「光をくれた人」
原題:The Light Between Oceans
監督:デレク・シアンフランス
製作国:アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド
制作年・上映時間:2016年 133min
キャスト:マイケル・ファスベンダー、アリシア・ビガンダー、レイチェル・ワイズ
感情移入が出来ず困った。館内では涙する気配も感じた、映画後レヴューを見ると評価が中間から上と一般受けはしている。が、レビューを読んでも映画後の印象に修正は効かなかった。脚本に問題があるのでもなく、原作の映画化が上手く出来なかったことでもなく、単に原作の問題が反映しているのだろう、と推察。(只、原作とは解釈を変えた映画化も過去にはあるので原作未読の段階では推察に過ぎない。)
風景はとても美しくBGMのような波音には癒やされながら観る。この一枚はニュージーランドの「Cape Campbell Lighthouse」、オーストラリアとニュージーランドの間の海峡という設定では条件を満たしていないが映像的には問題はなかった。町はセットを造らず実際の道路には砂利を敷き詰め、現代の看板を取り除く、また在るところはファザードで覆い1920年頃を丁寧に再現していた。
予告では触れられていない部分で私は大きな疑問と仮令映画といえども同意できないものが生じ、その場面以降は先に記したように薄い話にこころ乗らないまま映像だけを流し観ることになった。
灯台は二つの大きな海流がぶつかり合う要所に在ると設定されている。勝手な解釈だが光はそのままに「灯台」と「子」を、二つのぶつかり合いは「実母」と「養母」をメタファーにしているのだろう。
問題なのは「独り善がりな」養母になる部分だ。実の子を授かれない悲運が続くと海岸に流されて来た子は「偶然ではなく神の計らい」になるとは溜息を超えて同性として失望しかない。母になろうとする人が同じく子を失った母の嘆きの心境を理解も出来ないとは浅はかすぎる。
一方、年齢としてはイザベルとハナは離れた印象に映ったが、幼い感情的な女性に対し自制が効く大人の女性として対峙の立場を考えると年齢差は話が進むに連れ段々と違和感が消えていった。
イザベルの幼さによる言動にも辟易だが夫であるトムも単に妻を守る善人とは言えないのではないか。トム自身の今で言う戦争で被ったPTSDに依る行動としても私には自己本位にしか映らない。
マイケル・ファスベンダーを意識して観るようになったのは「ハンガー」からだ。時系列とは前後しながらそれ以降彼が出演する映画を観ている。
今回の映画の救いは普段中々お見かけ出来ない「穏やかな」父親の姿。見てはいけない彼のprivateを見てしまったような錯覚。
マイケル・ファスベンダーのこの父親演技に★を。
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