思春期とビッグブリッヂの死闘

思春期に聴いていた曲はいくつになっても好きなのだという。昭和の名曲!のような番組を未だにやっているのはそういう背景もあるのだろうか。音楽に限らず、思春期の経験は鮮烈に残るものだ。多感な時期の経験は、些細なことでも大きな変化をもたらす可能性を持ち合わせている。

音楽の話に戻る。思春期に聴いていた曲、それは僕の場合「ビッグブリッヂの死闘」になる。正真正銘、ファイナルファンタジーVの「ビッグブリッヂの死闘」だ。行きたくもない部活に行くため、毎朝ガラケーから鳴り響くビッグブリッヂの死闘に起こされていたのだ。
ビッグブリッヂの死闘が、というよりゲーム音楽が好きだったのだ。むしろそれしか好きではなかった。「歌」ではなく「曲」を聞きたい、そしてボーカルの人間がうるさいと本気で思っていたのだ。
周りが好きなアーティストやら好きな歌の話をしていた時期、僕はゲーム音楽に没頭していた。オタク・カルチャー的にはボーカロイド楽曲が盛り上がっている年代であったが、僕はひたすらにゲーム音楽を聴いていた。メイウェザーさながらの熱意。お前らが休んでいるとき、お前らが寝ているとき、俺はビッグブリッヂの死闘を聴いている。僕は間違いなくオタク側の人間であったのだが、ボーカロイドやアニソンなど、そういう露骨なものにハマることに対してやたらと抵抗感があったのを覚えている。今思えばめちゃくちゃ面倒くさいガキだった。名誉の逆張り、ああ思春期。そんな僕の逃げ先がゲーム音楽だったのかもしれない。

その後、僕はビッグブリッヂ以外のFFの楽曲にも魅了されていくことになる。PSPのFF4コンプリートコレクションを買って「バトル2」のベースを歌ってみたり、FF6の「妖星乱舞」のを1日中聴いていたりしていた。今思えば病的だ。「妖星乱舞」は第2楽章が一番好き。
その次に目を付けたのはロマンシング サ・ガだった。出会いはおやつ氏の「閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」だったと思う。伊藤賢治氏の楽曲は素晴らしい。生の四魔貴族バトルを聞くためにバーチャルコンソールでロマサガ3を買い、七英雄バトルのために買ったロマサガ2は難しすぎて詰んだ。そう、この頃の僕はBGMを聴くためにゲームをプレイしていたといっても過言ではなかった。
僕は全くスーファミ世代ではない。だが、やはりスーファミの音は言葉では言い表せないデジタル・ノスタルジックを感じさせてくれる音だ。FF6あたりの曲を聞いてもらうと分かるかもしれないが、SFCの楽曲は独自の重厚感がある。
ちなみにPS1の音源もなかなか好き。FF7の「星降る峡谷」とか、FF9の「ローズ・オブ・メイ」、「破滅への使者」とか、好きな曲はたくさんあるのだが、PS1の音源として聴くならばFF8で極まったかなと思っている。「Force Your Way」とか「The Man with the Machine Gun」、「The Extreme」など、スピード感ある曲調と音が絶妙にマッチしていて最高。あと「Fisherman's Horizon」がありえないほど良いのでぜひ聴いてみてほしい。

FF8の戦闘曲はFF14で割と壮大な感じにアレンジされていたのだが、僕は原曲のほうが好み。というか、基本的に原曲を超えるアレンジなんて存在しないと思っている。FF3のクリスタルタワーだってFC版がいちばん良い。FF2の反乱軍のテーマとかも。

スクウェアの全盛期とも呼べる時代をしゃぶり尽くした僕はその後、東方projectの楽曲にハマり込んでいくことになる。ゲーム音楽が好きな人間は必ず通る道だろう。最早必然の理だ。今でも「月まで届け、不死の煙」を聴くとあまりのノスタルジーに精神が四散しそうになる。確か神霊廟の頃くらいまでを追っかけていたのだが、全盛期はイントロだけでどの曲か分かるほど聴き込んでいた。こちらでも原曲厨だったのでアレンジとかはあんまり知らない。普通にオタク。めちゃくちゃに気持ち悪いです。
ちょっと逸れるが、東方に影響を受けたと言われるUndertaleの曲も強者揃いだ。正直ストーリーは全く好みではないのだけど、「Battle Against a True Hero」や「Hopes and Dreams」は紛うことなき名曲。

だがここまでの話に反し、生まれて初めて手にしたCDは「交響組曲「ドラゴンクエストV」天空の花嫁」だった。DQIVのオーケストラに行った際、何故かDQVのCDをねだって叔母に怪訝な顔をされたのを今も覚えている。まあ、当時は丁度DSのDQVが発売された時期だったはずなので、そちらにハマりこんでいたという理由はある。僕はFFファンボーイになる前、DQファンボーイだったのだ。どっちも好きだよ。

今では色んな音楽を聴くようになったと思う。当然自分の中のブームがあるので何でも聴いているという訳ではないが、一時期は無限にB'zを聴いていたし、ちょっと前は2011〜2015年頃のボカロ系を聴き漁っていた。友人たちに良かった曲をいくつか挙げたら笑われた。みんなにとっては青春の一部の、思い出と化した曲たちだったのかもしれないけれど、僕にとっては新鮮な1ページだった。なんだか得した気分でちょっとうれしい。
そんな今でも、たまに「ビッグブリッヂの死闘」を聴きたくなるのだから、
思春期に聴いていた曲はいくつになっても好きという話はたぶん、本当のことなのだ。


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