BTS【花様年華】⑦叶わないテヒョンの救済
ソクジンがジミンを病院から連れ出したあと、7人は束の間の穏やかな時間を過ごしていました。
いつものようにグラフィティをして警察に捕まったテヒョンは、指導を受けた後ひとりで帰路につきます。
テヒョンがアパートに戻ると、父親が酒を飲んで暴れ、殴られて床に倒れ込む姉の姿がありました。すぐに自分の部屋に入りなさいと叫ぶ姉を横目に空の酒瓶を手に取ったテヒョンは、そのまま父親を殴り、割れた酒瓶で刺し殺してしまいました。
ジミンを気にかけてナムジュンのコンテナに足繁く通っていたソクジンは、ジミンの体調が良くなり明るい表情をみせることが増えてきたことに安心していました。
ナムジュンと2人でコンテナの屋根に腰掛け、ジミンを連れ出してよかったと話していたとき、血相を変えたホソクがスクーターに乗って現れました。
「大変だ、テヒョンが――――」
ソクジンが警察署へ駆けつけると、本当の現実で見た光景と同じ、”親殺しの少年”としてマスコミや野次馬に取り囲まれるテヒョンの姿がありました。
こうしてまたソクジンはyear22.04.11へと戻ってしまいました。
ジミンを病院から連れ出し、また7人で一緒に過ごせる【花様年華】の日々を取り戻したような気持ちでいたソクジンでしたが、油断していたその一瞬で大きく流れが変わってしまいました。
ソクジンは、本当の現実でテヒョンが父親を刺し殺してしまうことを知っていたはずなのに防ぐことが出来なかったと後悔し、今度は絶対に失敗しないと心に誓ってまた再びyear22.04.11からの全てをやり直していきます。
そして再び辿り着いたyear22.05.20、グラフィティをして捕まったテヒョンを警察署まで迎えに行き、車に乗せて何か悩んでいることはないかと問いかけました。テヒョンは「話したくなったら話します」と答えるだけで、すぐに話題を変えて最近見る悪夢の話をするだけでした。
テヒョンの見ている悪夢は、ユンギが火事で死に、ジョングクがビルから転落し、ホソクは怪我をして、ジミンは病院に、ナムジュンは刑務所に閉じ込められている、ソクジンだけが知る本当の現実で起きた出来事です。
確実に何かが変わっている、そうソクジンは考えました。
行動を変えなければ何も変わらない、しかし変えすぎても失敗してしまう。そんな葛藤の中、ソクジンは自分は大丈夫だと強がるテヒョンの後ろ姿を見送りました。
テヒョンが家に入ると酒に酔った父親が姉を殴りつけていて、それを見たテヒョンは空の酒瓶を手に取り、父親に向かって大きく振りかぶりました。
酒瓶が何かに深く突き刺さる感覚があり、ふと我に返ると、目の前に倒れていたのは、腹から血を流し「またお前を救えなかった」と謝るソクジンでした。
自分が死んだら、全てはこのまま終わってしまうのか。これからみんなはどうなるのだろうか。そう考えながらソクジンは意識を手放しました。
「すでにもつれてしまった運命から、ひとりで抜け出すことは出来ないだろう」そう誰かの声が聞こえ、ソクジンはまたyear22.04.11に戻ってきていました。
この時のタイムリープで、【花様年華】の世界では、ソクジン自身が命を落としたときにもタイムリープが起こることがわかりました。
これまで通りナムジュンの喧嘩やジョングクの転落事故を防ぎ、ユンギを火事から助け、ホソクとジミンとも再会を果たしたソクジンに訪れた次のyear22.05.20では、テヒョンが警察に捕まり、父親を刺殺する事件は起こりませんでした。
ソクジンが初めてタイムリープをしたのは、本当の現実で最初に訪れたyear22.05.22に拘置所にいるナムジュンを訪ねた帰りに父親を殺したテヒョンが送検されるのを目撃したことがきっかけでした。
ソクジンの知る本当の現実は、year22.05.22までに起こる出来事です。
つまり、これから先に起こることはどれもソクジンにとっても初めて起こる予想が出来ない出来事で、ソクジンはこのyear22.05.22を7人で乗り越えれば、これから先も一緒に笑い合える幸せな未来が続いていくのだと信じていました。
本当の現実でテヒョンが事件を起こすはずだったyear22.05.20の翌日、7人は廃プールで待ち合わせをして遊んでいました。学生時代に7人で過ごしていた【花様年華】の時代のように、ただ楽しく笑い合える時間を過ごします。
夜になり、焚火を囲んで幸せな時間を噛み締めていたソクジンは、これからまた7人であの思い出の海へ行かないかと提案しました。
ソクジンの運転する車で海へ向かい、途中で立ち寄ったガソリンスタンドで食料を買い込み、ナムジュンはソクジンとユンギを写真に収めます。
荷台には、安心しきった顔で眠る弟たちの姿がありました。
朝になり海に着くと、7人は【花様年華】の時代に訪れたあの海での1日のようにひとしきり遊んだあと、揃って写真を撮りました。
かつてユンギが退学になり、アジトに集まることが出来なくなってからも、度々7人で笑って過ごした日々を思い出してひとり学校へ通い続けていたジョングクは、またこうして7人で一緒に過ごせる時間を特別に感じていました。
堤防に停めた車から降りると、ホソクが学生時代に来た時にはなかった展望台の存在に気が付きます。
学生時代、工事の音にかき消されながら思い思いに願いを叫んだ堤防に腰掛け、7人はまた海を眺めていました。
日没が近付き、青く優しかった空が赤黒いオーラで満たされ始めた頃、テヒョンはふと思いついたかのように静かに展望台によじ登り、6人は首を回してテヒョンを見上げました。
頂上に着いたテヒョンは、自分を見上げる6人の顔を一人ひとり眺めて微笑むと、覚悟を決めたかのように真っ直ぐ海を見つめ、そのまま勢いよく走り出しました。
テヒョンはまるで翼を持った鳥のように跳躍して一瞬空に停止したかと思うと、辺りには鏡が割れたような音が響き、カーテンが開かれたような冷たい風がソクジンに押し寄せました。
そして目を覚ましたとき、日付はまたyear22.04.11になっていました。
ソクジンが、本当の現実で起こった最悪のシナリオを全て塗り替えたと思った矢先の出来事でした。
テヒョンが展望台から飛び降りた理由について、現時点の【花様年華】の中でははっきりと記述されたものはありません。もしかすると、テヒョンはyear22.05.20以前に事件を起こしていたのかもしれないし、そうでなくても自ら命を断ちたいと思うような深刻な状況であったのだと考えられます。
【花様年華】でのテヒョンは一貫して、自分の置かれた状況や抱える悩みを誰かに打ち明けて助けを求める行動をとることはありません。そのため、海で楽しい時間を過ごしていた6人は、そんな追い込まれたテヒョンの本当の想いに気付くことが出来ず、テヒョンはひとりで極端な選択をしてしまいました。
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次回の記事では、7人全員を救済し、再び揃ってyear22.05.22を迎えるまでの出来事を整理します。
〈次回〉
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