焼き鳥は口の中に飛び込んでこない
「そうは問屋が卸さない」と言う言葉を久々に聞いた。
そうやすやすと相手の望み通りには応じられないと言う意味だ。
かつて問屋の立場は非常に強かったのだろう。
問屋さん、100円でうまい棒1カートン卸してくださいよぉ。
てやんでい!オメーみたいなちっちぇー駄菓子屋に誰が卸すかよ!
そうは問屋が卸さねぇってもんだい!
おととい来やがれってんだ!
現代でこんな対応をしようもんなら、ミヤネ屋の格好のネタだ。
今や全国にあった問屋街はほとんどシャッターGuyとなっているらしい。
ITの発達により全国で一番安い販売店が容易にサーッチできるようになり、
りゅうっつうう網も整った現代、
問屋というビジネスは商流から外されてしまったのであろう。
令和の時代にはノスタルジーさえ感じる言葉である。
Roast geese don't come flying into the mouth.
これは英語の慣用句だ。
これはそうは問屋が卸さない的なニュアンスと同じ意味を持つ。
焼き鳥は口の中に飛び込んでこないという意味になる。
なんという普遍的な表現なのだろう。
将来どれだけ時代が進化したとしても、
焼き鳥が口の中に飛んでくることはおそらくないはずだ。
しかしどうだろうか。
「焼き鳥は口の中に飛び込んでこない」というまさにアメリカ的で合理的な慣用句からは、問屋的な趣を感じない気がするのだ。
焼き鳥が口の中に飛び込んできたとしたら、それは超現実の世界である。
問屋が卸さないは、情景が浮かんでくる言葉である。
そんなことを考えていたら焼き鳥が食べたくなってきたのである。
そしてあたかも焼き鳥が口の中に飛び込んだような騙し写真を撮り、
インスタグッラムにうぷするのだ。
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