日の丸半導体復活なるか?(6/365)
前から噂はあったのですが、大きなニュースが飛び込んできました。
半導体は経済だけでなく、安全保障上も重要な戦略物資です。この分野でかつて日本は圧倒的なシェアを誇っていました。1990年の象徴的なドキュメンタリーがこちらです。
私は大学院から半導体の自動設計について研究し、その後も電機メーカーの研究所で半導体周辺の研究開発、事業化に20年以上携わってきました。最後は経営の凋落と大量リストラを間近で見て、総合商社に転職しましたが、いまだに志ある旧友と繋がって、日の丸半導体復活に向けた草の根活動を続けてきました。
過去30年の日本の半導体産業の凋落ぶりは目を覆うばかりです。こちらは総務省のレポートからの引用です。
この凋落は、直接的には日米貿易摩擦、特に1986年に締結された「日米半導体協定」とう悪名高き不平等条約に端を発します。
しかし大きなきっかけではありましたが、その後の凋落の要因は、政策、経営の戦略のなさ、と要約することができます。
今回の新会社は、官民挙げての取り組みとなることでしょう。ここには大いに期待したいと思います。背景を考察すると、
第1に、米中経済戦争の影響があります。いまアメリカは半導体に関してブロック経済を目指しています。以下の記事をご覧ください。
日本は日米関係を基軸にせざるを得ませんが、地政学上は、米中の中間いわば緩衝地帯としてのポジションがあります。キャスティングボートを握っているとも言えます。
第2に、関連して台湾周辺の緊張状態があります。ご存知のように、台湾はTSMCを中心現在の半導体産業の生産基地となっています。安全保障上の観点からより安定している日本にアジアの生産拠点を集約させようという考えがあっても不思議ではありません。TSMCの九州誘致はそのきざしかもしれません。
このように、現在日本は「日の丸半導体復活」に向けて千載一遇のチャンスを迎えています。この好機を逃す手はありません。
しかし、政策・経営の戦略性のなさが解消されなければ、また同じ失敗を繰り返すことになる懸念があります。半導体産業は経済的には浮き沈みが激しく、長期目線と大型投資が必要です。そのような政策判断、経営判断ができる人材が新会社および支援する省庁にいるのか?というのが最も危惧するところです。
特に、半導体産業というと、微細化や製造面だけがクローズアップされますが、ソフトウェアを含めたアーキテクチャ思考が最も重要で、そのレイヤで日本はことごとく海外の後塵を拝してきました。
「世界の生産工場になる」というのもひとつの戦略足り得ますが、半導体をテコにして、GAFAの次の時代の大きな産業の潮流を創る、そんな壮大で夢のあるビジョンを実現して行って欲しいものです。戦略なき大型投資が生み出すものは何もありません。
私も関われるチャンスを探ってみます。
最後に元同僚が企画した応援歌で締めくくります。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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