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17.夕刻の風景

 日中の暑さ故もあって、陽が落ちていく夕方からのそぞろ歩きは躰が暑さから解放され随分楽になるため感性に余裕が生じる。勿論、慣れない国での鉄道移動から無事ホテルチェックイン出来た安堵感も影響している。
 旅行者の特権の一つでもある何も「すべき事が待っていない」夕方を、また、特に明日の決まったスケジュールもない為ただ時間に委ねるだけの過ごし方で楽しむ。
 日没時間がかなり遅いこともあるが、商い関係の店は早々18時には閉じる他は、街は二度目の活動時間帯に入ったように動き出し昼間ポサーダへ向かった道の様相が変わる。

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 散策と云っても到着日の夕方では情報も当然少なく明日から動く下準備を兼ねてポサーダ周辺の位置関係を確かめる程度の歩き方だ。
 ポサーダを出ると丁度夕陽がカテドラルに樹影を落とし日中では見られない風景、居合わせてよかったひと時だ。
 旅行は基本的には「毎日移動」は避けて日程を組んでいる。点と点を繋ぐただ観光地確認はしたくない。スーツケースを開けたり閉めたりの慌ただしい旅行では、このカテドラルのように一日の中で雰囲気を変える姿に出会うこともできない。

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 Evora旧市街地は日本との比較であれば古都京都や奈良に近い街並みである。古い建築を「壊し去らず」現在の生活との共有の姿が歩き始めすぐに現れてきた。その折衷よろしくのデザインは仕方なしという風情ではなくどこまでも自然。流れていく時間と相談した結果のよう。
 観光の顔から生活者の顔が出てきたのか狭い道でも夕方から車の走行が目立って増えた。車の運転は此処Evoraも穏やかで、歩行者が脅かされることはない。元々は車社会ではなかった時代の狭い道に車が走行している為無理があって当然なのだが、此処でもクラクションを耳にしない。

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 行きはポサーダを探し不安な面持ちで通り抜けたジラルド広場にはまるで夜の舞台を作り出すかのように広場に面した店々からテーブルと椅子、Wine等が出始め、風に乗って音楽も耳に入る。観光客だけではなく地元の方も含め三々五々人々が集まってきていた。

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 写真でも伝わるように長めの散歩が終わり丘の上に戻ってくると、薄暮から夜に変わろうとするその中、ライトアップでディアナ神殿が浮かび上がって再度その美しさに足が止まる。
 全てを備えた形ではないからこそ在りし日の姿を想像し魅かれるのか、それとも、その完成された黄金比の成せる技なのか。
 街灯も少なく、周囲に高層の建築物もない為一層夜に存在を示す。

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