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短編小説:人魚に恋い恋う

 触れたら、この体温が毒となり、その肌をじりじりと焼き、赤く爛れさせ、醜い傷を残すのだという。癒せぬ傷を、刻むのだという。
 それでも触れたいとおもうのは残酷、だとして、せめてこの手を痺れるほど冷やしてからとおもうのは愛、だと云ってもいいだろうか。傲慢、だと切り捨てられてしまうだろうか。
 触れたいと願うことさえ罪、だろうか。こんなにも美しいものに焦がれないことを差し置いて罪、だろうか。
 挙げ句の果てに、心底の願いとして、痛みと引き換えに触れてくれと乞われることを求めるのは悪、だろうか。

 知るものか。知ったことか。残酷も愛も傲慢も罪も悪も、この恋の名として戴こう。
 どうせ抗えぬのだから、終にこの身さえ灼き尽くす恋の跡形。

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