春車鳥花隣人犬音楽

せわしなく過ごしているとNoteを書く余裕がない。あっという間に季節が日ごとに進んでいくので、のそのそと書き始めたものがみるみる古くなっていく。それでもなんか書き留めておきたい気持ちがある。

日によって寒暖の差がすごいのだが、陽が射すと春というか夏に近いくらいに暖かくなってきた。職場の敷地内のメープルにも花が咲き始めている。これ以外にはまだあまり花は咲いていない。

地味な花です。シロップは花じゃなくて樹液から作ります

今年の冬は往生際がよくなく、うちの庭の日陰がちな所にはしつこく雪だの氷だのが残っていたが、きのうやっとなくなった。意外にも暖かい日差しではなく冷たい雨の方がそれらを解かしていった。もう雪靴で出かけなくてもいい、その喜び。重いコートを着込まなくても、中綿のジャケットをさっとひっかけるだけで外で凍えない、その身軽さ。車だって、乗ってすぐ発車できる。エンジンあっためたり、積もった雪をかいたり霜をこすり取ったりしなくていい。すばらしい。

冬の間、車はかなり汚れてしまうが、洗ってもすぐ汚れてしまうので汚いまま数ヶ月を我慢して過ごす。春になって天気がよくなると、誰も彼もが車をきれいにしたくなるので、洗車場に長い列ができる。ここまであからさまだと「洗車」を春の季語にしたいくらいだ。

先日は晴天の日になんとか都合をつけて洗車しに行ったのに、同じことを考える人がたくさんいて45分も待ったあげく、前の車が洗車マシンをぶっ壊していったので結局わたしの順番はこず、完全な時間の無駄だった。再度リベンジした時は、誰も洗車に来ない雨の日だったから待たずにいけた。洗ってもすぐにまた泥がはねるだろうが、もうそんなライトな汚れにかまわず、去年の秋以来のヘビーなアカ落としをしなくてはならぬ。

いちばん高い洗車プランは洗剤がサイケデリックだ。洗われる車内で音楽をがんがんかける


春のいい天気の日は、外に出るとなんかもう匂いや音が冬とは違う。鳥たちの唄がテンション高くて、歓喜そのものという感じ。力いっぱい唄っていて、春ってこんなにぎやかだったんだ、冬が静かだったってことかな、などと考える。毎年思うが、あのきつくて長い冬を、鳥たちはあんなに小さな体でよく耐えられるなあとしみじみ感じ入ってしまう。寒さで体の芯まで冷えてしまったりしないのだろうか。

冬をじっと耐えるのは留鳥で、寒くてもこの土地にひっそりと生きていて、暖かくなるとやってくるのは渡り鳥で、南からはるばるすごい距離を飛び続けてここにたどり着く。どっちにしても生命力がすごいよなあと感心する。近所に唄い始めたばかりの若い個体がいるようで、なんかメロディがあやしいというか、定型と少し違う節回しをしていてふっと笑ってしまう。

雑草やら木の芽やら、気温に比例してぶわあっ、うわああっと出てくるのも毎度のことながら圧倒される。死んだように見えても、いったん消え去っても、その時が来ればちゃんとよみがえってくる。

うちにはある程度の面積の庭があるのだけど、色々な理由から花や野菜を地植えにせず、すべて鉢やプランターで育てている。一年草は夏限りの付き合いと割り切って、秋にはためらわずすべて土に還すが、多年草は秋になって枯れたら根っこだけを鉢から取り出し、庭の一角に集めてその上に盛り土をして冬越しをさせる。このやり方で2年は持ったが、3年目の今年はどうだろう。雪解けの遅さにずるずる手をつけずにいたら、盛り土の山からちらっとデルフィニウムの芽が出てきてしまっていたので、掘り出して鉢上げしてあげた。

あら、お目覚めでしたか
去年の夏の花、芽が出てきたのはピンクの子。今年も咲かせてあげられるだろうか


みなさんがコーチェラについてツイッターにいろいろ書いているのを横目に見ながら、週末は娘のバレーボールの大会の送り迎えや、だんなと共に冬のカーシェルターの解体にいそしむ。市で決められた撤去期限も近いのでさくっとやらねば。仲良くしているお隣さんは、窓からの視界を遮られるという理由からうちのカーシェルターが嫌いなので、わたしらの解体作業中にひょっこり彼が覗きに来た時に「これでせいせいするでしょう」と恩着せがましく言って、いひひと笑い合う。

お隣さんは豪快な笑い方がかなり特徴的なのだけど、この冬の間、彼は心の調子がよくなく仕事も休んでいたようだったので、しばらく顔を合わせていなかったし、寒い冬は窓を閉め切っているので何も聞こえてこなかった。そうやってそれぞれが冬ごもりをしていたのが、今は彼もガハハと以前みたいに笑えるようになってきて、それに暖かくなると窓を開けるようになるので、遠くから時おり彼の笑い声が聞こえてくる。そして初めて気がついたのだけど、そうやってそれぞれの家の空間が外に開け放たれていて、隣家から人の声が聞こえてくるのはいかにも夏だなという感じがした。

引き続きだんなと一緒にカーシェルターの骨組みを黙々とばらしていると、ふいに犬がぬっと現れた。大きめの、ピットブル系の強面の種類で、首輪をしているけどひもはつけてなくて、飼い主も近くにいなかった。やっぱりこういうのは不意に出くわすとそれなりに驚いてうおっ、となるが、別にあわてて叫んだりはしなかったし、犬のほうもなんだかきょとんとしている。全体的にはおっかないいでたちをしているのに、表情がどことなくあどけなくぽけーとしている犬だった。まだ若いのかもしれない。

だんなはなぜか大きい犬からのけんかを買いやすいタイプなので「ねーちょっと、ほら」と声をかけて注意を促す。だんなは顔を上げて犬をちらっと見たが「まあ平気っしょ」みたいな感じで、それ以上特に関心を向けなかった。わたしはどうしようかなーと少し考えていたが、犬のほうがいたたまれなくなったようで、前足にはずみをつけて「んもうっ!」という感じで向こうに行ってしまった。そして例のお隣さんの庭にかけこんでいった。

お隣さんは小学生の息子がふたりいるので、子供にはちょっと危ないかなと思い、念のため電話で知らせる。ねーお宅の庭に犬が入ってったよ、なんかあんまり怖くないんだけど、けっこう大きいから一応気をつけてね、と伝える。あーあの犬ね、またあいつか、しょっちゅう逃げるんだけどすげえ弱気なんだよな、なんもしねえよ、と言われ、そういえばこの犬、去年の夏にも見たことあったなと思い出した。

夏は午前中に鉢植えの水やりをするので、リモートワークの午前の休憩を使っていつものようにホースで水撒きをしていたら、こちらに向かってくる何かの気配を感じて、そちらを見ると2匹の犬がいた。ピットブル系の強面な種類で首輪をしていて、1匹は成犬でもう1匹は子犬だった。

おおおお出かけですか2匹揃って、まじかこれは、どうしよう、などと頭の中がぐるぐるしていたが、当の犬たちは別にこちらを攻撃しようという感じの敵意もなく、こんにちは、来ました、という感じでこちらを見ながらたたずんでいた。お互いに膠着状態になっていたが、おもむろに向こうがこちらに近づいてきて、いやーそれはちょっとさすがにイヤかも、と思ったので、持っていたホースの水を向けてお取り引きいただこうとしたのだが、若干水のアタックが遠慮がちで弱すぎたのと、なにせ夏の暑い中だったので、水をかけられて2匹はむしろヒャッホーみたいになってしまい、こちらの意に反してキャッキャし始め、ねえねえ遊んでくれんの?という雰囲気になってきたので、やむを得ず水撒きを中止してわたしは家にひっこむことになった。

犬って攻撃的じゃなくても攻撃能力じたいは高いので、やっぱり飼い主がそばにいなくて自由に動ける状態で対面すると緊張する。犬を飼った経験がないので、いつどういう理由で彼らの野性のスイッチが入ってしまうのかよく分からないからだ。

その反面、職場にアニマルセラピーの犬がいる機会が時々あって、わたしは積極的に日程を調べ、動物好きの同僚たちを誘っていそいそと見に行くのだけど、確かにセラピー効果のようなものを感じる。そういう犬は、いかにも人好きのするキラキラした裏表のない愛嬌を平等にふりまいていて「この分野の才能」のある犬が訓練された上でやってるんだなと思う。もちろんトレーナーが立ち会っている安心感も大きい。そんな犬たちは実際に触れ合うだけでなく、はたから見ているだけでもなぜだか心がほだされる。なんかアイドルにのぼせるのってこんな感じかなとすら思う。同じ犬でも、個体差や環境差もしくは状況や文脈によって、こちらに及ぼす影響の違いが大きいなと思う。

それに比べると、猫は小柄だし攻撃されることもほぼなく、そもそもこっちに興味すら持たないことも多いから怖くない。そしてどんな猫でもどんな状況でも、感じるものは割とブレがなく安定している気がする。猫は、だいたい「まあ猫ってこうだからね」の落とし所に安心感があるように思う。猫はいつもあんな感じ。


最近聴いて好きだった音楽のことをいくつか。

Skee Maskの3月に出たEPが好き、特に1曲め。イントロからもうわくわくさせられる。

これはジャンルに区分すると何になるんだろう。そういうのに疎いのでなんとも言えないが、強いて言えばなんかこれチャールストンぽい?と思った。古いアメリカの陽気なやつ。
Skee Maskはシリアスなやつもこういうアッパーなやつも両方いいなと思う。どちらも音のすわーとした響かせ方、空間の広がり感がなんかいい。若いのに90年代のテクノにはまった人らしいので、そういうものが根底にあってこちらに訴えてくるのかもしれない。妙に盛り上がって彼の別名義のSCNTSTのラフな作りの音源もBandcampで買い漁ってしまった。

K-LoneのFall EPがApple Musicに上がっていて、てっきり新譜かと思いきやBandcampでは3年前にリリースされていた。電子音がはね回っていてかあいらしい。

1曲目の「The Falls」にかすかに入っているさえずりはノドジロシトドという鳥で、上り調子の唄をうたっている。同じ鳥がうちの近所にわんさかいるが、このあたりのノドジロシトドは下り調子のメロディで唄うので興味深い。ノドジロシトドの唄については流行の節回しがあるという研究もある。
4曲目の「Honey (Facta version)」はなんでFacta remixじゃなくてFacta versionなんだろう。別のアルバムに入っていたオリジナルよりもこっちのほうが好きだ。雨上がりの太陽のような明るさ。

ジムに行ってクロストレーナーを漕いでいる時、以前はYoutubeでライブの動画を見ていたが、最近よく見ているのはTelekom Electronic Beats TVというドイツの音楽チャンネルの「Blind Test」という15分くらいの短いやつ。80 - 90年代の楽曲を当てるクイズ形式で、デトロイトテクノとかイタロディスコとかアシッドハウスとか毎回ジャンル分けされている。

その時代やジャンルを象徴するような曲の当てっこなので、知識を得たい人にはすごく興味深いだろうし、そういうの関係なくただ見ていてもなんかおもしろい。人の表情がくるくる変わり、いい大人がはしゃいでいて、いい音楽がかかる。楽しそう。
運動中に見るものって家で見るものとはかなり違うし、ジムに行くのが楽しみになる理由があるのは大事。15分程度の長さもちょうどよく、エピソードもたくさんあるのでこれから見ていくのが楽しみだ。

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