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上京する夜行バスの中で聴く曲むずすぎ問題

上京するバスの中で、とめどなく涙が溢れた。


自分で選んだ道なのに。あんなに閉鎖的な田舎が嫌で、一刻も早く離れたいと思ってたのに。


小中高と割と真面目に優等生コースを歩んできた。そして、地元の国立大学に入学した。


ずっと自分の居場所は、居るべき場所は、ここじゃない!と、根拠のない自信を持っていた。

わたしはもっと大きく羽ばたくべき人間なんだ!と恥ずかしながら、若い感情が渦巻いていた。



しかし、両親は真っ当に生きてきた人間で、理解されなかった。わたしを愛してくれてる故の発言であることは理解していた。


理解していても、なんでわかってくれないんだ、わたしの人生はわたしで決めたい、と不満を漏らしていた。



東京に出たかった。どうしても出たかった。何がしたかったかと今言われると、何だったのだろうと思う。自分の退屈な人生を田舎のせいにしたかったのかもしれない。


両親を説得する為に、適当な嘘をついた。箱入り娘で従順なわたしが初めて両親に反抗した。最初で最後の反抗。


何度も泣きながら、話し合いを重ねた。それでもなかなか説得できず、恥ずかしながら22歳にして家出を試みたりもした。


最終的は両親が根負けし、許しを得た。夜行バスの乗り口までわがまま娘を送ってくれて、バスが見えなくなるまで手を振ってお見送りしてくれた。


バスが出発し、もう家族とはなかなか会えないんだとか、わがままを結局受け入れてくれたこととかを考えると窓の外の夜景が滲んだ。


なにか曲を聞こうと思った。この経験は一生わたしの脳に刻まれる経験だろうと思ったからだ。

この上京の決意を、今後揺るぐことがないよう、なにかと結びつけて記憶に強く残したかった。



上京するバスの中で聴くと良い曲......。

噂に聞いていたくるりの『東京』を聞いた。

東京の街に出て来ました

あい変わらずわけの解らない事言ってます

恥ずかしい事ないように見えますか

駅でたまに昔の君が懐かしくなります




..........???????


あれ?これ、上京後ちょっと経ってからの曲じゃね?!?!


え、なんか違う違う違う!!!

わたしは上京のエモエモに浸りたいのに
なにこのちょっと違う感!!!!


今ちょっと違うな.......とか思うのは全然違うけど?!??!


焦った。


非常に焦った。



早くこの上京に合った曲を見つけないと!!!!エモが消えてしまう!!!!冷める!!!!!



iPod内を駆け回った。少し歌詞を聞いて、感情を重ねようと涙腺を(わざと)緩めては「いや、違う違うwwww」と次の曲を探す。



いや!なにこれ!思ってたエモエモ上京夜行バスと全然違うんですけどー!!!!!!!!!!



わかったぞ!!一般的なエモに浸ろうとしてるからなんか違うんや!!!わたしなりのエモに浸ろう!!!




選んだ曲は神聖かまってちゃんの『2年』


2年後に2年前の今の僕らを
笑い飛ばせるように

時折僕ら真ん中道歩けますように

赤い空夕暮れの屋根の下
笑い飛ばせるように

酒でも飲めばそんな事は
どーでもいいのさ
負け組


これこれこれこれ!!!!!!!

これだよこれ!!!!!!

2年後に今の僕らを笑い飛ばせるように!!!!ぴったり!!!!!


あの時は若かったな、フッ今はこんなにビッグになっちまって......って笑い飛ばしてるはず!!!!!



安心してエモに浸って泣いた。


一度引いた涙が少し控えめに無理矢理流れてきた。(流した)


今でも(計画通り)この曲を聴くと、あの時の気持ちが蘇る。


結局東京には5年いた。

2年後のわたしは何者にもなってなかったし、5年後の今のわたしも特に何者にもなっていない。


でも、今はそれが悪いことだとは思っていない。5年で人は変わるし、あまり変わらない。


今のわたしは、
5年前のわたしを笑い飛ばせるようにはなった。


5年前のわたしがその時のわたしを笑い飛ばして欲しかったようなビッグになったわたしではないけれど、ダメなことではないんだよ。伝えるのは難しいけれど。うまく言えないけれど。


少し寂しい気もするが、決してつまらない大人になったとかそういうわけではない。


若い時は僕は、
若い時は僕は
もっとやってやれるような気がしてたんだ
『2年』/ 神聖かまってちゃん
夕暮れで光る街角さよならと僕に言う
こんにゃくみたいな奴だなんて思ったんだろうね

だけど僕 僕は行くのさ さよならと言わないで
そんな手には乗らないんだぜ
そんなバカじゃないぜ
『2年』/ 神聖かまってちゃん


5年前のわたしにはつまらない大人になってしまってと笑われるかもしれない。


でも、わかるよ、5年経てば。

わたしに確実に必要だった東京での5年でした。



東京を離れることが決まった。


少しずつ振り返りながら書き溜めていこうと思います。


若すぎて恥ずかしく思うことも多々ありますが、これも今しか書けないことだと思います。



5年後のわたしが笑い飛ばしてくれれば本望です。


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