淡路ラボインターン1期生体験記#4『淡路島で見つけた僕の生業』
自己紹介
こんにちは。所属する大学を半期休学して、淡路ラボの長期インターンシップに参加した青木俊介(あおき しゅんすけ)です。
8月から2022年の2月にかけて、淡路島で日本酒の製造・販売を行う株式会社千年一酒造でインターンとして働き、期間中は酒蔵に住み込みで働き、広報・イベント企画の立案をしました。そして11月からは上記の業務に加えて、実際にお酒造りをする蔵人として日本酒造りに参加しました。
今回はコロナでアメリカ留学を中止になって、大学生活めちゃくちゃにされた大学生が、日本酒を製造する酒蔵にインターン生として飛び込むまでとその先で出会った人達や肌で感じたことを通じて、日本酒の造り手になると決意するまでの話をします。コロナでやりたいことができなくて不満を持っている大学生。大学生活で何かに挑戦したいと感じている大学生のきっかけになればと思います。
インターンへ挑戦するきっかけ
~ワクワクするものは身近なところにあった~
元々僕は大学4回生で休学し、アメリカに留学する予定でした。好奇心旺盛な僕は「自分の知らない世界を肌で感じたい。そして、そこであわゆくば自分のやりたいことを見つけたい」というかなり大雑把な理由で、アメリカに留学しようと思っていました。しかし、留学する直前に新型コロナウィルスが大流行。留学は中止になりました。いつから留学ができるか先行きが見えなかったこともあり、留学を断念しました。留学に行くことが楽しみで仕方なかった僕は、留学に半ば強制的に行けなくなって、ぽっかり空いてしまった心と時間を、何か他の事に費やそうと決めました。
空いた時間で何をするか決める前に、僕は今までの自分を振り返ってみることにしました。「アメリカに行けなくなった。でも、そもそもアメリカで何がしたかったんだっけ?どんなことを感じたかったんだっけ」と自分の気持ちを深堀りしました。その中で気がついたことは、「自分の知らない世界を肌で感じたいからアメリカに行きたかったけど、よく考えてみたら日本の事もあまり知らないじゃん」ということ。僕の知らない世界が一つ、身近にあったことに気が付きました。
そこから日本の伝統文化、伝統産業を中心に調べまくりました。そんな中で日本の伝統文化の中で一番身近だったのが日本酒でした。なぜかというと、青木家は僕も含めて生粋の飲兵衛一家で常に家には日本酒がありました。また、僕は浅草の居酒屋でアルバイトをしていて、コロナ以前外国人の方が沢山来店し日本酒を楽しんでいるのを近くで見てました。改めて考えて見ると、日本酒が自分の生活の中に結構登場していたことに気が付きました。そんな感じで伝統文化のなかでも特に日本酒について調べるようになりました。
日本酒について調べれば調べるほどなんか面白い。ワクワクしてもっと深く知りたくなりました。そして僕はこの好奇心のまま、留学できなくて空いた時間を使って日本酒の世界に飛び込んでみようと決心しました。そんな中で調べて出てきたのが、千年一酒造のインターン募集でした。インターンでは酒蔵で寝泊まりすることができる。しかも最後に企画や広報の仕事のほかに、興味がある人は酒造りに参加できるとのこと。実際に酒造りに参加できるなんて、こんな貴重な体験は絶対ないと思い参加しようと決めました。
日本酒は生き物だった
実際に酒造りが始まった11月、夏とは違う緊迫した雰囲気が蔵の中に流れる中で、僕は日本酒の製造工程に造り手の一人として参加しました。そこで、酒造りの最前線に立つ蔵人(日本酒の製造をする職人)さん達から、日本酒の歴史、発酵のプロセスのことを実際に酒造りに参加しながら学びました。特に僕が印象に残っている所は、蔵人さん達の日本酒に対する姿勢です。
日本酒は、製造過程において麹菌(こうじきん)、酵母や、乳酸菌など微生物の力を借りて、生き物のように育っていきます。特に麹菌を育成する製麹(せいぎく)という製造工程において、蔵人さん達の、日本酒に向き合う姿勢を顕著に見ることができました。
製麹担当の蔵人さんは麹の面倒を見るため、夜中に頻繁に起きて、麹の温度、においなどを確認し手入れをします。この麹の面倒を見る工程は二昼夜かけて行われます。麹づくりは日本酒造りの中で一番手間のかかる工程であると共に、その後の工程を左右する一番大事な工程です。
僕はこの二昼夜かけて行われる製麹の工程を見たとき、人間の子育てにすごく似ていると感じました。麹担当の蔵人さんは、生まれたばかりの赤ちゃんが、夜泣きをあやす母親みたい。麹菌に合わせて、夜遅くに起きて、麹の手入れをする様子は、まさにそのように見えました。
日本酒って生き物だ。そう感じたとともに、日本酒を生き物として愛で思いを馳せて酒に向き合う姿勢に感銘を受けました。僕の人生でこのような姿勢で仕事をしている人を見たことなかったので、衝撃的でした。自分が何気なく飲んでいた日本酒。こんなにも手間と時間をかけ造られているものなんだと感じました。
思いを馳せているからこそ
手間と時間をかけるからこそ、自分が関わったお酒がお客さんの元に届き美味しいと喜んでいただけた時がこの上なく嬉しかったです。手間と時間がかかるから思いを馳せられるし、思いを馳せたものだから飲んでくれて喜んでもらえるのが嬉しいんだなと感じました。酒造りってめちゃくちゃ楽しい仕事だと感じたと同時に、日本酒造りを自分の生業としてやってみたいという感情が芽生えてきました。
“やりたい”から”やる”までの迷い
このように日本酒造りの魅力にどっぷりはまった僕ですが、決心するまでには、結構迷いました。迷ってた要因としては、主に2つ。
日本酒造りは、酒蔵で泊まり込みで作業する事が基本です。酒造りが始まる11月から3月にかけて、酒蔵から離れることができません。「約半年間、家族、恋人、友人など大切な人に会うことができないという事に自分が耐えられるかどうか。うーん。(笑)もし、自分が結婚して子供が生まれたら、酒造りしてる間奥さん一人で大変じゃんとか考えたり。そもそも、半年家にいない人って、結婚できるのかな」とかかなりリアルに想像してしまいました。
もう1つは、社会人1年目で、自分がやっていけるかという不安がありました。基本的には、酒蔵で酒造りに従事する蔵人は季節労働です。正規労働ではなく非正規労働に当たります。また、単純に技術のあるなしが問われる職人の世界であるため、自分のスキルを高め続けなければなりません。決して、一般的な社会人に比べたら決して安定した職業ではないと思います。僕の性格上、自分の中で挑戦したい事が出てきたときに、それに伴うリスク、デメリットなど、マイナスな情報ばっかり収集してしまう癖があります。調べれば調べる程、不安が押し寄せて、やっぱどうしようかな~と迷うようになりました。
迷いを断ち切ってくれた蔵人さんの言葉
しかし、このことを一番お世話になった蔵人さんにお話したところ、「しゅーん、迷っている時間がもったいないわ。やりたいならやりなさい」「迷ったら、十年後の自分を想像してみなさい。酒造りをしてる自分、違う人生を選んだ自分、どっちも正解だけどどっちが今の自分がワクワクする未来か考えてみ」
こう言われて、10年後の自分を想像すると、親父に自分の造った日本酒を飲んでもらうシーンが浮かんできました。酒造りをしている自分の方が、かっこいいし、ワクワクする。色々な日本酒業界のマイナスな点とこのワクワクを天秤にかけても、日本酒造りに対するワクワクの方が強かった。自分の中で納得して僕は日本酒造りの道に進むと決心しました。
さいごに
最後に、このような貴重な機会を作っていただき、僕をインターン生として受け入れていただいた千年一酒造とこのインターンシップを創り出してくれた淡路ラボ、関わっていただいた全ての人に感謝致します。アメリカに留学する予定の僕が、インターンをきっかけに日本酒造りの道に進むなんて、半年前の自分では全く想像できないと思います。方針変わりすぎ(笑)
自分のやっていくことが、見つかったのは僕をインターン生として受け入れていただいた千年一酒造とこのインターンシップを創り出してくれた淡路ラボのおかげです。やりたいことが見つからなくても、インターンに全力で向き合えば絶対何か見えてくるはずです。淡路島には、そんな若者の全力に向き合ってくれる人が沢山います。
・何かやりたいけど、一歩踏み出せない人
・何かやりたい事を見つけたい大学生
淡路島へレッツゴーです。
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