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人間の限界まで丸裸にしてくれる42.195キロ

半月前に人生初のフルマラソンに挑戦した。
目標にしていた4時間には16分及ばず、己のツメの甘さに悔しい思いでいる。

タイトルにあるのは女優の安田美沙子さんがサブ4にチャレンジする中で残した一言で、数あるマラソンの名言の中で今の私に一番刺さっている言葉だ。

練習ではハーフマラソン以上の距離は走らなかったため、それより先は未知の世界だった。具体的に話せば30kmより先が本当のマラソンだったように感じる。
25km過ぎくらいから、路肩で立ち止まり足を伸ばしている人や、走るのをやめて歩いている人たちをよく見かけるようになった。
私はその人たちの仲間入りをしたのは33km。両足をつり、しばらく走行不能になった。
持論に近いものだが、25kmを超えると人間が蓄えられるだけのエネルギーが完全に枯渇するのだと思う。
体は固く硬直し、今まで暑いと思っていた体は消費するエネルギー源を失うため、急に寒気さえ感じてくる。

残りの距離をどう走るか、それはもう気持ちでしかない。
言うことを聞かない体に鞭を打ち、立ち止まってしまおうと言う甘えを振り切り、とにかく自分の体1つを前に進めるしかない。
そのために自分に残っている材料は、負けない気持ちでしかない。

気持ちを鼓舞する材料になったのは、他のランナーと応援してくれる沿道の方の存在だった。
当然知人ではない、このマラソンに出なかったら出会うことがない人々だ。
道端で体を伸ばしていると、大丈夫ですか?と声をかけてくれる人。
見るからにおじいさんくらいの年齢のランナーがものすごい辛そうな表情で、でも足を止めることなく走っている姿。
人を思いやったり、自分の限界に挑戦するような他人の姿を見て自分の心が鼓舞されたことを今でも鮮明に覚えている。

調べると、私が出場した大会では完走率が95%ほどになるらしい。
これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだと思うが、「やめます」と一言言えば、誰に迷惑をかけることもなく、簡単にリタイアできる世界で、ここまで「やめます」と言わない人が多いことに驚きを感じた。

人間の限界まで丸裸にしてくれることは正しいと思う。
自分自身と他のランナーを見て、その先に人間は本当に強い生き物だと感じた。

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