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【ピアノ日記】フジコ・ヘミングさんのドキュメンタリーを見て

昨夜NHKで、先月亡くなったフジコ・ヘミングさんのドキュメンタリーをやっていたので、何の気無しに見始めた。
その番組で初めて知ったのだが、もし逝去されなかったら、フジコさんは今頃海外ツアーの予定だったらしい。しかもリストのピアノ協奏曲を弾くはずだったとのこと。ものすごいバイタリティだし、本当にピアノが好きだったんだろうなぁと、頭が下がる思い。

見始めたら止まらなくなってそのまま最後まで見続けたけど、亡くなる1ヶ月ほど前にフジコさんが病院のピアノを弾いたという場面で、胸がいっぱいになった。
病気が進行して、耳がほとんど聞こえない、目もほとんど見えない中で、病院のピアノを手探りで弾くフジコさん。
あー、これはシューベルト即興曲90-3を弾こうとしているんだな、、、と思っているうちに、フジコさんが子供の頃弾いていたというモーツァルトのソナタに変わり…
それがフジコさんがピアノを弾いた最後。

最後に弾いたのがモーツァルトだったというのが、モーツァルトの音楽のすごさを表してると思った。モーツァルトの曲って、なんというか、人間が最後に帰る、根源的な音楽のような気がしてしまうのです。
そして、意識も朦朧としている中、鍵盤を探りながらたどたどしく弾くフジコさんの演奏が、どんな名ピアニストの演奏よりも心を打った…。
なんか、人間ってすごいと思った。人が生きている輝きを見せてくれたと思った。

フジコさんが、最後に意識も記憶も朧げな中で、本能で演奏した曲がモーツァルトだったということ。それが、うまく言えないけどこの世界のすごさ、人間のすごさ、時代を超えて魂が作曲家と共鳴することのものすごさ、そんなことを表しているように私には感じられて、なんだか神秘的にすら思えて、涙がしばらく止まりませんでした。

そしてやっぱり、クラシック音楽は一生かけて追求するもの、人間の深い部分と結びついているものと思いを新たにしました。私もアマチュアとは言え、音楽を通して自分を表現できる素晴らしさ、ありがたさを忘れないようにしようと思いました。

フジコさん、NHKさん、ありがとう。

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