子どもの世界（「うつくしい町」より）

小さなこの町の
唯一の小学校には
それまで知らなかった
言葉を使う子どもたちばかりで
なまぬるい転校生は
その強烈さに面喰らう

ろくに車も通らないくせ
自転車に乗ることを禁じられていた
この町の子どもたちは
やけに足腰が強かった

みたことのない朝の行く道　野良犬に会うのが怖かった

みたことのないこの帰り道　年上の男の子に会うのが嫌だった

田んぼの真ん中　あぜ道にひとり
まだ青い苗がゆれ、ゆれ
ぼんやり　ぼんやり
蝉の声を遠くに聞いた

やあい　何が気に食わない
やあい　あたしらどこへ行くかい
あんたが　何に傷つくのか
あたしら　わかっちゃいないんだい

走ってゆく子どもらの背中
単純なはずなのに
田んぼのあぜ道のなか

どうにも抜け出せない

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ZINE「うつくしい町」

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