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20.街の概略を掴む

Ⅲ:◇路地
 映画のセットではなく城壁の隙間を車が移動する新旧入り混じった光景。
 城壁内は円というよりも楕円に近く、短い径は1km、長くても1.2kmとコンパクトだ。迷いこんだように見える道もしばらく歩き続けると知った道と交差する為不安なく気の赴くまま歩けるようになる。

 ローマ同様、歩くには問題はないが運転はしたくない道路だ。それでも古(いにしえ)この道を馬車が闊歩する音が響いていたことを想像すると(日本とは違い建物を完全に近代に替えないヨーロッパの街では)目の前の絵がimageの中で容易に中世に入れ替わる。

 夏のこの時期、太陽が頭上にある不健康な時間に歩いているのは地元民ではない為、少し奥まった所に入ると途端に人が蒸発でもしたかのように居なくなる。猫さえいない。
 旧市街地区画にも土産店外に生活に必要な店舗が営業している。白い街並みの明るさとは対照的にそれらの店舗はまるで停電中の営業の様に照明が暗い。狭い通り向こうから見ると閉店のようだ。店舗の前まで行くとシエスタでもなく営業中であることが解る。
 短い滞在中ながら薬局を探す展開になるが、日本でimageするドラッグストアがない。やっと薬局に近い店を見つけて入ってもとても限られた品しか陳列していない。他の店を探そうにも遠目から見て解るようなカラーリングの建物もなければ看板らしき物も殆ど見当たらない。ポルトガル語翻訳を使い、町の人に訊ねようやく二店舗目で希望の品が手に入るが、それさえ棚には陳列されてはいないし、選択肢も殆どないという社会主義国よろしくの買い物経験をする。

 サン・フランシスコ教会は「人骨堂」が有名だが二人とも興味がなく、観光客も少ない時間だったこともありひんやりとした御堂でしばらく静かに過ごす。
 派手さが無いといっても、やはりこの派手さ、と映るのだろう。アイルランドの教会からすると全体に色味があり装飾もまた歴史を伴い層を成す。

 16世紀に建てられたマヌエル様式の美しさだけでも十分に訪れた者を満たしてしてくれる。行く先々の教会で祈ることは、私にとっては様式美や建築法を確認するよりも一番の目的である為、観光地の有名な教会がひと時こうして静けさに包まれていることはとてもうれしい。

 観光施設ではなく市井の教会の佇まいが崩れていないことが好ましい。

 サン・フランシスコ教会の前の写真。宿泊しているロイオスのすぐ近くに警察署がある。朝、その警察署の前を通りかかった時に軽快に自転車(ロードバイク)で出発する警官お二方を見かけた。服装も自転車で活動するのにふさわしいツーリング用軽装。道が狭く、街自体も広くはない此処では顕かに自転車の方が機動性に優れている。

 朝、お見かけしたお二方とお昼近くにお会いすることになった場面。


 


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