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バッグごとどこかに落としてきた話。

あれは娘が高校生の時。
学校に行かずずっと家にいる娘の事で私の精神状態が限界に近づいていた頃。

夫が平日に休みを取ってくれて
「気分転換に筑波山にでも行ってみようか」と、私を連れ出してくれました。

筑波山とは茨城県つくば市にある標高877mの日本百名山。日本百名山の中で1番標高が低い山。
筑波山ジャーナルより

筑波山の中腹にある駐車場に着き、前払い制の駐車料金を払おうとした時バッグが無いことに気づきました。

頭の中真っ白。
なぜバッグが無いのか。
思い出したくても思い出せない。
バッグが無くなった理由が全く分かりませんでした。

夫は1番近くにある茨城県の警察署まで車を走らせてくれました。そこで遺失届けを出し、クレジットカード会社や銀行に電話をし筑波山には登らず私と夫は家に帰ることに。

その帰り道、私のスマホが鳴りました。
家の電話からの着信。
電話に出ると娘からでした。

「お母さん今どこにいるの?鷲宮駅前の交番から電話があったよ。バッグが届いてるって。」

私はびっくりしました。
なんで?!なんで鷲宮?!?!

(鷲宮は埼玉県の北東部に位置します。
アニメらき☆すたでも有名になった鷲宮神社のある所です。)

娘に教えてもらった交番の電話番号に電話をし、バッグが届いている事を確認。
私たちは交番に向かいました。

交番に着くと私のバッグがそこにあって、数時間ぶりの再会をしました。

お巡りさんと一緒に中身を確認すると、無くなっているものは何ひとつありませんでした。心の優しい善良な方に拾ってもらえたのです。

拾ってくださった方は男性。
仕事中、交差点にバッグが落ちていたのを見つけて拾って下さり、仕事を1件済ませてから交番に届けて下さったそうです。

その交差点の場所を確認すると、筑波山に向かう道中、大きな道路を横断する時、押しボタン式の信号機を押すために車から降りた場所でした。

押しボタン信号機を押しに車から降りた時に私はドサッと道路にバッグを落としたようです。
乗る時にバッグは視界に入らなかったんですよね。

『生きることってなんでこんなにつらいんだ』と、日々その事ばかり考えていて、心ここに在らず。
バッグを落とした事に全く気が付かなかったというわけです。

お巡りさんがおっしゃるには、その方は『お礼は不要。ただ無事に持ち主に戻ったかの連絡は欲しい。』との事だったので、お巡りさんからその方のお名前と電話番号が書かれたメモを頂き私はお電話でお礼をさせて頂きました。

「無事に持ち主の元に戻って良かったです!仕事中で、どうしても1件用事を済ませなければならなかったのですぐに交番に行けずすみませんでした。」とおっしゃられました。

私は何度も何度も何度もお礼を伝えました。

あれから5年。
その時にお巡りさんから頂いたお名前と電話番号が書かれたメモは、今も手帳に入れて大切にし、その方の幸せを願い続けています。


その事件から数週間後。
夫は『筑波山リベンジしよう!』とまた休みを取ってくれて無事に筑波山に登ることが出来ました。
(筑波山は双耳峰です。ケーブルカーで男体山頂上駅まで行き、そこから山頂連絡路と呼ばれる男体山の頂上から女体山の頂上までを結ぶコースを登山しました。)

その時に筑波山の頂上で撮った写真がサムネイルの写真です。

そして筑波山の頂上で私はこう思いました。
『この世の中は私が思っているよりもずっとずっと広くて、沢山の人々が暮らしていて、みんな何かしら抱えて生きている。私の悩みなんてちっぽけだ。』
と。

その時の気持ちは今でも忘れません。

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