マデイラ酒の香りただよう、イチジクのグラタン
お菓子作りの際にちょびっと洋酒を入れるだけで、こんなにも奥深く、大人なデザートができるなんて。
わたしはいつもお菓子作りをする時、数冊持っているお菓子作りの本をパラパラとめくっては、今の自分の気分や旬のフルーツをあれこれ想像しながら、何を作るか決めている。
そんな中、イチジクの旬の時期になったら、何としてでも作ってみたい!と思っていたレシピがあった。それが、坂田阿希子さん著『焼き菓子』に掲載されている「イチジクのグラタン」だった。
こちらはプリン・パウンドケーキ・タルト・クッキーなど、オーブンを使ったお菓子のレシピ本である。坂田さんが作られるお菓子は、まるでフランスのパティスリーで売られているかのような、どこか異国情緒が漂うところが魅力的。美しいお菓子の数々に、眺めているだけでもうっとりしてしまう。そんなお気に入りの本。
この本を購入した時にパラパラ読んでいてとても惹かれたのが、「イチジクのグラタン」だった。
イチジク。そのまま食べるのも美味しいけれど、生ハムと一緒に食べたり、スライスしたパンにブルーチーズと一緒に乗せて食べるのも美味しい。
そうした組み合わせは何だかとても大人な気分がして、ウキウキしてしまう。
幼い頃はチーズもあまり好きではなく、生ハムも遠い存在だったから、年を重ねてそうした複雑な味わいを楽しめる年齢になったんだ…と感じるからだろう。
そんな大人なイメージなイチジクが、坂田さんの手によってグラタンになるなんて。
作り方を見てみると、卵黄と生クリームを使ったソースにマデイラ酒と白ワインが加わり、そのソースをイチジクにたっぷりかけてオーブンで焼き上げる、というものだった。
お酒と生クリームのリッチな組み合わせ。一体どんなお味になるんだろう。そこにイチジクの甘さも加わって、おしゃれな一品になるに違いない。必ずや、試してみたい!
そんなことを思ってからあっという間に数カ月が過ぎてしまった。そして先日、ついに近所の産直市場で大ぶりのイチジクを発見した。
大きく実ったそのイチジクはとても美味しそうで、それを見た瞬間、「これは、『イチジクのグラタン』にピッタリなはず!」と迷わず手に取っていた。
帰宅後、他の材料は見つかるかどうか心配だったけれど、マデイラ酒は既に家にあり、白ワインも手軽な値段のものを入手することができた。
材料も揃い、早速作ってみることに。
イチジクをカットし、生クリームを泡立てソースを作り、耐熱皿にそれらを合わせてオーブンへ…
一時間もしないうちに、できあがりました。
焼き上がった途端、お酒の芳醇な香り、卵の焦げた香り、イチジク独特の甘〜い香りが部屋中に広がります。ずっと香っていたいくらい、良い匂い…。
早速お皿によそって、試食です。
んん…!!いちじくはオーブンで火が入ったことによってとろりとしていて、ソースと合わせるとたまらなく美味しい…!
ソースは上部にしっかりと火が入り、まるでクリームブリュレのような味と食感。そこにマデイラ酒と白ワインの旨味と香りが加わり、複雑な味わいを醸し出しています。
スプーンですくって一口食べるごとに、その味わいの深さを確かめるのですが、今まで食べたことのない味わいに「んん〜!!」と自然に声が出て、目を見開っきぱなしでした。
イチジクとソースの味わいが上手く重なって、本当に美味しい。
お酒を使ったお菓子が大好きな方には、きっとピッタリなレシピです。
こうしてたっぷりイチジクのグラタンを楽しんだ後、残った白ワインはオレンジとリンゴのスライスと共にポットに入れて冷蔵庫で冷やし、サングリアとして楽しみました。
自粛が続く暑い夏ですが、おしゃれなお菓子でお腹も心もいっぱいになりました。
洋酒を使った、イチジクのグラタン。また一つ、大人な味わいを発見したのでした。
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