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人間たちが見習うべき赤い髪の鬼のことを考えていたら、隣の鬼が鬼みたいだった。

赤い髪の女性がいた。

彼女を初めて見た時は、ガールズポップを明るく歌いあげる女の子、という印象だった。

数年経ち、ある大ヒットアニメを歌う彼女を見た時、僕はこう思った。

鬼だ。
鬼が歌っている。

この鬼というのは、ジャイアンがのび太に行う所業とは別のもの。

桃太郎たちが惨殺した鬼の生き残りで、人間の気持ちも、鬼の悔恨も理解しているパターンのやつである。

なんて健気な鬼なんだ。

その鬼の名前はLiSA。
世にもかわいい愛され系の鬼である。

ステージ上で愛らしさとカッコよさと心強さを兼ね揃えたキュートな鬼は、悲しみと激しさを孕んだ圧巻のパフォーマンスをフランス料理のようにふるまう。

けれどステージを降りた鬼は、100万回の愛しているに匹敵する笑顔を僕たちに見せる。

そして自分がディズニーランドを作ったかのように楽しそうにしゃべる。

なんて素晴らしい鬼なのだろうか。
これ以上の鬼は見たことがない。

世の中いろんな人間がいるけれども、みんなLiSAのような鬼を見習うべきである。

そんなLiSAを見て、僕は100万回の愛しているを言おうと決意したのだが、ふと、どこからか視線を感じる。

…隣だ。

隣にいる嫁という名の鬼が、まるで鬼みたいに睨んでいるような気がする。
僕の泥試合のような決意を読み取ったのだろうか。

僕はそっと決意を消した。

無念である。

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