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「ギフト 僕がきみに残せるもの」

原題:Gleason
監督:クレイ・トゥイール
制作国:アメリカ
製作年・上映時間:2016年 111min
キャスト:スティーブ・グリーソン、ミシェル・バリスコ

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)のことは一般的なことは知っている。これまでホーキング博士の映画化を二作品観てもいる。当然映画内容を知って今作品観ていながらも涙を止めることが出来ないことが度々。これまで多くの映画を観てきたが館内からこれほどまで嗚咽や泣く音が聞こえたことはない。

 死が待つ難病に罹ったスティーブの物語が辛い映画なのは確かであるのだが、「決して」お涙頂戴ものではないのだ。アメフトの選手で活躍した行動型の人が身体の機能を一つずつ確実に喪失していく話に明るさがないだろうと印象持たれるだろうが、何故かこころが救われる、多くの涙は流れても。

 1500時間に及ぶビデオから起こされたドキュメンタリであっても、実際の生活はそれよりも遥かに長く、volumeがある。彼と彼女の夫婦の物語、新しく家族となった息子を迎えた三人の物語もその大変さの極一部、プロローグに過ぎない。

 けれども、その極一部はエッセンスとして彼の「聡明さ」と過去に拘泥せず「白旗は挙げない」と常に「positiveな姿」を伝えてくる。

 まだ存命の時に自身の在りし日のパントブロック姿の彫像建立に立ち会うことは複雑だったに違いない。映像記録の中でも皆の中にあるヒーロー像と現在の自分のギャップが辛いと吐露するシーンがあった。もし手段があるのであれば彼に「ギャップはカケラもない」と伝えたい。
 彼を取り囲む人々、partnerである彼女を含め、彼を核とした温かな人々が懸命に彼の命を支えている。彼はその「支えられている命」を無駄にならないよう生きている姿が眩しい。

 初めて「DAD」と息子から呼ばれている彼の至福の表情!

 一日一日生きることがこちらの想像を絶する過酷な世界でも、彼の姿は多くの人を励ます。傍に居続けるpartnerミシェルにも脱帽である。
★★★★

 *邦題がギフトになっていることは甘い。確かに何度も息子へことばを遺すのだ、と彼は云っている。しかし、それがこの映画の核ではない。「Gleason」彼の生き様、現在進行系の戦いの姿が映画になっていることをまだ映画館へ行っていない人へ伝えたい。

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