マガジンのカバー画像

月下シリーズ

9
⚠創作神様が出てきます。 月の神や使いの恋愛物語。 「月下で恋を歌う」「月下で恋を奏でる」の順に読んでいただけると嬉しいです。
運営しているクリエイター

#note初心者

月下で恋を奏でる 【其ノ肆(終)】

月下で恋を奏でる 【其ノ肆(終)】

前回

手が悴む。指先が氷に触れた時のように冷たい。

季節はあっという間に移り変わっていくなと、しみじみ感じる。今日は随分冷え込んだ。夜には雪がチラつくとか。

冷えきった手に白い息を吹きかけながら、いつものように神社へと向かう。鳥居をくぐると、いつものように彼女がいた。

「こんなに寒いのに、来てくれてありがとう」

紅は、そう言ってふわっと笑う。とくん、と胸の奥が鳴るのを感じた。

もっとみる
月下で恋を奏でる 【其ノ参】

月下で恋を奏でる 【其ノ参】

前回

今朝もクラスが騒がしい。特に女子が。ハテナマークを浮かべる俺に、クラスメイトが言った。

「なんか、隣のクラスに転校生が来たらしいぜ。それも男の」

それで、女子が騒いでるのか。まぁ、珍しくもないか。見に行ってみるか? とクラスメイト達につられ、野次馬心で行った。

ドアから顔を出し、見渡すと明らかに女子が集まっている机を見つけた。机の主は、鬱陶しそうに教室から出ていく。

次の瞬間だ

もっとみる
月下で恋を奏でる 【其ノ弐】

月下で恋を奏でる 【其ノ弐】

前回

紅と出会ってから、俺は毎日のように神社を通った。彼女と話したり、最近は神社の掃除をしている。気がつくと季節は梅雨に移っていた。

「うえぇ…また雨か…」

木を傘代わりにしつつ、呟く。唸る俺を見て彼女は言った。

『雨、嫌いなの?』

雨…嫌いじゃないけど、好きとも言えないな。蒸し暑いし、濡れるし。今も靴下が雨を吸っていて、気持ちがいいものじゃない。

『私は好きだけどな、雨。雨音とか心地

もっとみる
月下で恋を奏でる 【其ノ壱】

月下で恋を奏でる 【其ノ壱】

桜が舞う季節。

やわらかい風が時折吹いては、春の訪れを伝える。冬の凍える寒さはどこへ行ったのやら。
先週から新学期が始まった。
四月は出会いの季節って言う通り、新しい友人にも恵まれた。俺…如月光希にとって人と関わるのは最も重要なことだからな。

元々俺は月に住んでいた。月の神、月夜様の使いとして。"使い"なんて言ってるが、まぁ部下みたいなものだ。昔から人は、月に神が宿っていると伝えてきた。

もっとみる