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日本語で文章を書くすべての人に贈りたい、テクニカルライティング入門書のご紹介

「情報過多の時代でも、しっかりと読み手に届く表現方法を模索していきたい」

そんな思いを持ちながら、Peatix Japan株式会社でテクニカルライターとして働いているNakatsukaです。


みなさんは自分の”日本語で文章を書く力”に自信がありますか?

テクニカルライターという専門職として日々文章を書いている私自身、この質問をされたら迷わず「NO」と答えます。


日本語の語彙や文法の幅広さや複雑さを考えると、自分の文章は完璧であると胸を張れることは一生ないと思っています。

言葉は「相手に理解されたとき、初めて伝わった」と言えるでしょう。そのため、いくら語彙・文法マスターになったとしても、場面や状況によってその都度変わる相手の立場を考えながら言葉を紡ぐ行為は、トライ&エラーの連続だと考えています。


ただし、この難しい日本語を使いこなし、「うまい文章を書けるようになりたい」と思っているビジネスパーソンは多いでしょう。

そんな方々に、「テクニカルライティング」という、簡潔かつ明快で誤解を生まない文章を書くスキルを身につけることをおすすめしたいです。


今回は、テクニカルライティングについて学べる書籍、『読み手につたわる文章 - テクニカルライティング』をご紹介します!



ビジネスパーソンの必須スキル「テクニカルライティング」

本書の冒頭では、テクニカルライティングを「実用文を分かりやすく書くための技術」と定義しています。

仕事で日本語を扱う人は、日本語を書くという行為をほぼ毎日行っていますよね。

デザインはデザイナー、プログラミングはプログラマーなどの専門職があり、専門的な技術を活かして仕事をします。


「書くこと=ライティング」はライターという専門職があるとはいえ、それ以外の職種の人たちも日常的に書くという行為を行っていると思います。

ただし、誰もが毎日行っているからこそ、デザインやプログラミングと比べて、その具体的なスキルへの関心は低くなっているのではないでしょうか?


テクニカルライティングはライターだけのものではない

現代は情報過多です。書き手が手間暇をかけて書いた文章でも、読み手に分かりにくいと判断された情報は即刻スルーされます。

また、社内での文章のやりとりの場合、正しく伝わらなければ仕事は進まないどころか、勘違いが生じて振り出しに戻ってしまうこともあります。

せっかく仕事をするのならば、無駄なやりとりを発生させず、スムーズにタスクを進めたいですよね。


テクニカルライティングは、ライターのための専門技術ではありません。仕事で日本語を扱うすべての人に必ず役立つスキルです。

ただし、テクニカルライティングに関する情報は、書籍でもインターネット上の情報としても、まだまだ少ない現状です。


そんなテクニカルライティングについて、具体的なライティングのポイントからレビュー方法まで、網羅的にまとめているのが本書です。

「テクニカルライティング」という言葉を初めて聞いた人も含め、仕事で日本語を扱うすべての人におすすめしたい、テクニカルライティングの入門書となっています。


比喩を豊富に用いた抜群の読みやすさ

みなさんは文章術に関する実用書を読んだことがありますか?主に文法や分かりやすい表現方法などを体系化した書籍のことを指します。

​​『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』というまとめ本があるくらい、巷には文章術に関する本が溢れています。


文章力を上達させたいと思ったら、まずは気合いを入れるために本屋さんで似たようなタイトルの本を大量に買うこともありますよね。かつてライティング教室に通い始めた時の自分もそうでした。

ただし、ページをめくり始めて5分ほどで、多くの人が抱くであろう感想−

「、、、面白くない」

テスト前、国語便覧巻末の文法解説をひたすら読むことに苦痛を覚えた学生時代が思い出されます。

文章術の実用書ってなかなか面白くないですよね。基礎を学ぶためには面白さはいらないのかもしれませんが、大学時代にバイトとして塾で4年間子どもたちに勉強を教えていた私の経験から語れるのは、「人は面白さを感じられなければ、学べない」ということです。


イメージを膨らませながら理解できる比喩の豊富さ

しかし、このテクニカルライティングに関する実用書は、とにかく分かりやすくて面白い比喩が豊富なため、抜群に読み進めやすいのです!何度も「このユニークな例え、どこから思いついたの?」と1人で突っ込みました。

巷の文章術の本が定年前のおじいちゃん先生がぼそぼそと語る授業だとしたら、この本はまさに予備校カリスマ講師の惹きつけられる授業。大切なポイントをはっきりと押さえながら、その合間の比喩が秀逸で、書き手が伝えたいメッセージをよりはっきりとさせています。

例1)

 あなたがこれから書く文章は誰に向けたものなのかを最初にしっかり決めておかないと、のちのち「どこまでさかのぼって説明しないとだめなんだ……?」と頭を抱えることになったり、あるいは読者に「こんな簡単なことはもう知っている。もっと踏み込んだ内容が読めると期待していたのに」と不満を持たれたりします。
 どれだけ美味しいめんつゆでも、麦茶だと思って飲んだ人からすると吹き出すくらいひどい味に感じられます。文章を読み終わったときに、文句を言いたくなったり低評価を付けたくなったりするいちばんの動機は「思っていたものと違った」です。読み終わってから残念な思いをさせないよう、書く前に想定の読者層をはっきりさせておきましょう。

「2.1.1 読者層を決めてから書こう」より

例2)

 レビュアーは文章を読むだけなので、リソースの 100% を「注意深く読むこと」に使えます。
 一方、書く側は「情報全体を把握し」「どうつたえるか考え」「キーボードを叩いて文章を組み立てながら」「読み返し」「修正案を再び考え」「どちらがよいか判断する」というように、リソースを思考や判断、出力といった様々な作業に振り分けています。
 わらわらと 10 人いる幼児の面倒を同時並行で見なければいけない保育士と、1 人だけにつきっきりになれる保育士だったら、それは後者の方が「襟元にカレーのシミがあるな」とか「昨日より少し元気がない」とか色んなことに気付けるはずです。

「4.2.3 レビュアーが気付いたことに、書いたとき気付けなかったのは当然」より

めんつゆと麦茶、10人の子どもをとりまとめる保育士と1人だけを見守る保育士。よくぞこんなに的確で面白い例えを出せるなあ、と感心しっぱなしでした。

このように、これまで文章術の本に挫折してきた人も無理なく楽しくライティング技術を学べます。


とにかく書こう、話はそれからだ

まずは、こちらの引用文をご覧ください。

 そしていっぱい書くときに大事なのは、「完成させること」です。せっかく色々書いたとしても、中途半端な書きかけがブログの下書きにいっぱい溜まっていたり、思いついた構想ばかりがメモ書きとして積まれていたり、という結局誰にも読んでもらえない状態ではうまくなりません。
 完成度を求めた結果、いつまでも出来上がらない、完成させられない完璧主義はやめましょう。完成度にこだわりすぎず、とにかく完成させて世に出すことを優先しましょう。一度できあがって人目に触れる場所に出さないと、その次の改善するというステップにも進めません。

「1.4 完璧主義よりも完成主義」より

「完璧主義はやめましょう」

この言葉、2023年のWBC決勝前に、大谷翔平選手がチームメイトに対して「憧れるのをやめましょう」と語りかけたくらい、説得力があると思いませんか?


「完成度にこだわりすぎず、とにかく完成させて世に出すことを優先する」というポイントは、新入社員のバイブル『入社1年目の教科書』でも、「50点で構わないから早く出せ」という表現で言及されています。

さすがに新入社員を過ぎたら70点くらいは狙いたいものの、自分の中で完璧な文章を書き上げるまでに3日かかるくらいなら、ある程度の文章を1日で書いて、もう1日で他の人のレビューをもらって完成させた方が、スピードとクオリティーの両方が上がります。


完成しなければ意味がない


私もどちらかというと完璧主義で、「時間がある限り素晴らしいものを!」と奮闘してしまうタイプでしたが、時間は有限です。30歳を過ぎてから、これまで以上に時間の大切さを身に染みて感じるようになってきた今日この頃、とにかくすばやくサイクルを回し続けることを重視しています。

文章に完璧はありません。とにかく文章は読み手に読まれて、伝わって初めて価値が生まれます。そこに”存在する”だけでは意味がありません。


私がこの本を読んだのは、発売日の2024年5月25日。読了後、じっくりレビューを残しておこう〜と思っていましたが、この一節に感化され、一気にレビューを書き上げて公開しました。

本書では、Chapter01.「テクニカルライティングをはじめる前に」でライティングに関するマインドセットにも触れているため、普段なかなか筆を走らせられない人の背中も押してくれるはずです。


まとめ : テクニカルライティングの学びの輪を広げたい

今回ご紹介した書籍は、尊敬するテクニカルライターであるmochikoさんが執筆されました。

こんなに分かりやすく楽しくまとめてくださり、同じテクニカルライターとして嬉しい気持ちになった結果、この本の魅力を伝えたい思い、レビューを書きました。


まだまだポジションが少ないテクニカルライターという職種ですが、この1冊をきっかけに、その仕事内容やスキルが多くの人に伝われば嬉しいです。

書籍の購入は、以下の「技術書典マーケット」からどうぞ!


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