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AxelGlobe事業の今後の展開

こんにちは!アクセルスペース取締役CPOの中西です。

私は株式会社アクセルスペースでAxelGlobe事業を担当しております。AxelGlobe事業は自社で運用するGRUSという人工衛星で取得する衛星データ、またこのデータを解析したソリューションを販売する事業です。これまでいくつかの記事でどのように営業を進めているかを説明させて頂きましたが、今回はAxelGlobe事業の今後の展望について少しお話ししたいと思います。

AxelGlobeを構成する超小型衛星GRUS


現在のAxelGlobe事業では5機の人工衛星で構成された衛星コンステレーションにより、同一地点を2日に1回以上の撮影頻度分解能2.5m~の光学衛星画像を提供しています。このサービスをどのように発展させていくのか、これにはいくつかの方向性があると考えています。ここでは大きく3つの方向性について考えてみたいと思います。

AxelGlobeを構成する衛星コンステレーションの今後の予定

① まずは、同型衛星機の拡充、つまり撮影キャパシティの拡大があります。上記で記載した通り、現状我々は同一地点を2日に1回以上の撮影頻度で撮影が可能ですが、衛星機を増やしていくことで撮影頻度を増やすことが可能です。直近では現行5機に追加4-5機を打上げ、世界中どこでも1日に1回以上撮影可能となる撮影体制を構築します。これを10機、50機、100機と拡充していくことで1時間に1回、数分に1回の撮影頻度が可能となります。これによりより細かい時間軸での解析、モニタリングが可能となります。また撮影キャパシティの拡大は撮影頻度だけではなく、一定期間に撮影可能な面積の拡大撮影タイミングのカスタマイズ性を向上させます。前者は、例えば日本全土を撮影して更新していく案件に対し、その更新に必要な時間を3か月→1か月→1週間…と短縮していくことが可能となります。地図作成用途や行政利用用途でデータを整備していくような案件において、最新のデータを整備できることは様々な点において利点があり、また競合に対して差別化ポイントとなります。更新頻度が上がれば、その分課金できる頻度も上がりますのでトータルでの売上増も狙うことが可能となります。後者は、特定の日時、〇月✖日△△時に撮影するというピンポイントの撮影案件に対応することが可能となります。例えば安全保障関連や報道関係ではピンポイントでの撮影が必要なケースが多く、また防災関係では災害発生後速やかに緊急撮影を行う必要がありますが、撮影キャパシティの拡大は撮影可能なタイミングの増加を意味し、緊急撮影を含めたピンポイントの撮影リクエストに対して対応することを可能にします。

この方向性はスタンダードともいえる戦略であり、皆さんにも理解しやすいかと思います。一方、単純に「同一衛星機が増加」=「同一衛星データの提供量増」となりますので、その中で増加する衛星機分のコストを賄える売上/利益を獲得していく必要があります。同一画像の提供量が増えた時に獲得できる市場はどこか、またそれはどの程度の売上が獲得できるのか、市場成長のスピードとマッチしているか、競合に対して先行して撮影キャパシティを拡充していくことの是非etc、この戦略をとる上ではいくつかの議論ポイントを精査する必要があります。

② 衛星画像の分解能の幅を拡充する、という方向性もあります。現在我々が提供するのは分解能2.5m~の中分解能の衛星画像ですが、例えば高分解能画像を取得可能な衛星を打ち上げ、中分解能と高分解能の画像の両方を提供可能な体制を構築することも考えられます。通常中分解能と高分解能では使用される用途が異なっています。例えば中分解能は農業や森林管理、インフラモニタリングや防災等で使用され、高分解能は安全保障や地図作成などで多く使われています。これは分解能の高低により、撮影範囲や価格が変わることに起因しています。通常分解能の高低と撮影範囲の大小は反比例し、高分解能では一度に狭い範囲の撮影しかできません。中分解能である我々の撮影幅(東西方向の撮影範囲)57㎞であるのに対し、一般的な高分解能衛星では数㎞しか撮影できません。また高分解能衛星は一般的に特別な撮影機構が必要であり、センサーなどが特注であることが多いため製造コストが高くなる傾向があります。また衛星機自体が大型になることが多いため、必然的に打上げコストも高くなり、トータルの開発/製造/打上げコストが中分解能と比較して段違いに高くなります。前述した通り撮影可能面積は狭くなりますので、㎞2あたりの撮影コストは中分解能画像と比較して数十~数百倍の価格となります。以上より高分解能で日本全土等の広域を定常的にモニタリングしていくことは、効率の面でもコストの面でも現実的ではなく、通常高分解能画像はピンポイントな特定地点やタイミングで撮影することを前提に使用されています。一方中分解能は撮影可能面積やコストの観点から、広域を定常的にモニタリングしていくような用途に適しているので、この中分解能と高分解能を組み合わせ、中分解能で広域の定常的モニタリングを行い、その中でより注目すべきポイントを高分解能画像で解析するという複合的ソリューションの提供するということがサービスの深化という面で考えられます。また高分解能画像は、その分解能において航空写真やドローン画像と用途が重なっていることが多く、高分解能画像を持つことでこれらの市場に参入することも可能となります。つまり中分解能に加えて高分解能画像を保有することで、高分解能市場に参入することはもちろん、中分解能と高分解能を組み合わせたソリューションの開発や航空写真やドローン等の異なる市場への進出の可能となるのです。

この方向性についても、高コストになりがちな高分解能衛星のコストを賄える新たな売上/利益が獲得できるのか、高分解能/航空写真/ドローン画像市場の研究、高分解能画像運用のノウハウ蓄積etcいくつかの論点をクリアする必要があります。

③ 3点目はセンサーのバリエーション、つまり取得可能なデータのバリエーションを増やす方向性があります。我々は現在光学衛星画像を提供しており、これは皆さんがイメージされるような写真画像に近いものですが、衛星にRed Edge/Near Infraredなどのセンサーも積んでおり、一般的な写真とは異なる特殊な解析を行うことも可能となっています。例えばNDVIという解析手法では、植物の各波長ごとの吸収/反射率を利用して、植物の育成状況(光合成活動が活性度合い)を解析し可視化することが可能となります。

光学衛星画像
NDVI解析

この方向性では、これ以外にも様々なセンサーを搭載し取得可能なデータを増やしていくことを目指します。例えば、メタンなどガスの分布量を解析することが可能なセンサーもあります。これにより広域に渡る輸送パイプラインでのメタンガスの漏洩等を衛星画像により検出することが可能となりますが、温室効果ガスの解析という面でも活用が期待されます。衛星画像の解析により地域や特定工場単位で温室効果ガスの排出量の計測が可能となれば、現状の温室効果ガス削減の世界的な取り組みに対して非常に大きなソリューションを提供できる可能性があります。また前述したように我々の衛星画像では植物の活性度合いが解析できますので、CO2吸収量の計算では単純に「森林面積×係数」で計算するのではなく、その対象森林の活性度合いや面積推移もタイムリーに反映して精緻な数値を算出することも可能です。

その他にも、海や湖の解析適したセンサーや気温を解析可能なセンサーなど様々なデータを取得することが可能です。新たなデータによる利用用途の拡大、既存データとの組み合わせによる新たなソリューションの開発など衛星画像活用の大きな可能性が秘められています

この方向性においても、新たに取得するデータのマーケットや顧客は誰なのか、その市場規模はどれくらいか/成長が見込めるか、既存の衛星以外のセンシングサービスとのコンフリクトはないか、などいくつかのポイントを抑える必要があります。

いかがでしょうか?AxelGlobe 事業の発展の方向性はその他にも細かい議論がもちろんあるのですが、大まかに言えば上記のような方向性だと考えています。時間や資金の制限がありますので当然全てを同時に進められない中で何から着手するか、どのマーケットにフォーカスするか、パートナー戦略はどうするか、日々様々なことを考えています。

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