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抽象と具体のドッジボール〜「藝泊」DAY2:ワークショップルポ

2020年8月6日(木)に行われた、「藝泊〜泊まれるアートを考えよう〜」ワークショップについて、グループワーク・ファシリテーター視点のルポルタージュ。当日の空気感を感じていただければ幸いです。
(Written by AX ULTRA LAB 清水)

▼イベント概要

突然のファシリテーター任命

2020年8月6日(木) PM16:00。DAY2開始2時間前。
イベントには緊急対応はつきものである。

前々日に開催されたDAY1のトークセッションが思いの外盛り上がったこともあり、DAY1にワークショップの冒頭部分だけ行う予定が、チーム分けまででタイムアップとなってしまった。
中1日でワークショップの流れを大幅に組み替え、その結果、私は本番2時間前にワークショップチームのファシリテーターにアサインされた。もちろん心の準備はできていない。

急なファシリ任命に大いに戸惑いながらも流れの確認MTGは進み、ワークショップ内で使う「リソースカード」の説明となった。

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リソースカードとは今回の企画で私達が使えるリソース、つまり資源のリスト。HOTEL SHE, KYOTOに既にある設備・企画、世の中でいま使えそうなテクノロジー、デザインのヒントなどにキーワードが全部で29枚のカードに記載されている。
これを、オンラインのワークショップではいわば付箋のように組み合わせてアイディアのヒントにするという仕組みだ。

「HOTEL SHEカード」について、HOTEL SHE, KYOTOの田中さんより補足説明をいただく。DAY1のトークセッション内でホテル内の紹介を中継でつなぐパートがあったが、それを見ていたのでカードの内容がすんなり理解できた。本当は現地に一度でも行っておきたかったけれど。

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PM 17:30。たった1時間半のMTGなのに急激にお腹が減った。
偶然持っていたチョコレート一粒と甘めのミルクティーで慌てて糖分を補給した。

アイディアの拡散、拡散、拡散

PM18:00、ワークショップスタート。
全体での集合などはなく、学生たちは最初から割り当てられた自分のチームのZoom部屋に入ってくる。
手元の名簿を見て名字が同じ人が2ペアいることに気付いたので、「今日は下の名前で呼び合いましょう」と学生に声をかける。

ワークショップで使ったツールはZoomとmiro。私がmiroを画面共有しながら、Zoomで話し進めていく。

まず、メンバー各々がリソースカードをとってくる。気になる技術、使ってみたい設備など、ここは直感でOK。

その直感で集まったカードをランダムに3枚〜4枚のグループにまとめて、そのカードの組み合わせで何かアイディアを出してみるという、頭の体操兼大喜利のようなアイディエーションだ。

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学年も専攻も違う面々のため、まだコミュニケーションに少し固さが残る。こちらから指名しながら話すきっかけを作ろうとしていくが、話を振りながら広げたりつなぎ合わせたりするのに頭がフル回転である。時間を見る余裕がない。

嗅覚と聴覚

PM18:30。
各チームの部屋を巡回している、魚住さんとHOTEL SHE, KYOTOの田中さんがZoomに入ってきた。リソースカードの中で気になっていたことをいくつか質問する。

本来はそろそろひとつのアイディアに収束し、企画シートに内容がまとまっていなければいけないタイミングのはず。まだ大喜利1つ目で盛り上がってしまっている。

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話の流れを汲むと、何か五感を使ったものにしたいけど、何の感覚を研ぎ澄ますためには何をどうすればどうなるのか…というところでぐるぐるしているようにも思う。

以前魚住さんにインタビューした時に聞いた話を思い出した。

「音と香りって、文字情報やビジュアルに保持しようとすると体験質がどうしても変わってしまう、一方で物理的に広い範囲に伝播しやすいらしいよ」

この話が面白いと思ったメンバーが何人かいたようで、顔色が変わった。音と香りで体験を変えられないか、という話に流れていった。

寸劇でディテールを想像していく

PM19:10。
タイムテーブルでは、15分後の19:25から各チームの発表タイムである。発表も何も、まだ香りと音かな?くらいの共通認識。
やばい、全然時間がない。

学生たちとディスカッションしながら、手元のファシリテーター用LINEグループで「全然終わらないです」とLINE。時間調整の返事が来るたびにちょっと気が散って、学生たちには申し訳ない。

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「よし、発表を見越して配役を決めて劇を作ってみよう」

このままディスカッションしていても時間に間に合わないな、と思い強制的に寸劇タイムに切り替えた。

なぜ寸劇なのか。
今回の企画はどんな形であれコミュニケーションを媒介にして成り立つはず。そのため机上で「こうやって、次にこれを提供してこうやって」とシミュレーションするよりも、寸劇で企画提供者と宿泊者の役になりきってやってみると、想定している体験が本当にAX的になっているかどうかを、リアルに想像できる。

ホテルのロビーの人と、宿泊客の配役を決めてとりあえず始めてみる。もちろん、設定やバックグラウンドが曖昧なので何のセリフを言えばいいか分からないので最初は寸劇が始まらない。
逆に言えば、すらすらとセリフが出てくるくらいに企画や体験がイメージできていればOKなのだ。

何回か練習&検証を繰り返し、寸劇にもある程度流れができてきた時に、急に宿泊者役の学生が黙った瞬間があった。
ちょうど音楽を聴いて、香りを楽しんている瞬間の演技だったのだ。五感を使った体験を寸劇で表現すると無言になる、というのが面白かった。(「いま香りが立ち上っています…」と私がアテレコを入れた)

PM19:40。各チームの発表開始。
他のチームの偵察なんて到底できる余裕がなかったので、同じスタート地点から始まって全然違う発想/違うアイディアが5つ生まれていることに、シンプルに感心した。

PM21:00。
講評まで含めて、ワークショップのすべてのプログラムが終了した。
嵐のような怒涛の5時間だった。


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