感じているものは多く、かつて優しかった父親の愛情、母親、飼い犬、疎遠になった6人、親しくなった女性などが該当します。
同じように母親に捨てられた過去を持つホソクと比べ、MVなどでは母親への未練が描かれるシーンのないテヒョンですが、NOTESには母親が自分たちを置いて出て行ったyear11.10.02を回想する記述があります。幼いテヒョンは静かに家を出た母親の後を追って夜通し歩き続けましたが、母親が振り返ることは一度もありませんでした。そして、ふと足を止めてその場に立ち止まった母親の姿を見たテヒョンは踵を返してひとりで家に帰ります。
テヒョンは、あの時歩き続けていれば母親に追いつくことが出来たかもしれない、泣いて追い縋れば手を引いて家に戻ってくれたかもしれないという一抹の思いを抱えていました。
グラフィティに小さく描き加えられた「君のせいじゃない」というメッセージは、あらゆる場面で自分の選択を後悔するテヒョンの全てを肯定してくれる赦しのような言葉でした。
誰かのために何かをする、【花様年華】で描かれるホソクは意識せずにそんな行動のとれる人物です。いつでも明るく振舞って快活な自分でいることを大事にしていたホソクでしたが、知らず知らずのうちにそんな自分で居続けること自体が息苦しくなっていたようです。
ホソクが幼馴染のお姉さんのダンス留学を知ったとき、自分の置かれた状況と比べて卑屈になってしまう描写がありましたよね。この時のホソクは、自分勝手に連絡を怠る6人や思いのままに自暴自棄になるユンギに不満を募らせていて、負の感情に蓋をしてまで自分を犠牲にすることを放棄し、あえて不機嫌なまま過ごしていました。
一見マイナスの出来事のように描かれたその一連の心理の変化は、結果的には意図せずホソクにとっていい影響を与えることになり、ホソクは自分の気持ちに素直になることが出来ました。
事実としてタイムリープを繰り返していたソクジンの「もし時間を戻せるのなら」という想いは決して夢物語ではなく、ある程度現実的な願望であったはず。花火大会の日に渡すことの出来なかった”スメラルド”のブーケを抱えるソクジンの憂いを帯びた横顔が印象的です。
ソクジンは幼い頃から”いい人になりたい”という想いに固執していて、親密な仲になった女性に対しても、最後までありのままの自分を見せることはありませんでした。
3組のペアが描かれるポスターでは、その構図にも注目したいです。
3つに共通して書かれるキャッチコピーは、
病院の廊下に座り込むユンギと病室のベッドにいるジョングクが描かれるポスターでは、二人は違う場所にいながら互いに視線を合わせているような構図です。それとは対照的に、ダンスチームの練習室にいるホソクとジミンは、同じ場所にいながら異なる感情で違う景色を見ています。
そして、地面に寝そべるナムジュンとテヒョンのポスターには「save me(僕を救って)」のグラフィティが描かれます。このグラフィティはテヒョンが発する唯一のSOSでしたが、ポスターを逆さまにしてナムジュンの視点から見てみると、テヒョンがHighlight Reelの中でバス停に描いていた「I’m fine(僕は大丈夫)」のグラフィティが浮かび上がります。ナムジュンはテヒョンの心の叫びに向き合うことが出来ませんでした。
BUcontent外になりますが、BTSの楽曲である『Save ME』『I’m Fine』についても少し考えてみると、美しく反転し対になった歌詞の構成になっていることがわかります。また、専門知識がないので受け売りですが『I’m Fine』のバックミュージックには『Save ME』の逆再生音源が使用されるなど、色々と仕掛けが隠されているようです。
ソクジンはペアのカットがない代わりに、単独のポスターがもう一枚公開されています。
ここで指す「あの夏の海」は直感的にyear22.05.22であると考えられますが、ソクジンはタイムリープで実際にその日付に戻ることが可能です。とすると、戻ることが出来る日付に対して「もしも時間を戻すことが出来るなら」と願うのは少し違和感があると思いませんか?(あと、単純に5/22って夏?)
わたし個人的には、ここで指される「あの夏の海」とは、どんなにタイムリープを繰り返しても戻ることの出来ない、7人の【花様年華】であるとされている学生時代のyear19.06.12に行った「あの夏の海」ではないかと考えます。
※追記※
上記のように想定していましたが、記事の投稿にあたり改めてよく考えてみると、year22.05.22に行った「あの夏の海」の帰りに起きたジョングクの事故でタイムリープが起こらなかったことで、もしかするとソクジンは「タイムリープが終わった」と考えているのかもと思えてきました。
物語の続きを知っているわたしたちからすれば戻れる日付であることは明白ですが、この時点でソクジンはすでに戻ることの出来ない出来事だと認識しているのかな?けど、だとすると「もし”また”時間を戻すことができるなら」という表現になりそうだなとも思うんですが…… みなさんはどう考えますか?どちらの日付を想定しても、物語の解釈には影響のない部分かと思いますが、わたし的には学生時代に行った海説を推したいです。
……ポスターだけでこんなに考えてる人、暇すぎます。
書籍
■花様年華 THE NOTES
出版されている花様年華THE NOTE1,2とは別に単発の日付のNOTESが公式Twitterにいくつか投稿されています。(その後重複もしくは修正が加えられて書籍版の花様年華THE NOTESに掲載されています。)
Twitterに投稿された花様年華THE NOTESの一つであるyear22.06.13のソクジンのNOTESを和訳してくださっている方のブログをご紹介します。
*追記*
Twitterに投稿された全45のNOTESを和訳したものに、簡単な解説を加えて集約した記事を投稿しました!前編後編の二部構成で完結しておりますので、お時間ある方は読んでみてください。
■ジェームズ・ドゥティ著『Into the Magic Shop』
本著はBTSのフルアルバム『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』に収録されたJUNG KOOKプロデュース楽曲『Magic Shop』のモチーフとなったとされている書籍です。”Magic Shop”というワードは、前述した'FAKE LOVE' Official Teaser 1の冒頭にも登場し、”恐れを肯定的なものへと変える心理治療法”であると説明されています。
脳外科医である著者ジェームズ・ドゥティの半生をたどった実話を元に、成功と挫折のプロセスを経て「共感と利他主義」という人生の真実に辿り着く体験を描いています。
授賞式でスポイラーティザーが出現したこときっかけに本著の売り上げが伸びたという記事に、著者であるジェームズ・ドゥティ氏本人がリアクションをしているツイートもありました。
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⑩~⑪の記事で整理した出来事に関連した映像以外の作品のまとめは以上です。
尚、NOTES等のより詳細な関連事項は各記事にある年表の下記の部分に記載があります。
特に見てほしいもの
忙しい方向けに一言でまとめます。
上記でご紹介したBUコンテンツ作品の中で、必見と言っても過言ではないものは、【LOVE YOURSELF Highlight Reel '起承轉結'】です。
そして引き続き【花様年華 THE NOTES】を精読していただきたいです。
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さて、次回の更新ですが、もう少しだけ本筋から離れた部分で補足資料的な記事を投稿してみたいと思います。
詳細は次回記事冒頭で整理しますが、韓国語のみで公開されているアルバム封入のmini版 花様年華THE NOTESの和訳をまとめた記事です。BUコンテンツの考察に必要不可欠なTHE NOTES、書籍版をお持ちの方はもちろん、そうでない方もぜひじっくり読んでみてくださいね。
〈次回〉
※更新はTwitter(@aya_hyyh)でもお知らせします。
※時系列まとめの次回記事はこちら※
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ありがとうございます💘