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企画力を高めるために必要なのは「視点を変えること」という話

これもプランニング系の仕事をしている人にとっては、当たり前のことばかりかと思いますが。

私がやっているキャリア教育コーディネーターの仕事のほとんどは、「企画する」という仕事になります。授業づくり、教材づくり、時には教員向けの研修の場をつくることもある。そもそもどうやってプロジェクトを進めたらいいのか、そのプロジェクトによってどんな未来を描くのか、どんなスケジュールで動いたらいいのか・・・これらは、すべて「企画する」という仕事です。

フリーランスなので、こうした仕事を、プロジェクトごとにいろいろな人と一緒に活動するのですが、「企画」が得意な人とそうじゃない人がいます。これって、どこが違うんだろう・・・?ということで、自分がふだんやっていることも含めて、棚卸ししてみました。


●アイデアの「発散」と「収束」の時間をわける。

ご本人がどう自覚しているかはともかく、企画が苦手なのかなという方、もしくは、つまらないと思っている(「処理する・さばく」感覚でいる)方は、アイデアの「発散」と「収束」を同時にやっている傾向があります。アイデアを広げることと同時に、制約条件を考えてしまう。いいアイデアが出てきたなーと思っても、「それは〇〇だから無理」と、却下してしまう方です。正直、このタイプの方と一緒にお仕事をするのは、つまらないです。何を話しても「それは無理」しか出てこないので・・・その場がどんどん暗くなるという悪循環も起きます。

もちろん、実行するにあたっては、制約条件にあわせていくことも必要になります。ですが、いいものにしようと思うのであれば、まずは制約条件なしでアイデアを広げる「発散」の時間をとり、次に制約条件にあわせたり質を高めたりという「収束」の時間へと、フェイズをわけた方がいいです。(これは、中高生向けの企画の授業の中でもよくお伝えしています。) 

一緒に取り組むメンバーがいるのであれば、意識的に時間をわけること。また、仮に考えるのがひとりであっても、「ひとり脳内ブレスト」はわけておく方がいいです。この感覚が共有できているメンバーとの議論は、ひとりでは考えつかないようなおもしろいアイデアがたくさん出てきます。かなりワクワクするものになりますし、プロジェクトもそのものもおもしろいものになっていきます。

ちなみに、「発散の時間」は、トイレの中だったりお風呂の中だったり、リラックスしている状態の方がいいアイデアが浮かんでくる、というのは私だけじゃないはずですよね?


●エンドユーザーの姿を思い浮かべる。

たいがいの企画は、相手がいるものになるはずです。誰が、どんな状態になったらいいのか、企画の「目的」「めざす状態」を具体的に思い浮かべる必要があります。これができるかどうかも、どうやら得意・不得意があるようです。そもそも「処理する・さばく」発想の方は、このプロセスをやらないことによって見当違いな企画書を書いていることがあります。また、「相手のことをよく知らないから」という理由で想像することをやめてしまう方もいるのではないでしょうか。

とにかく具体的に、思い浮かべたいのは、以下のようなことです。

どんな感想が出てきたらいいのか
どんな動きをするんだろう
どんな表情になるんだろう

もしも相手のことを知らないと思うのであれば、「もしも自分だったらどうだろうか?」と考えてみるといいと思います。子どもたちにも「相手の気持ちになって考えよう」ということがよくあると思いますが、大人にとってもこれは全く同じことなんだと思います。どれだけ自分以外のいろいろな立場の人の視点に切り替えることができるか、これも「視点を変える」になります。


●思考は手書き、パソコンは作業用ツール。

企画を考える=企画書を「書く」になっている方も、要注意かもしれません。企画書を「書く」のは、考えた企画を誰かに伝えるための方法なので、企画を考えること(思考)とはわけて考える方がいいです。

私は手書きが好きだというのもありますが、いきなりパソコンを開くのではなく、まずは頭の中にあることを、手書きでとにかく書き出してみるところから始めています。「ひとり脳内ブレスト」がここに該当します。とにかくアイデアを広げる「発散」のフェイズと、それらをまとめてブラッシュアップしていく「収束」させ、コンセプトを定めていくところまでは、手書きで行っています。(※いまは適切なデジタルツールもいろいろあると思いますが。)

そこから先、「企画書」をまとめていく(アウトプットする)ところは、以前、こちらをfacebookで紹介したことがあったのですが・・・

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①で企画書の大まかな構成(ページネーション)を手書きでつくる。②は①に沿ってパワポでタイトルだけつくってプリントアウトし、どんな内容を書いたらいいのかを手書きで書きながらストーリーを練っていく。最後に③で企画書に書き込んで体裁を整えていきます。パソコンを使うのは、「企画書」という伝えるツールを作る作業のためです。ここまできたら、考えるというよりは、完全に作業になることもあります。


●ラフレイアウトはデザインのためだけじゃない。

企画書をつくるときに「いきなりパソコンを開かない」というのは、もうひとつ意味があります。手書きでラフレイアウトをつくっているのですが、これはデザインを考えるためだけのものじゃないと思っています。ラフレイアウトからは最終的な姿や全体像が見えてくるので、これが伝える相手にどう見えるのかを想像できるということにもなります。ここでも、視点を変えて考えるという行動をすることになります。


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こうしてみると、発散と収束、エンドユーザーの立場、思考とアウトプット、伝える相手の立場・・・と、フェイズに応じてさまざまな視点を切り替えながら仕事をしているんだなと思いました。課題は、それらの精度がどうなのか・・・っていうところなのかもしれませんが・・・(汗)


*追記*
そういえば、もうひとつあったことを思い出しました。

●文字にして自分の無意識を客観的に把握する。

企画書を「書く」プロセスは、客観的にみるためにもとても重要なプロセスだな〜と思っています。素直に書き出してみたら、「目的」を書くべきところなのに、「〇〇をする」なんていう手段とか方法とかを書いていた、とか。授業づくりのときによくあるんですが、「〇〇について主体的に考えさせる」なんていう目的を書いてしまったり。「考え”させる”」って、すでに主体的じゃないですよね。「させる」っていう使役の言葉を使っているところに、「相手をコントロールしたい」という無意識が現れてしまっていたりします。言葉って、自分の本心が本当にダイレクトに現れます。なので、文字として書いてみて、自分を客観的にみてみる視点もとっても大事ですね。


松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」「クリエイター」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。2020年京都造形芸術大学通信教育部(グラフィックデザイン)を卒業。デザインで学びをおもしろくします。
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