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付かず離れずの対応

グランデサイズのドリップコーヒー。
ドライブスルーでいつもの飲み物を頼む。

ミスターセンクスの朝はわりと忙しい。
火曜日と金曜日はランニングをする必要があり、
ランニング25分とワーシャーの時間を入れると、
スターバックスで20秒タイムロスすれば、
スターファックスになってしまうほどである。

なのでランニングの日は店内で昇天している暇はなく、
ドライブスルーすることにしている。
サルバードール・ヱビのように
ドライブスルーをスルーするような奇行は私はしない。
どちらかといえば我がアバ郎の音がうるさいのでエンジンを切る派だ。

顔見知りでありお尻のお姉さんは声を聞いただけでわかる。
見えないながらも今日も安定の声にほっとする一面もあったりする。

そういえば、先日ドライブスルーにカメラが付いていることがわかった。
はぁなるほど、こっちからは見えない、そっちからは見える。
目隠しプレイみたいなやつね。
朝から過激なプレイを強要してくるバックスである。

いつものお姉さんが
「追加でおすすめのスコーンどうっすかぁ?」とオヌヌメしてきた。
ミスターセンクスはフードを頼むことがほどんどないカス客である。
カス客にマニュアル通りのクロスセルを提案するなんて、
なかなかやるじゃないかと思い前に進む。

「センクスさん、カメラから見えてませんよ」
お姉さんのその言葉にセンクスは背筋が凍ったと同時にもっこりした。
私は透明になってしまったのか。
透明ということはこの世のものではないということなのか。
でも透明だったら美女のお風呂も覗き放題か。
凍と勃が同時に体を伝ったのは人生初である。

左ハンドルだったのである。
右ハンドルの人の顔が映るように設計されたそのカメラは、
左ハンドルの人が映るようにできていない。
ちょっと間違えば無人の車が滑り込んできたみたいな風景である。
それはそれは、お姉さんの背筋をなぞるじゃなくて凍らせるところだった。
いともうしわけなし。むなし。

初回訪問で失礼な接客をされれば不快な思いをするわけだが、
毎日行っているのにオペレーション通りのスコーンをされるの寂しい。
つまり「おねえさん、わかってるねー」的な接客は、
ある意味オペレーションを逸脱しているわけなのである。

おもてなしという言葉は、お客様の欲求を先読みして動くことなのだそうだ。
つまりオペレーションを無視し、
お客様のニーズベースで臨機応変に対応を変えることが、
接客の付加価値の源泉であると言える。

例えゴーストカーであったとしても、
毎日来るフードを頼まない客単カスおじさんには、
スコーンなどオヌヌメせず、だまってコーヒーを差し出す。
それはオペレーション的にはNGだが、
センクス的にはベストである。

でもたまに甘いものを食べたい時もある。
でもたまに1秒でも多くお姉さんと話していたいこともある。
そういったセンクスの不合理さは忘れないで欲しい。

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