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タカイタカイオババ

毎日、かわるがわる人と会うので、お土産を頂くことが多い。

打ち合わせでお会いする編集者の方、ネットで知り合ったはじめましての人、バイト先に来る出張帰りのお客様。皆、ご丁寧にお土産を下さる。昨日は函館から帰ってきたばかりの人にホッケとカレイの干物を頂いた。ありがたい。

私は人にめったにお土産を買わない。中学や高校の頃は、修学旅行先のお土産屋ではしゃぐ同級生たちに交じってなにか買って帰ったりもしていたが、集団での旅行機会の喪失とともに、お土産を買うという習慣も、私のなかからスッポリとなくなってしまった。お土産を頂くたびに「あぁ、私もお土産を買える大人にならなければ」とは思う。にもかかわらず、毎度旅先で散々はしゃいで疲れ果てて帰ってきたあとに、私は気づくのだった。

お土産買うの、忘れちゃったぁ、と。

私が不義理な人間であることの言い訳は一旦置いておいておこう。

人からお土産を頂いて、大事に抱えて我が家へ持ち帰る。頂くものはたいてい小分けのお菓子であることが多いので、私は家で待つ祖父母にお土産を見せ、祖母はそのいくつかを選んで仏壇に供える。そして、祖母は頂いたお土産をしげしげと見つめて、必ずこういうのだ。

「高いでしょ、これ」と。

このセリフが出ると、私のなかではうんざりとした気持ちと苛立ちが沸々とこみ上げてくる。そして、いつも決まって「知らない」と不機嫌に吐き捨てるのだが、祖母はなおも頂いたお菓子をほじくってモソモソと口に入れながら「高いでしょこれ」と話しかけてくる。私が値段を調べるまでやめないつもりだ。

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「もっと知りたい。こんなとき、貴方になんと伝えようか。もっと聞きたい。貴方はなんて言ってくれるの。」 月2回更新します。

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