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アンソロ主催経験の備忘録

先日、アンソロ実録というnoteが流れてきたので読んでみた。

記事内には言葉の誤用が多く、内容的に気になる部分も多かったため、ここに自らの経験をしたためてみようと思う。

はじめに

まずアンソロジーの定義から。アンソロジーとは、複数の執筆者の作品を集めた作品集である。その性質上、テーマが設けられていたり、短編作品が収録されていることが多い。

さて、この記事で取り扱うアンソロジーとは、いわゆる同人アンソロジーである。ここで、同人についてWikipediaで調べてみる。

同人(どうじん)とは、同じ趣味・志を持っている個人または団体。

要するに趣味で作る作品集が「同人アンソロジー」である。趣味で本を作るの?自分の作品だけじゃなく、他の方の作品も預かって?すごくない?

これも踏まえて、今回は女性向け二次創作同人におけるアンソロジーについての記事となる。

同人アンソロを作るにあたって

インターネットが普及した現在では「アンソロジーの作り方」「アンソロ主催の手順」なる記事は既に複数存在している。それを承知の上で正直はっきり申し上げるが、そのような記事を見ないとアンソロ主催の手順が全く分からないという方は、悪いことは言わないので主催しないほうがいい。

多少の手順は想像できるが不安があって記事を参考にする、というのならまだ分かる。だが、記事を見ないと手順も分からないような状態で主催しても、何かトラブルが起きたときに対応できないだろうことは想像に難くないからだ。もし何かトラブルが起きたときに毅然とした態度で対応ができる自信があるなら、その情熱を優先してもいいと思う。具体的には、原稿の提出遅延者に「NO」を言える、仕様や内容ミスに「NG」を言える、何かミスをしたときしっかり「謝罪」ができる、などである。

しかし、同人アンソロというのはそもそもが趣味である。つまるところが情熱の具現化である。主催をした経験の有無を問わずとも、そのジャンル・カップリング等でアンソロを作りたい!という熱意・意欲はできうる限りは尊重したいというのが、私個人の基本スタンスである。好きという情熱が一冊の形になるのは、あまりにも尊いので。

それでは、以下にこれまでの経験を備忘録として記していく。

これまでの同人経験

さて、参考までにこれまでの私の同人経験を書き出す。

同人活動年数:約15年
個人誌:65冊
合同誌:33冊
アンソロジー参加:30回
アンソロジー主催:5回
アンソロジー協賛:1回
プチオンリー主催:1回
オンリーイベント協賛:1回
オンリーイベント主催:1回

数字は自分用のメモを参照して数えたが、いやはやどうにも落ち着きのないオタクでお恥ずかしい限りである。悔いはない。その上で、トラブルに見舞われた回数も簡単に記載する。

アンソロ主催が音信不通:1回(自分は参加者側)
アンソロ執筆者が音信不通:複数回(ままあるので覚えてない)
アンソロ執筆者からの提出遅延:複数回(よくあることです)
トレース・盗作など犯罪に抵触するトラブル:0回(幸いこれはない)

アンソロ主催の手順

この項目については前述のとおり、既にまとまった記事がweb上にいくつか存在している。そのためここではあくまで簡潔に記載していく。

(1)原稿の集め方を決める

アンソロ原稿の集め方を大別すると「公募制」「依頼制」の2種類ある。もちろんこれは併用してもかまわない。一部依頼、一部公募というのも確実なアンソロ発行のためには十分に現実的な選択肢だと考えていい。

というのも、公募制にしろ依頼制にしろ、さまざまな理由から途中で執筆を辞退したり、原稿の提出が〆切より遅れたり、最悪のケースでは音信不通になる場合もあるからである。最後のケースは悲しいが公募制には特によくあるので、そんなもんだと思っておくのが身のためである。

(2)要項をまとめスケジュールを組む

アンソロを主催するにあたって決める必要があることはたくさんあるが、最低限でも公募ないし依頼をするにあたって決めておきたいことは2点ある。それは『原稿の仕様』『原稿提出期限(〆切)』である。

これがなければ、作品の執筆はやりようがない。特に『原稿の仕様』については、小説であれば最後にテキストを流し込んで微調整という手もとれなくはないが、漫画の場合そうはいかない。原稿サイズによって作画負荷などは勿論、人によっては実際に作画する画面や使用するトーンも変わってくるし、特定サイズ以外に不慣れな方はそこで辞退する場合もある。そのため小説のみのアンソロでもない限りは先に提示すべきである。

そして『原稿提出期限(〆切)』は絶対に必要である。作品は〆切がないと仕上がらないし、作品の制作スケジュールを調整するためにも〆切が分からないと困る。

なお、提出遅延はよくあることなので、スケジュールには余裕を持って印刷所の実際の〆切よりも最低でも一ヶ月、編集作業に不慣れな場合は一ヶ月半~二ヶ月は確保しておくのが妥当だ。くわえて告知期間や執筆陣の作品制作期間も考えると、アンソロ発行予定日から最低でも六ヶ月程度は期間を設けて告知・依頼をするのがより良いということになる。

その他にも決めておいたほうが良いことは山程ある。下の画像は私が少し前に主催したアンソロ要項もくじページのスクリーンショットである。不要な情報にはモザイク処理を施してあるが、参考になれば幸いである。

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(3)公募または依頼をする

要項が最低2つ以上まとまったら、公募または依頼をする。このときにTwitterで企画アカウントを作るのはいいが、依頼制の場合DMでの依頼は非推奨である。DMはバグが頻発しがちで下手をすると不着の場合もあるのが一番の理由だ。重要な連絡には向かない。

ではどうするか。初めにDMで簡単な挨拶とできればメールを送りたい旨を伝えて、メールアドレスを教えてもらうのがスマートだと思う。あと依頼したい理由とか普段の作品への感想も添えるとベストだが、これはメールの際に改めてでもいい。Twitterが不明なときは他の手を使うにしても、似たような手順だと思う。

(4)原稿を取りまとめる

事前に提示していた原稿提出期限が来たら、提出くださった方の原稿の仕様チェックをする。サイズ・解像度・カラーモード・ファイル名・フォントの埋め込み・ファイル形式などに問題がないか、などである。

このときに日本語の誤用や誤字脱字、URLチェックなどを含めてすべての校正を主催でやるなら、作業期間は更に追加して想定しておくべきだろう。ただ、私自身同人原稿については事前に頼まれない限りそこまで緻密な校正はしないし、気がついたら伝える程度である。

仕様チェックを終えたら、問題の有無に関わらず必ず折り返し御礼メールを返す。簡単でいいので寄稿いただいた内容の感想も伝えられるとベター。もちろん全員分である。並行して未提出の方には原稿提出を確認できていない旨と、遅れる場合は何日の何時頃までに提出できるかという質問を、必ず返信期限を設けてメールする。繰り返すが、もちろん全員分である。

なおこれはアンソロ主催に限った話ではないが、返信期限を設けずに連絡した際に相手から返信が来なくても、返信期限を設定しなかった自分が悪いと思ったほうがいい。まして同人アンソロの主催は、本来なら稿料を支払って執筆していただくべきところを、お忙しい中にも関わらず趣味だからと無報酬で作品執筆をしていただいている立場なのだ。執筆者の負担はできる限り軽く済むよう、気を払っていきたい。

ちなみに、依頼した際の執筆可否や原稿の提出にはGoogleフォームを使ってもらうのが個人的には一番楽。執筆陣からもメールより楽で助かると好評だった。スプレッドシートにも出力できて本当に便利。(2)で貼ったアンソロ要項も元はGoogleドキュメントである。ありがとうGoogle先生。

(5)編集・入稿する

さて原稿が集まったら、いざ作品順を決めて編集である。作品順には編集の腕が出る…と個人的には思っている。私個人は基本的に読後感やすべてを通して読んだときのテンポを考えながら編集していることが多い。一般的には主催がしんがりを務めるケースが多いと思うが、必ずしもそうであるべきという決まりがある訳でもないし、場合によっては提出順で編集してしまうケースもある。そのあたりは人それぞれだろう。

台割を終えてノンブルを挿入しファイル名を確認したら、もう印刷所への入稿を残すのみである。無事に印刷所へ入稿できて不備連絡がなければ、イベント当日や本の到着を待つだけ。もし余裕があれば、執筆者に一斉BCCでかまわないので、簡単に入稿を終えた旨の報告メールができると、執筆者も安心してくれることだろう。

(6)献本・御礼をする

本が到着したらまずは通しで読んでみる。ひととおり読んでページ順など編集ミスがなければ、早速執筆者への献本作業に移る。もし何かミスがあればすぐにメールで謝罪などの対応を行うことになる。

女性向け二次創作同人では献本+感想の手紙+お菓子などの形で御礼をすることが比較的多いが、少額のQUOカードなどもここ十年くらいでだいぶ増えたように思う。なお男性向けでは稿料があることがむしろ一般的だと思うが、この違いってなんなのだろうとよく考える。二次創作だから利益を出さないためというなら、むしろ稿料を支払ったほうが自然なような気がするが。

閑話休題。

おわりに

今回の記事はアンソロ主催経験の備忘録だったが、これを書いていなかった。

アンソロ主催というのは責任重大な立ち位置である。

割と…というか、かなり重要なところであり、忘れてはいけないところである。他人様の大切な作品をお預かりすることは元より、そもそもアンソロなりプチオンリーなりの同人企画というのは、該当のジャンルに大なり小なり影響を与えることが非常に多い。最悪の場合はジャンル人口が減少する原因と化す場合さえある(実際それを目撃したこともある)。また、企画主催というのはどうしても目立ちがちになるため、第三者から言動を叩かれることもままある(私も執筆者に怒りメールをもらった経験がある)ため、発言に慎重になるには越したことがないし、それなりのメンタルは必要となる。スルーする力も試されることだろう。

仮に不当な攻撃であれば毅然とした態度で接したりスルーしたりすべきだし、仮に執筆者への不満が残っても基本的に残るような場所で吐き出すべきではない。まして個人が特定できるような形でなんて言語道断であると考える。

長くなってしまったが、冒頭で記したとおり、同人という趣味において熱意・意欲はできうる限りは尊重したいというのが、私個人の基本スタンスである。アンソロの何が良いって、「俺の推し作家による俺の推しジャンルの作品集」がこの世に生まれることなので。主催をすれば推し作家に推しを執筆してもらえるので。諸々を念頭に置いた上で、最高に推せる一冊を作ってほしい。

楽しんで!

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