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黒人ハーフの私が伊集院光の「寿司の件」についてお気持ちを書いてみる


 タレント・伊集院光(55)が20日、フジテレビ系「ぽかぽか」に生出演。番組内での伊集院の発言を疑問視する声が、ネット上に投稿されている。

 同日の放送から、新コーナー「どれ呼ぶイーツ」がスタート。芸人が、人気の絶品グルメを生放送中にデリバリーする企画だ。
 浅草から中継を行ったお笑いコンビ「ドンココ」の大久保裕オーサーオロナ(26)は「ワタナベエンターテインメントのドンココです!」と言ってポーズを決めた。すると同時に「バン!」という破裂音が入り、スタジオは爆笑に包まれた。

 そして「アッツアツのデリバリーを届けさせてもらいます」と言い、「横浜市出身です。親父がナイジェリア人で、お母さんが日本人ですね」と自己紹介。

 するとその直後、スタジオにいた伊集院は「でも彼が寿司運んできたら嫌だなぁ…」と発言し、「関係ないんだけど!」と付け加えた。
2023年2月20日 Yahoo!ニュースより引用

先日2月20日の「ぽかぽか」という番組で上記のようなことがあったらしい。

私はリアルタイムで視聴してはいなかったが、Twitterのタイムラインに流れてきた記事でこの一件を知り、実際の動画を確認した。

それを踏まえて、今回の伊集院氏の発言とその後の謝罪について、私なりの「お気持ち」を書きたいと思う。

先に言っておきたいのは、これは全ハーフおよび外国人の意見でも、直接発言を受けた大久保氏の意見でもないということ。あくまで、アフリカ系の父を持ち、ハーフとして日本で26年生活してきた私「個人」の思いである。

「彼が寿司を運んできたら嫌だなあ」

まず映像での発言を一見して私が直感したのは「これは人種差別ではない」ということだ。

「嫌だ」という言葉の鋭さのせいで自らの人種以外への差別発言であると受け取ってしまいそうだが、私が思うに、私が映像から感じ取る限りは、この「嫌だ」は「違和感がある」という言葉と同等の意味で用いられたものだと感じた。

ここに書くのも醜悪な話題だが、ネットにはかなり昔から「黒人が握った寿司論争」なるものが存在する。要するにこの論争は、非常に悲しいことに「黒人が握った寿司なんて気持ち悪くて食べられない」という人が一定数いるということを示している。

今回の「嫌だなあ」は上に書いたような「黒人が握った寿司」に一部の人間が感じる嫌悪感を表したものとは、まったくもって違った種類だと私は受け取った。

「日本の伝統料理である寿司を、日本人らしからぬ容姿の人間が運んできたら、違和感がある」

かなり勝手な意訳をすると

「日本人ぽくない人が寿司を握って運んできても、寿司のノウハウがわかってなさそうだから美味しくなさそう」

と、いったところだろうか。

これは人種差別というより、ルッキズムの範疇の話になってくる。

ここで大切になってくるのが、発言を受けた大久保氏が「日本育ちのハーフ」であること。

「嫌だなあ」発言の直前に大久保氏は自分が日本生まれで日本育ちのハーフだということを説明している。したがって、伊集院氏を含むスタジオにいる全員が、彼が「外国から来た外国人」ではなく自分たちと同じく「日本で生まれ育った人間」だということを認識していたはずだ。それをわかったうえでこの発言が飛び出してしまった。

この流れは、大久保氏と同じハーフの私にはかなり切ないシーンだった。私も似たようなシチュエーションに数多遭遇している。

どれだけ言葉を尽くして「自分はみんなと同じで何も変わらない」と説明しても、日本語しか話せないことをネタにされる、日本食が好きと言えば笑われ、スポーツが得意だと決めつけられる。まるで自分の言葉が風に飛ばされて相手にまったく届いていないかのように、相手の頭には終始「容姿」の情報だけが残る。

この疎外感は当事者にしかわからないのかもしれない。仲のいい友達にも日常の中で唐突に仲間外れにされるこの感覚。自分の故郷で一生「お客様扱い」される寂しさ。どう話したらこの疎外感は伝わるのだろう。

番組の終わりで放送された

「外国人の方に対する配慮にかける表現がありました」

という言葉に、より一層突き放された感覚が残った。

私がくつろげる家はどこにあるのだろうか。

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