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舞台はダブルベッド

昨日の女優さんはとっても真面目そうな24才劇団員。
育ちの良さが彼女の所作や言動からも滲み出ていた。
普段は警備員のバイトをしながら小劇団に所属しているという。
私はいつものラボエムで蒸し鶏と青ネギのランチパスタを食べながら「将来の夢とかあるの?」って聞いてみた。
すると彼女は急に目を輝かせて「舞台女優になりたいんです。」と、カルボナーラのクリームソースが付いた口元をナプキンで拭いながら答えてくれた。
年に3回の公演のために日々稽古に励んでいるのだという。
そんな彼女の話を聞いていると、昔私がバンドをやっていた頃を思い出した。
私は当時バンドをやりながらいろんなバイトを掛け持ちしていた。
居酒屋の店員、ペンキ屋、工場、ビデオ屋店員、そしてAV男優などなど・・・。
夢を叶えるためにはどんな仕事でも割り切ってやっていた。
とにかくバンドの練習や音楽に費やす時間を最優先するために、短時間で稼げる都合のいいバイトだけを探した。中には危険でキツい仕事もあった。その中でも最も適していたのがAV男優というバイトだった。今は本業になってしまったが・・・。

昨日の女優さんもおそらく当時の私と同じ理由で警備員とAV女優を選んだのだと思った。
しかも彼女の場合AV女優という経験が舞台女優を目指す上で決して無駄にはならないという点で
当時の私の選択をはるかに超えたベストチョイスであることは間違いなかった。

昨日の企画はナチュラルなだけに難しい演技を要求されるものだった。
それを彼女は見事完璧にこなしていた。
まだ現場2回目だというのに、その演技は細かい心理状態までも見事に表現できていた。
つまり演技をしていない。自然体なのだ。
さすが劇団員!
監督も絶賛だった。
彼女が舞台で輝く姿が目に浮かんだ。

そして絡みシーンは更に最高にナチュラルな演技?を披露してくれた。
私的にはそれが演技であって欲しくなかった。
せめてその瞬間だけは本気だと思いたかった。
しかしそれが本気なのか演技なのか?
もう、どちらでも構わないと思った。
その瞬間だけでも騙されていたいと思えた。
男と女は所詮男優と女優。
騙し騙され、愛し愛されごっこが日々繰り返されている。
そう、人生というドラマの縮図こそがAV現場なのかもしれないと思った。

※この日記を書いたのは13年程前である。
当時舞台女優を目指していた彼女は今どうしているのだろうか?
残念ながら顔さえ覚えていないのでそれを確かめる術はない。
まだ夢の途中なのかもしれない。
でもきっと幸せな人生を送っているに違いない。
そんな気がする。

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