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強制休暇の楽園

小笠原諸島には昔から一度行きたいと思っていました。単純に離島が好きなのもあります。自然が魅力的だし、海も綺麗だろうし、クジラも見れそうだし、なんせ世界遺産。もちろんそういうのもあります。

ですが、小笠原諸島に対して私が最も魅力的だと感じているのは、

最低でも6日間は帰ってこれない

というところです。


東京・竹芝埠頭から小笠原諸島・父島までフェリーで24時間かかります。飛行機は飛んでいません。行き帰りだけで確実に2泊、船中泊です。そして帰りのフェリーは3日後にしか出ませんから、何があろうと島に3泊することになります。それが最短です。

これはもう、のんびりするしかありません。戻る手段がないのです。休暇中に仕事でトラブルが起こるかもしれませんが、対処なんてできません。だって戻る手段がないのです。ヘリコプターでもチャーターしてくれるんですか? まさかね〜笑。

しかも、天候が悪ければさらに滞在期間が伸びるかもしれません。しょうがないですよ海が荒れてるんですから。ヘリコプターも飛ばないかもしれない。

私のように気が小さくて金もない小市民を強制的に隔離して休暇を取らせる楽園、それが小笠原諸島です。できれば将来的にも飛行機なんて飛んで欲しくない。ポツンと太平洋です。不便です。だから良いのです。


ですが、最近あることに気付いて、私の脳内が大騒ぎになっています。

私は腎臓が悪く、近いうちに人工透析になるだろうと言われています。ふと気付いて調べました。小笠原諸島には透析設備がありません。透析なしで6日の強制休暇は、休暇どころの騒ぎではなくなります。下手すると命に関わります。

つまり、まだ透析になっていない今しか行くチャンスはありません。透析が始まってしまったらもう一生、小笠原の土を踏むことはできなくなります。自分の臓器とはいえ、いつ増悪するかなんてわかったものではないのです。明日増悪して透析開始になる可能性もあるのです。


そんなわけで、ここ数日意味もなくそわそわしています。そして、暇があれば小笠原諸島の情報を検索しています。今から計画を立てたとしても、間に合わない可能性はあります。

戻る手段がないのは当然リスクでもあります。起こるのは仕事上のトラブルだけとは限りませんし、そもそも現状、私自身が一番のリスクです。

ただ、間に合わなかったとして、「もし飛行機で行けたら行きたいか?」と問われると答えはやはり"No"な気がするのです。小笠原諸島はずっと「強制休暇の楽園」であって欲しいのです。もちろん、個人の勝手な願いではあります。

どうするかは未定ですが、当分はそわそわしていると思います。

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