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デファクトはどこへ行くのか

この類のイラストをよく目にすることはないだろうか。
クリエイティブ業界にいるとなおさらだが、
私は1日1回くらい見る。

同じ職場の人間が資料を作成する際にも多用されているし、
民間問わずクライアントが作るブリーフィングシートなどにもよく使われる。

イラストレーターのふみねたかし氏が運営する「いらすとや」で配信されており、
1著作物に21点以上使用しなければ、
個人、法人、商用、非商用を問わず無償で使用することができる。

一般的には写真やイラストを作成する際には利用料を払い利用することが多い。
これは著作者次第であるが、ふみねたかし氏も著作権は放棄しておらず、
一定の条件内では利用料を取らないよという方式をとっている。

世の中にこのほんわかしたイラストが溢れかえった理由は何なのだろう。

一つ目に考えられるのは、
ロイヤリティーフリーをうたう素材が極端に少ないことにあるのではと思う。
著作物に価値がある場合、
利用にあたって使用料を取りたいという気持ちは当然にしてあるだろう。
これは日本について特に顕著であると考える。
ロイヤリティーフリーのおじいちゃんの写真を探そうと思った時に、
外国のおじいちゃんはたくさん出て来るが、
日本人のフリーおじいちゃんが出て来ることはほとんどない。
ほとんどが使用料ビジネスの餌食になっていると考えて良い。
いらすとやの素材はほとんどが日本人(アジア系?)であり、
老若男女受け入れられすいテイストもあって、
利用しやすいものとなっているのではないか。

もう一つ考えられることは、
著作権有料の素材に勝るほどバラエティーに富んでいるということである。
最近では時事ネタに関するイラストも多く存在しており、
仕事が早いという評価もネット上でよく聞かれる。
資料を作成する際には、デザインの統一感が大事になって来る。
フォントを何十個も使用した資料はとても読みにくい。
その中でイラストは特に顕著であり、
テイストの違うイラストを並べた資料は目も当てられないほどダサい。
いらすとやで検索すれば、
相当ニッチなものでない限りイメージ通りのイラストが見つかるであろう。
しかもそのイラストは同じテイストで書かれたものであり、
資料自体にも一体感が増すのである。

ふみねたかし氏の仕事に対して、懐疑的な意見を述べる人々もいる。
その多くはクリエイティブ業界のイラストレーターなのだと思うが。
この品質・ラインナップを無料で提供されてしまったら商売上がったりだ!
ということなのであろう。
「いらすとやが日本のクリエイティブ業界を殺す」なんて記事も見受けられる。
同じ業界の人間として、その気持ちはとてもよくわかる。

イノベーションとまでは言わないが、似たようなことは他の業界でも起こる。
ユニクロが日本のファッション業界を殺す
あの品質の洋服をあの値段で提供されたら、商売上がったりだ!
いらすとやと全く同じことだ。

今までは圧倒的な差別化の源泉であった「品質」や「デザイン」の基本レベルが
どんどん上がってしまい、上の方でぬくぬくしていた人々が慌てているのである。

いらすとやの話に戻るが、
このイラストは日本の多くの人に認知されてきたと思う。
認知された後に気づくことは、デファクト感だ。
この前のイラストがココでもアソコでも使われている。
最初は可愛いよねなんて言っていた人々は、
だんだんこのテイストに飽きて来るはずだ。
接触率があまりにも多いとこのスピードはますます早くなる。

ユニクロ被りした経験はないだろうか?
同じことである。

いらすとや・ユニクロが取っている戦略は、
とにかく多くのバリエーションを増やすことだ。

デファクトになるということは、多くの人が認知しているということだ。
しかし人間は飽きやすい動物である。
デファクトであり続けながら、
人々を飽きさせないためにはどういう戦略が最適なのだろうか。

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