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なぎさボーイについて考える。その3

1 まずはお茶菓子でも

けっこうシリアスなドラマが続くので、お茶菓子としてどらやきを用意しました。ちょっと一息いれてください。
もともとはマケインの文芸部の左右ゲーム用(分かる人には分かる)に買ったのですが、どら代ちゃんは女の子なのでエントリーできません。そのため、桃(太郎?)と一緒にリタイアとなりました。
それでは、なぎさと槇修子の過去回想再び参ります。

2 二人の過去(セカンドインパクト)

中学2年の競技会。槇は800メートルの選手として出場。
開会式ではなぎさにVサインをしてみせる。
競技開始、コーナーをトップでまわる槇。しかし次の瞬間槇は崩れ落ちる。

委員たちが救け起こそうとするのを失格になると拒否する槇。すでに他の選手がゴールしているにもかかわらず。なぎさがかけつけ、手を差し伸べると、槇はその手にしがみついて嗚咽する。
なぎさはそのとき、槇のくやしさはいつも自分の感じるもの(背が低いためにどれほど努力してもバーを越えることができない、努力がむくわれない等)と同じ、槇とは何もいわなくても分かり合える特別な存在だと悟る。

医務室でふたりきりになった2人。なぎさのためにがんばりたかったという槇。「また来年がある」と慰めるなぎさに、「そうね、来年がある」と弱々しく笑った槇が「キスしてくれる?」という。 

二人は初々しくキスをして、槇が「好きよ」といったとき、なぎさは「俺も嫌いじゃないよ、けど」と口ごもる。それだけで槇は「好きな人いるのね」と察し、車に乗り込む直前に「今度あったら無視してね」と言った・・・。

3 ふたりきりの部室での約束と発覚

なぎさが回想からもどったあと、槇となぎさの会話が続く。

「多恵子さん医務室でのできごとを知っているのかしら、驚くだろうな」

「そんないいかた似合わないよ、おまえ意地悪じゃないだろ」

「馬鹿ね、そういうこというから、あたしみたいなのにつきまとわれるのよ。あたしを嬉しがらせるようなことばかりいうんだもの。誰よりも私のことわかってくれると思い込ませるのよ」

槇は自分が性格が悪くチームワークが苦手で部で孤立していたこと、1年のときも2年の怪我のときも優しくしてくれたのはなぎさだけであったと話す。

なぎさは「自分は優しくない」というが、槇は「嘘、優しいわよ」といって、思い詰めたように目を凝らす。

「雨城くん、目をつむって」

槇はもう邪魔はしない。マネージャーもやめる。なにかしら理由をつけて席替えをしてもらう。だから目をつむってほしいと願う。

その槇をとても美しいと思ったなぎさは、何がおきるか全部わかった上で目をつむった。槇の気配を感じ、熱を感じ、そして唇に槇を感じた。槇への気持ちは多恵子への気持ちと同じなのか違うのか、わからないまま。

 そして、そこに差し入れをもってきた北里と多恵子がきて、全てをみた。なぎさと槇の口づけを。なぎさが槇の腰に手を回していることを。

4 槇の気持ち

この後の修羅場はまたみていくとして、この部室での槇のキスの懇願は何を意味するのだろう?寝取りだろうか?

正式ではないにせよ、両思いのカップルの男性に好きと改めて告白してキスをする(注意してほしいのはキスをねだっているのではない、槇がキスをするのだ。したがって性別を別にすればここでは槇が王子様でなぎさは王女様になっている)のだから、寝取りじゃないかと言われてもしかたがない。

しかし、僕はそうは思わない。
なぜなら、彼女はここで、すでになぎさのことをあきらめるつもりでいるからだ。いや、正確にいおう、最初からあきらめているのだ。

彼女は自分のことをよくわかっている。そしてなぎさのことも(高校入学前にたった2回しか会っていないにもかかわらず)その本質をよく把握している。なぜ自分たちが惹かれ合うのか、それは互いに似すぎているから、孤独ゆえの理解者を求めていることもよく承知している。

しかし、同時に彼女は女性である。男女の交際、あるいは男性が女性に求めるものがどういうものであるのか、彼女が知らないわけはない。後にでてくるが中学のときの男子部キャプテンのように、彼女のことをきにかけ、好意をもった男性も大勢いたはずなのだ。なぜって彼女は美人だから。そして、彼女はそれが許せない。

槇修子は1ヶ月間、なぎさを観察したのではない。多恵子をじっと観察してきた。そして、これは「多恵子ガール」で詳しくはふれることになるが、なぎさが求める恋人像とは「癒やしの母」でもあることを理解したのだろう。なぎさは精神的にまだ子どもだ。理想の母、甘えさせてくれる存在を恋人に求める。そして、槇修子という女はその対極にある。

前回、僕は槇修子について「本人がいうような悪い子ではない。協調性はないし友達もいないが、むしろ優しく独自の倫理観で自分の行動を律することができる子だ」と書いた。

槇はなによりもなぎさが大事だ。決して自分優先のエゴイストではない。そして自分ではなぎさを幸せにできないことを、残念ながらこの時点で理解してしまっていた。
彼女にとって、生涯たった一人になるであろう理解者と。運命の人と。あとに出てくるがそれこそ身体を犠牲にしても会おうとした人をあきらめる。

そのために、年頃の少女らしい思い出が、そしてその人も自分のことを決して嫌いではなかった、好いてくれていたという生涯の確証、それを求めたことを誰が責めることができるだろうか。

槇修子は、巷間いわれているよりずっとロマンチストで、けなげで、がんばりやだ。そしてたぶん泣き虫なのだろう。

5 北里と多恵子

なぎさは走っていった多恵子を追いかけようとしますが北里に連行されます。
北里からは槇と別れろ、それまで国交断絶と言われました。

その後多恵子の家にいったら外で話そうといわれて、
「槇さん好き?」
「多恵子が好きだ」
「ありがとう、でも槇さんも好きね?」
「・・・」
「ちゃんと返事できるようになるまで私も国交断絶」

それで周囲が色々どうしたのかとさぐりをいれてきたり、槇が約束守ってマネージャーこなくなったことで陸上部のキャプテンが「俺は槇と同じ中学の男子陸上部キャプテンだったが、槇はお前に会いたいからという理由で先輩一人一人に頭を下げて陸上部に残ってがんばっていたんだ、そんながんばっていた槇が俺は好きだったんだ、槇が復帰するよう責任とれ」といわれて、なぎさはブルーになったり(ついでにいつも陸上部の練習を多恵子がこっそり窓からみていたこともキャプテンに指摘されたり)と幕間劇があって、驚愕のクライマックスへ。

さすがに次回でおわります。でも「多恵子ガール」と「北里マドンナ」があるからな。





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