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なぎさボーイについて考える。その2


1 膠着の打開、あるいは松宮のおせっかい

先に謝ります。今回も長いです。あとほとんどあらすじです。なぎさボーイ既読の方はごめんなさい。一応合間合間に少しだけ考察入れてまだまだ続きます。

槇修子との膠着状態(隣の席にもかかわらず、槇が昔の約束?を守ってなぎさを無視するのでなぎさも槇を無視さぜるをえず精神的につらい)という膠着状態を打開したのは、意外にもおじゃま虫の自称友人松宮だった。
高校に入学してから、いつしか別のクラスの北里がお弁当をもってなぎさのところにきて一緒にお昼を食べるのが慣例となっていた。
入学して1ヶ月くらいたったある日、なぜか松宮の招待とやらで多恵子と野枝もやってくる。よりによって槇の机も借りて5人で島を作ったところで槇が帰ってくる。多恵子が断りをいれると、槇は黙ってなぎさの後ろの席に座った(こ、こわい)。

その後の会話の流れで、なぎさの様子が最近おかしいと言い出す多恵子。そして、松宮が取り出したのはなぎさ宛のラブレター。
なぎさはあっさり「いや断る」。
多恵子は松宮に対し「こんなに大勢の前で渡すのはデリカシーにかける」と怒る。
なぎさに対しても「あっさり断るといったの伝え聞きいたら向こうがショックでしょ」と怒る。

そうこうしていると、面会人がきていると廊下に呼び出され、なぎさが廊下にいくとラブレターを出した相手だった。なぎさがきわめて不器用なやりかたで彼女をふると、彼女はラブレターをひったくって帰っていった。手の甲に爪の引っかき傷ができた。
なぎさはいつも女の子からの告白には不器用。北里に怒られてばかり。
槇も他の人も、俺を殴って解決ということにしてくれないかな・・・となぎさが思っていたところに槇がやってきて、ぴしゃりと痛痒いような微妙な平手打ちをする。そうしていうのだ。

「今の人のかわりよ。こういう心境だと思うわ」

ハ、ハードボイルド・・・。ここから最初の回想にいきます。

いきますが、この平手打ちは、ラブレターの彼女のかわりにうっぷんをはらしたという意味もあるだろうが、それ以上になぎさを救ってあげたという意味合いのほうが大きいことは指摘しておきたい。なぎさは決して自分のやっていることが正しいとは思っていない。それをある意味罰する、いや救って上げられるのは自分しかいない。

そう、槇がここで出てくるのは偶然でもないし、さしでがましくもない。なぎさが本当に彼女を必要としたから、彼女は出てきたのだ。

2 二人の過去(ファーストインパクト)


二人が初めて出会ったのは3年前、ともに中学1年の市の陸上競技会。リハーサル日にスターティングの練習を黙々とする別の中学の槇のことがなぜか気になり、槇と同じ中学の男子選手から、槇が部内の百メートル走のタイムで一番よかったこと、しかし監督が今までの実績も考えて選考するといったときに槇が異を唱え「三位に入ってみせる」といったこと、そのため部内で孤立して誰も練習を指導してくれる人がいないこと・・・を聞かされる。
なぎさはどうしても彼女が気になってしまい、槇のところにかけより、スタートの欠点についてアドバイスをする。槇は「必ず三位以内に入る」と誓う。

しかし競技会当日。槇は五位に終わる。会場内の洗面所で先輩たちから吊し上げにあって殴られている槇を気転をきかして救うなぎさ。

抱きついてきて泣き続ける槇の肩を抱いて、なぎさは言う。

「陸上部やめるな。中距離、800に転向しろ」

「おまえの走ってる顔、 好きだ。 気が強そうで、思い込みが激しそうで、けど、きれい だ。 眩しいくらい、きれいだ」

・・・そして1年後の中学2年の競技会。二人は再び巡り合う。

回想終わり。
なんとロマンチック。なぎさがなんと言おうとこれは浮気、いえ本気ですね。

3 槇の宣言

槇はなぎさが好きな女の子が多恵子であることを言い当てる。なぜなら、多恵子は少し自分に似ているからと。ここで「気が強そうで、思い込みが激しそうで・・・」というセリフを持ち出されてなぎさは真っ赤になってしまう。

槇はいう。

「あんまり憎たらしいから邪魔しよう。私性格悪いんだ」

受験の時なぎさを見かけてうれしかったこと。同じクラスになれたらいいなと思ったこと。そうなってうれしかったこと。

そしてこう宣言する。

「今でも好きよ。雨城くんも、少しは、あたしのこと気になってるはずね」

4 なぜ槇は1ヶ月待ったのか?

話はまだ序盤なのだが(いきなりクライマックスだけど)、ここで少し槇の行動を考察したい。

槇はなぜ1ヶ月待ったのだろう?
逆にいえば、このラブレター騒ぎがなければずっと卒業するまでなぎさのことを無視し続けて終わるつもりだったのだろうか。

もちろん槇の心中はわからないし仮定の問題でもあるが、僕はイエスでもありノーでもあると思う。

あとでまた出てくるが、槇はなぎさに好きな人がいることは入学時点でもう知っている。しかし、なぎさとその人が正式に交際しているかは知らない。その相手がどんな人かももちろん知らない。
なぎさと同じ高校になれるとわかったとき、そしてなぎさが男女混淆のグループで行動しているのを確認したとき、その中になぎさの相手がいることを直感、いや確信しただろう。そして当面は様子見を決めたのではないか。

槇は、本人がいうような悪い子ではない。協調性はないし友達もいないが、むしろ優しく独自の倫理観で自分の行動を律することができる子だ。

したがって、なぎさと相手の女性が正式に交際していているならば、あえて波風をたてようとしなかった可能性は高いと思う。

「え、なぎさと多恵子ってまだつきあってないの?」と思ったあなた。

そうなのである。実はまだこの高校入学して1ヶ月の時点でも、二人は正式にはつきあっていないのだ。なぎさはさんざん匂わすようなことはいっても多恵子に「好きだからつきあってください」という趣旨の言葉はきちんといっていない。多恵子も、これは「多恵子ガール」ででてくるが、なぎさとの関係について周囲から聞かれて「グループ(の仲間?)よ」といういいかたしかできないと認めている。

槇が我慢できなかったのは、この互いに好き同士だし、親しい友人は全員それをしっているのに、恋人同士ではないぬるま湯のような関係に安住し、ラブレターがきても何も心配したりヤキモチもやかずに出した人の気持ちを心配する(当然ふられるに決まっているから)多恵子の傲慢さとそれをなんとも思わないなぎさの鈍感さだろう。

1ヶ月間の観察の後、彼女はもう一度戦うことを決意する。

それは、なぎさが自分を恋人にしてくれると思ったからではない。

自分をふったのであれば、それにふさわしい真剣さを今の恋人に見せてほしいと思ったからだ。恋愛の勝者には責任があると信じるからだ。

5 物語は疾走を開始する

なぎさは困った時の親友ということで北里に相談しようとするが、逆に北里から槇のこと好きになったんで協力しろといわれてしまう。
しかも槇が陸上部のマネージャーとして入部し、その世話役になぎさが任命されてしまう。
日曜日に多恵子を誘って本屋にいったなぎさは、偶然槇に話しかけている北里を見かけてしまう。なぎさはふたりに声をかけ、少し会話をして二人と別れる。

ここからが有名な多恵子となぎさの会話

「あの人、槇っていうの。なんて名字?」

「槇が名字だ。名前は……修子って言ったかな……」

「槇修子、 か。 いい名前ね」

6 槇を退けられないなぎさ

身長が伸びないことも有り棒高跳びを続けることに限界を感じ、陸上の他の競技に転向を考えるなぎさ。
マネージャーとなった槇に各競技のタイムをとってもらい、俺は長距離のほうが向いているかな、そうね私もあなたもあきらめ悪いし、などと互いにイヤミなのかのろけなのかよくわからないやりとりをするなぎさと槇。なぎさは気づいていないが、もうこの時点で実はラブラブカップル状態である。

部室での休憩中、なぎさは槇に対し、俺は多恵子が好きだから(あきらめろ)という。

槇はいう、

「じゃあ、あたしが嫌いだっていってみて。迷惑してる、顔も見たくないって。 そうしたらマネージャーもやめるし、周りもうろつかない」

なぎさは言おうとするが言えない。言えるはずがない。

槇に惹かれている。好きなのかもしれない。そう、槇に指摘されて、なぎさは槇との二度目の出会い、中学2年の競技会について回想していた・・・。

今回はここまで。次回で終わるかどうかわからないです。





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