最近よく耳にするようになってきた「会社の統合報告書」ってなに?
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最近よく耳にするようになってきた「会社の統合報告書」ってなに?

「このBARって食べログに載っていないんだよ」

「評価したりされたりするのに疲れた人が羽を休めにくるBARですから」

「変わった柄のシャツを着た店長の話が面白くてね」

品川インターシティを南に下った、京浜運河を望む倉庫街にひっそりと佇むBARアバントには、毎週金曜日の夜になると常連が集まり、喧騒につつまれます。

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バーテンダー:森川さん、いらっしゃい。

森川:今日の湿度は70%を越えているな。ワインじゃなくてモヒートにしてくれる。フレッシュミントたっぷりで。

バーテンダー:えっ、フレッシュミント、高いんですよ。じゃあ、今日はポッキーじゃなくて、プリッツにしておきますね。

森川:さすがモギー、モヒートの爽やかさにはソルティなプリッツが合う。グッドチョイス。

森川さんは「経営情報の大衆化」をミッションにしているアバントという企業グループの社長さん。決してグリコの営業マンではありません。バーテンダーのモギーがフレッシュミントをたっぷりのモヒートを用意したので、いきなり盛り上がっているようです。

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ーー森川さん、これ読みましたよ、フッ。

森川:えー、なにこのカッコいい装丁の雑誌、イケてるじゃない。

ーーなにとぼけているんですか。あなたの会社でつくったんでしょ。

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森川:ハハハ、最近「あの表紙の人だれですか?」って会社でも言われちゃってね。

ーーなんで会社で言われるんですか?

森川:いやあ、みんなの顔写真をシャープな仕事人集団にしようと思ったら、シャープになりすぎたよ。

ーーまじ、『集団左遷』※1かと思いましたよ。

森川:えっ、そんなに福山雅治さん※2に似ているかなあ?

ーーいやいや、明らかに柴田恭兵さん※1のほうです。それにしてもこの森川さんの会社の雑誌、マンガが載っていて、めっちゃ楽しめますね。

森川さんが『私をスキーに連れてって』のころに大学生だったのがわかりました。あと、クラブのママが木村多江さんみたいな幸薄い感じが最高でした。

森川:そんなに読み込んでくれているんだ。その他はどこが面白かった?

ーーその他では・・・・・・、全般的によかったっすね。

森川:(マンガしか読んでねーな。)これは「雑誌」じゃなくて、統合報告書という、投資家に向けて作った公的な文書なんだよ。

ーー聞いたことないですね。

森川:統合報告書は、いま過渡期と言える状況でね。外からしか情報を得ることが出来ない人達に向けて、会社の将来性を知るために役立つ情報を自由演技で発信しているんだ。最近、日本でも大流行で、日経20年末の統合報告書の発行社数は591社って書いてあった。

アメリカでIRをやったとき、実は投資家が財務情報をほとんど聞いてこなかったんだよ。起業の経緯や、経営の方針や理念、これからの成長ストーリーやそれを裏付けるビジネスモデル、そういった定性情報は外部からは手に入りにくいし、投資家にとって重要な情報だと実感したんだ。

ーーたしかにそうですね。

話している経営側からすれば、「いつも考えていること、言っていること」という当たり前の意識があって、その貴重さに気づかなかったところがある。なにも知らない人に話す前提で、こういった情報を整理しようとすると大変だよ。

その時の経験から、統合報告書というものを使って、会社という法的な人格のキャラクター立たせてみようと思ってね。ベンチャー企業への投資などは会社と経営者が一体に近くてわかりやすい。

「ベンチャー企業の何をみて投資する?」と問えば、経営者だよねってなる。しかし、ある程度の規模になると会社に人格のようなものが生まれてくるよね。投資する時に、どんなキャラに投資するかって視点も重要じゃない?

とは言え、まったくの自由演技であるとアートになっちゃうから。そこで、ある程度のルールにそって作成することも重要なので、「価値共創ガイダンス」を使ってみて、その上で、マンガなどの表現方法も使って工夫してみたんだ。これを使って投資家などの外部の人と、質の高い対話をしていけるといいよね。

「価値共創ガイダンス」は経産省のサイトに載ってるから読んでみるといいよ。

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出典:経済産業省:企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス」

ーーいや、僕はいいです。

森川:そんなこと言わずに。読んでみたらなかなか面白いんだよ。

ーー統合報告書なんて、僕が読んで得することってなんかあるんですか?

森川:「価値共創ガイダンス」という言葉、「共創」だよ。モギーだって株に投資しているじゃない。そういう投資家と経営者が企業価値を「共創」するための情報が載っているのが「統合報告書」だよ。

モギーには何回も言っているけど、経営者だけじゃなく、人間は自分だけで自分を律するのってすごく難しいでしょ。でも、格好つけて外に言ってしまったこと、特にすごく信頼してくれる人に対しては「この人だけは裏切れないな」という重みが出てくる。そのときに一生懸命がんばろうと思う。

投資家とか、ESGで考えなきゃいけない「社会的課題」っていうのは、お客様も含めた社会全体への約束だから、数字だけでない企業の活動を知ることで、モギーの投資にもいいヒントがあるかもしれないよ。

ーーでも、こういうフレームワークみたいなものを一律に適用しても企業の実態は見えないような気もするんですが。

森川:そうそう、いいところついてるね。僕が若い頃、コンサル会社に入って最初に衝撃を受けたのは、知識のない若手にフレームワークを与えて、使えるようにしようと試みていたこと。でも、実際にそれを使えた人間はすごく限られていたんだよ。フレームワークをそのまま当てはめようとすると、全然どこにも対応できない。

だけど、自分で深く考えた上で、なかなか通じない部分をフレームワークに合わせて説明することでクライアントと会話が成立したんだよ。これはものすごく衝撃的で、フレームワークはすごく重要だし、いろんな人の知恵が固まったものだけど、使い方がすごく難しいんだなって。

ーーなるほど、フレームワークをいかに使いこなすかですか。

森川:ガバナンスコードとかのフレームワークもそう見えるんだよ。人間ってどうしても、フレームワークに逆に使われることが多くなるものなので。本気で使っていこうとすると、深く考えなくちゃいけない。

うちの会社では、試行錯誤しながら、これは使えるって感じになってきている。取捨選択して、必要な部分がどこかを考えて取り入れないといけないんだけどね。

ーーということは森川さん、どうやって統合報告書を使っていくか、もう考えているんですか?

森川:まずは自分は何者かをさらけ出さないと、それを磨けないよね。「ちゃんとできているじゃん」って言われちゃったら対話から進歩を生むことはできない。そこはむしろ「ちゃんとできていないじゃん」っていうのを見せていく。

突っ込みどころ満載だから、そこから対話が始まって、ここを改善していこうかとか、もしくはこれはいいんだとか、そういった思考に繋がる。だから、統合報告書自体を対話のツールにしようと思っているよ。

突っ込みどころ満載、だけど熱い思いをほとばしらせる。そういう熱い思いが半分くらいを占めるような構成でやってみたんだよ。

ーーだから最初に「情熱の原点と組織のキャラクターに焦点をあてる」って宣言しているんですね。

森川:そう、福山さん※2 にもオマージュしてね。

ーー年齢から考えても『あぶない刑事※3』世代なんだから、福山さんに寄せようとしないでください。(続く)

アバントの統合報告書が気になった方はコチラからダウンロードしてください。森川が経営を志すきっかけが熱く描かれています。

■AVANT統合報告書2020
https://www.avantcorp.com/ir/integratedreport2020/

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京浜運河を望むBARアバントで黒いサングラスにコルトガバメントをぶっ放している人を見つけたら、それは森川かもしれません。「統合報告書で組織のキャラクターをさらけ出すこと」は遠く、厳しい道のりです。いつか約束の地にたどりつくことを祈って。『BARアバントの夜』隔週金曜日更新です。
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※1:江波戸哲夫『集団左遷』原作の映画は柴田恭兵、中村敦夫、津川雅彦出演で1994年公開。バブル崩壊の後、集団左遷されたおじさんたちが派閥争いや起業を通じて自信を取り戻していく姿を描いた佳作。東映の実録ヤクザ路線をサラリーマン活劇にしたと言われている。

※2:TBSの日曜劇場枠で『集団左遷』は2019年4月期のドラマとしてリメイクされた。主演は福山雅治。映画版と違い福山雅治の爽やかさが際立つ演出。

※3:1986年10月放送開始。『あぶない刑事』『もっとあぶない刑事』で合計70本を超えるエピソードが制作されたヒット刑事ドラマ。横浜を舞台にした刑事ドラマだが、舘ひろしと柴田恭兵の軽妙なトークも好評だった。コルトガバメントは舘ひろし演じるタカの愛用の拳銃。バブル後も生き延びて劇場映画も7本制作される。

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語り手 株式会社アバント 代表取締役社長 グループCEO 森川 徹治
編集協力/コルクラボギルド(文・角野信彦、編集・頼母木俊輔)

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アバントは連結会計関連事業、ビジネス・インテリジェンス事業およびアウトソーシング事業を展開し、経営情報を意思決定に役立つ「未来の地図に変えていく」ことを通じてお客様の価値創造に貢献しています。Bar AvantはグループCEO森川がコーポレートガバナンスについて語る場です。