娘が先天性甲状腺機能低下症だと分かった日
生後8日目。可愛い可愛い娘がいる生活に慣れ始めた頃、産院からとある知らせが届いた。
「退院日に受けた先天性代謝異常の検査に引っかかりまして。院長から説明があるので、明日お母様だけ病院に来れますか?」と。
一瞬、夢か現実かわからなくなった。電話では嘘みたいに冷静に対処していたが、心はそうではない。
その日は不安で不安で涙が止まらなくて、でもそんな気持ちはよそに娘はおっぱいにうんちに泣く。親の心子知らずとはこのことか。授乳とおむつ替えを繰り返すうちに、あっという間に次の日になった。
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娘を夫に預け、私は一人で病院へ向かう。妊娠中は検診のたびにワクワクしながら歩いていた道が、とてつもなく長く感じた。あの頃のように、帰りにコンビニで何か買って行こうかと考える余裕もない。
早く、知りたい。でも、知るのは、怖い。そんな複雑な気持ち。
病院に着くと、看護師さんに呼ばれる。小さな部屋で待っていると、院長がやってきて言った。
「甲状腺の項目でちょっと引っかかってね。先天性甲状腺機能低下症っていうんだけど。その疑いがあるから、大学病院で精密検査してきてください。」
「先天性甲状腺機能低下症」
生後4〜6日に受ける先天性代謝異常検査で、最も引っかかる子が多い疾患だ。甲状腺が小さいもしくは欠損している為、ホルモンが出ない。
1日1回、薬さえ飲めば他の子と変わりない成長や生活が可能だ。薬さえ、飲めば。
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家に帰って、夫に伝える。夫は目に涙を浮かべながらも、「もしそうでも、一緒に頑張ろうね」と娘を撫でながら言ってくれた。
嬉しかった。嬉しかったけれど、私はどうしても娘が「かわいそう」だと思ってしまっていた。親として、そう思う自分が嫌だった。
もしかしたら、一生薬を飲まなければならないかもしれない。定期的な通院と採血を、ずっと続けなければならないかもしれない。
娘が自分の疾患をわかるようになった時、どう思うだろうか。「どうして私が」と言われた時、私はなんて言ったらいいのだろう。
「一緒に頑張ろう」という気持ちより、そんなことばかり考えてしまう私は、親としておかしいのだろうか。
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もやもやが晴れぬまま、精密検査の日。
結果、やはり甲状腺刺激ホルモンの数値が高かった。先生は慣れた様子で診察、説明をする。そしてその日から、1日1回粉薬の内服が始まった。
甲状腺機能低下症が先天性のものか一過性のものか、判断するのは難しい。内服と通院を継続し、しばらく経過をみることになった。
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毎朝、お水に溶かした粉薬を頑張って飲む娘。まだ意思疎通ができないけど、不味いのか渋い顔をする。でも吐き出したり大泣きしたりしない娘が本当に偉くて、私と夫は泣きそうになって。
こんなに小さいのに、こんなに頑張っている娘を見ていると、自然と「一緒に頑張ろう」と思えた。
これからどうなるとか、周りと違うとか、どうでもいい。ただ今、愛する娘は頑張って生きている。それを支えることに全力を注ごう、そう思った。
こんなにもただ愛しい。そんな存在、私は他に知らない。
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まだ産まれて間もない娘は、大切なことに気づかせてくれた。子供というのは本当に尊く、偉大な存在だ。
明日は、通院日。また一緒に頑張ろうね。
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