ちょうどよさ、Aphex Twinのカバー
毎日の中でふっと頭の中に浮かんでくるものをいちいち捕まえることができない。が、そうしたい気持ちがある。そしてnoteに書き留めておきたい。これは流しそうめん的ではないか、と思う。狙いを定めて、流れゆくそうめんを捕まえる。取ったそうめんをずるずるすすっている間にも、目の前をさあっと過ぎゆくそうめんがあって、捕らえることができない。もうだいぶめんつゆが薄くなってきたからつぎ足したいけど、たぶん目をそらしたらまたそうめんを逃してしまう。でも薄い味のまま食べてもおいしくない。どうしよう。そもそもお腹空いてるのか、どうしても全部食べる必要があるのかもよく分からない、でもそうめん取らなきゃ、取りたい、でも…というような、生活の中でめぐる思いとそれをnoteに書くことの追いつかなさを感じつづけている。流しそうめんは食べたことがない。
9月もそろそろ終わりかけの今になってようやく朝顔が咲き始めた。
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2mのひまわりもついに全部開花。
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天気がよく、日中はわりと暖かくなって20℃を超えたりする日もあるのだけど、明け方などは5℃くらいまで気温が下がる。10時を回るまでは寒さに当てられてしょぼんとしている花もある。それでも日が高くなり気温が上がると、ほんの数時間であれ咲かずにはいられないらしい。植物の律儀でメカじみているそういうところが好きだ。
手入れやメンテナンスということについて考えている。いい状態を保つにはどうしたらいいかということ。
例えば花や野菜などを見ていると、水やりと日光がちょうどよいバランスでコンスタントに供給されていることが状態の良さにつながるし、そうすることが花のきれいさや実のなりの良さに直結している。気温の高かった6月に液肥を若干やりすぎたことがあり、ブーストがかかりまくって咲いた花は絢爛だったが茎がうねり、自立できなかったものがあった。
水槽も水質に関わるポイントがいくつかあり、バランスが崩れるとコケや藻が増えてしまう。個体差によって耐えうるリミットが違うこともある。この夏に数日家を空ける外出をしたが、戻ってきたら赤いベタが瀕死の状態になっていた。水質が悪化していたらしく、目が淀み生気が失せ、力なく水に浮かんでいて体の色が暗くくすんでいた。ひらひらと水にそよいでいた美しいヒレは癒着して、閉じかけの傘のようにひしゃげてしまった。もうひとつのアカヒレの水槽は普段どおりわちゃわちゃと活気があって大丈夫だったので、ベタがアカヒレより繊細であるか、ベタの水槽のセッティングを見直す必要があるということだ。
たった数日の外出から戻ってきたらこうなっていた、というのは厳密に言えばまちがいで、本当はもっと前からゆっくりと環境が悪くなっていたのだと思う。しかし日常に追われてそこに気が付かなかった。自分の余裕のなさから生きものをこんな状態にしてしまった罪悪感にかられながら、ネットでベタを回復させる方法を探すと、くっついたヒレを綿棒でほぐしてやるというのがあったが、今それをやると死なせてしまう気がしたので、ひとまず1週間ほど塩浴をさせて調子が戻るのを待っていたらどんどん元気になり、自然と少しずつヒレが再生してきて1か月くらいでほぼ元通りになった。本当に本当によかった。
その回復と再生の様子はほんとうに美しいものだった。体の色がみるみる明るくなっていき、目の力や身のこなしがきりっとしてきて、本来のベタのよさがぐんぐんと現れてきて、どこかしらキラキラしているようにさえ感じた。ヒレの状態も1日刻みでよくなっていく。もうあやまちは繰り返すまい、と思って、今後はフィルターと活性炭で水を循環させることにした。
環境を改善することで「素」の状態がさらによいものになり、それが見た目の美しさを引き出していく。これなんだよな、あれこれと忙しくても自分自身をケアしてあげなくてはと思うが、いろいろと表面的な部分を飾ったり過剰にいじくるのはなんか違う気がしていて、身の回りや精神状態を快適に整えてチューニングするみたいな作業を通して自分の手入れをしたい。必要以上でも以下でもないちょうどいいポイントを日々の中で意識することが大事なのではないかという気がしている。食べることとか、体重の管理とか、洋服を着ることとか、過不足の幅を小さく、自分にしっくりくる状態を維持したい。
すっごい元気で異常に楽しい、みたいなハイな状態はその後に落ちる感覚が必ずあるからあまり好きじゃなくて、本来は自分の体調がそもそも気にならないような、意識にすらのぼらないようなニュートラルなコンディションが一番いいんだけど、まあ年齢的になんとなく常に低空飛行みたいな感じがするのは否定できない。仕方ない。肌とか髪とか体の線とか、さすがにもう若い時とは相当変わってきているけど、取り繕っても否定してもしょうがないので、現時点でのベストをなるべく目指したい。そして機嫌よくできる範囲でやらないとそれはちょうどよくない。
こんなふうなことは数年前からなんとなくぼんやり考えてきていて、それはライブを見に行った時によく感じることだった。自分と同年代もしくは年上のアーティストがステージで2時間や3時間のパフォーマンスを繰り広げるのを見て、タフだなあ、体つくってるんだなあとよく思ったのだ。若い人たちは楽にできると思うけど、40代から50代の人間にとってはライブツアーをやるのって実際のところかなり過酷だと思う。
2015年だったか、Death Cab for Cutieがモントリオールに来た時に見に行ったが、ボーカルのBen Gibbardが途中からものすごい量の汗をかいて見るからにしんどそうにしていた。彼自身、思うように表現できないことにもどかしさがありいらだっているのが分かった。そして翌日からのツアーは彼の体調不良でキャンセルになってしまった。人間だもんね、あれは明らかにどこか悪くしてたよ…しかし行くはずのライブがキャンセルになってしまったファンの中には、ツイッターでキレてる人もいた。同情よりもバンドを責めるようなコメントが多かった(まあツイッターだしね)。みんな忙しい中で前もって都合つけて、遠くから来る人もいるからショックで大変なのは分かるが。でも連日連夜のライブ活動って、膨大な体力と自己管理を要求されるだろうと思う。
だから去年から今年にかけて見たAnimal Collective、Green Day、Depeche Modeの、彼らの年齢とパフォーマンスのレベルを考えると、やっぱり感心してしまう。身体にガタがきてたらあれはできない…最近はYoutubeでUnderworldの昔のライブ映像をみたけど、ボーカルのKarl Hydeは2016年当時で59歳だった。ボーダーのロンTを着て、ステージ上で自然に楽しんでいる感じなのだが、不思議にチャーミングで特別なことをしなくてもとにかく絵になってしまう。
歳をとっても素敵な人はやはりいる。変に若作りや無理をしていなくて、年齢の重なり方がちょうどいいように見える。人間は常に変わっていき、若い時と同じままではいられないが、そのつどの自分をよい状態に保って老けこんでしまわないための方法が、人それぞれにあるのだと思う。若く見られようとするよりも、自分の実年齢とちょうどよくいい感じになっていきたい。
Aphex Twinの「IZ-US」をカバーしたバンドがいて、それがすごくよかった。
他にも彼らが影響を受けたらしきアーティストの名前をタイトルにしたカバー曲が入っていて、全体的に楽しい雰囲気の気持ちのよいアルバムだった。ただやっぱり「生楽器で演奏されるAphex Twinの曲」というところが、もともとバンドサウンドである他のカバー曲と比べても一層いいんだよな、というのは確かで、こういうのもっとあるはずだと思って探すとけっこう簡単に見つかるので、よさげなものを集めてプレイリストにするなどした。
「IZ-US」と同じ「Come to Daddy」からの「Flim」はピアノ、ウッドベース、ドラムでのカバー。よい。原曲のEPを当時アナログで持っていて、33回転で聞くの好きだったな。
あーやばいな。オリジナルもやばいけど、このカバーも…涅槃の調べ。危険なほど力が抜けて融解してしまいそう。聴きながら幽体離脱するような。クラリネットとサックスみたいな音が聞こえて残響感がとてもよく、アルバム解説によると教会で録音されたらしい。
#3(rhubarb)の後に聴くと地獄の往復ビンタみたいな曲だなと思う。でもカバーというか再現度が高くてすごくいい、あまりにいいので笑うしかない。
ギターのピッキングの感じやドラムのビートなど、もともとこっちがオリジナルなのではと思ってしまうくらい違和感なくて驚く。
わたしがAphex Twinの曲でいちばん好きかもしれないGirl/Boy Song、原曲のストリングス+狂ったドリルンベースの組み合わせを、このカバーではアコギとタブラみたいなパーカッションで再現している。もしこのパーカッションを実際にこのスピードで演奏していたらすごすぎる。
Aphex Twinの曲の中で最もまともで美しい「Avril 14th」は、どこかのピアニストがやったカバーばかり見つかったのだけど、元からピアノなんだからそんなんつまらない…と思っていたらシューゲイズみたいなカバーがあった。アレンジもすごくいい。素朴なオリジナルの美メロをさらにスケール感をアップさせて遥かな奥行きを持たせている。このプレイリストの中でも個人的にはベストのカバーだと思う。
A.G.Cookがやった「Windowlicker」のカバーもあるけど、やっぱりバンドでやったやつが聴きたかったので。このカバーは、あのちょっとレトロなシンセをマリンバでやるって思いついたのがすごいなと思う。あのヘンなアヘ声も入っている。
これもすごくいいポストロックっぽいカバー。Aphex Twinの原曲の奇妙さやシンプルさにとらわれずに、いろんな楽器の音を「せーの」で一緒に出しているバンドのカバーは、「Avril 14th」もそうなんだけど、やっている人たちの楽しんでる感じが伝わってきてよい。
オリジナルと違うフォーマットでやるカバーはよく考えてあるなあと思う。あの音をどうやって自分たちの楽器で出そうかといろいろ試してみるんだろう。思いつきでぱぱっと曲を集めたので、自分が個人的に思い入れのある90〜00年代のものが多くなってしまったけど、特にこの頃のAphex Twinの作品のメロディとビートにくすぐられるプレイヤーもたくさんいるのではないかなと想像する。変態じみているのに冷たくなくてユーモアがあり、打ち込みでできてるけど人力でやりたくなるような魅力がある。そして実際、全ての楽曲ではないけれど、Aphex Twinのメロディは楽器との親和性が高いし、違った奏でられ方をしても変わらない美しさがあるなと思った。
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