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【社会人のための“教育ってそうなってるのか!”講座】やっちまった!PBLの「失敗」、公開します。

今回は「授業設計を失敗しました」という話(実話)です。

授業設計の失敗=犠牲になるのは子どもたち、なので、
本当に本当に、申し訳ない話なのですが、
大人目線で授業を作るとこうなりますよ、ということで、
あえて、公開してみようと思います。

【与件】
・対象は高校2年生24人(成績のいい学校ではありません)
・生徒は複数あるコースから選択して参加
・「外国人観光客向けの商品・サービスの企画」がテーマのPBL。
 (東京オリパラを見据えて設定)
・プログラムは2コマ×全5回
  第1回:外国人観光客が日本で困ることを探す(課題発見)
  第2回:観光産業の現状と課題を業界の方から聞く(情報収集)
  第3回:企画立案のフレームワークと実践
      +宿題:企画内容についてのインタビュー調査
  第4回:企画の修正・プレゼンテーション準備
  第5回:最終プレゼンテーション・相互評価
      (社会人からの評価も入る)
・5グループにわかれ、グループ活動を前提とする。
・プレゼンテーションは模造紙や画用紙など紙媒体。


【起きた現象・問題】
全5回の流れだけ見ると、さほど大きな違和感はないと思います。
が、実態は問題だらけでした。

・とりあえず話は聞いてない(ように見える)。
・5回シリーズの授業だけど、前回のことは覚えていない。
 毎回リセット。
 想定の範囲内だったけど、もちろん宿題はやってこない。
・全体的な教室の雰囲気が超つまらなそう。
 「これって将来役に立つの?」とぼやく女子も。
・逆に脱線しまくり男子の集団も・・・

ここまで読んだ段階で、
もうちょっと〇〇すればよかったのに、
と思った方がいらっしゃったとしたら、
たぶんそれ、正解!です。
ちなみに、最終プレゼンに向けての追いあげは
本当にすごいものがあって、
プレゼンは悪くなかったんです。
  (評価者として協力してくれた2人の社会人にも感謝です!)

他にも細かいことはいろいろ起きてましたが、
これ、学校や生徒が悪いわけじゃないんです。
5回だけでは無理、なんてこともナイです。
なので、改善ポイントはどこにあったのか、
あらためて整理してみたいと思います。


【改善すべき点】
カリキュラム設計って、ともすると、
大人の都合で並べただけにしかならなくて、
生徒の目線から何が見えるのかを検証していたのか、
欠けていたのはその点に尽きるのだと思います
見直すべき主なポイントは以下の3点。


●ゴールイメージを共有できていたか?●
 問題だらけの中にも、実はターニングポイントがありました。
 途中段階で、他校の高校生のプレゼン動画を見せたところ、
 教室の雰囲気が一変したのです。
 そう、これを最初にすべきだったのです。
 最後にめざすべきアウトプットとは、
 このカリキュラムのゴールはどこなのか、
 何ができるようになることを目指すのか、
 生徒と共有できていなかったところが最初の敗因だったのです。


●ゴールまでのステップが生徒に見えていたか?●
 ゴールイメージが共有できていないから、
 ゴールまでのステップ(道のり)も見えないまま。
 だから、各回の「意味」が全くわからないままになる。
 前回のことを忘れてリセットされてしまった原因は
 ここにあったのだと思います。
 3回めくらいになって、とある男子が
 「あ!これってマーケティングの講座か!」と
 つぶやいたのですが、
 要するに、そこが伝わってなかった、ということで。


●生徒にとっての「取り組む必然性」はあったか?●
 オリパラを控えた時期に親和性のある、
 社会的ニーズはあるテーマ設定ではありました。
 ですが、それは生徒にとって、
 本当に「やるべきことだ」と思えるものだったのか?
 オリンピックが必ずしも生徒にとって身近かとは限りませんし。
 第2回の業界の方からのヒアリングのタイミングと、
 扱うべきデータの選定も適切でなかったかもしれません。


テーマだけ設定して活動をならべて、
PBLにできた気になってちゃ、ダメなんですー。


*****

今回の24人のひとりひとり、
その場へのコミット度合いはそれぞれだけど、
「キミのココ、すごいよ!」
と言いたいところばっかりだったんです。


 プレゼンのトーク力が突出してすごかった男子。
 素朴だけどいい着眼点を持っていた女子。
 誰もやってこなかった宿題を丁寧にやってきた女子。
 裏付けを取ろうと統計データを検索していた女子。
 つまらなそうだけど誰よりもメモを取っていた女子。
 模造紙づくりの役割分担でリーダーシップを発揮した男子。
 イラストでプレゼンの工夫をがんばった女子。


でもそれはどこかで埋もれて流れていってしまって・・・

そういうのをもっともっと伝えられる、
活かせる活動にできたらよかったのに・・・!
そんな彼らの可能性を、私は本当に信じてただろうか?
大人側も、そんな覚悟を突きつけられるのだなー・・・


というわけで、
今回の話は「授業設計を失敗しました」という大反省でした。
まだまだです、ほんと。

松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部社会学科卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。
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