見出し画像

私が若いころの公共トイレ

 先日、何人かの若い女性に、私が若い頃、10代後半から20代にかけての街中や駅の公共トイレやデパートなどのトイレは、男女別ではなかったとの話をしたら、「えーっ、そうなんですか」と、驚かれました。さらに、いま、女性たちの要求が実現してせっかく男女別になったトイレが、再び、男女別ではない「ジェンダーレストイレ」なるものに変えられようとしています。いや、東京などで新しく作られる公共トイレは、男女別ではなくなっていると伝えたら、さらに驚いて、「えーっ!」となりました。
 経験していない人には、なかなか実感がわかないかもと思い、共有するために、図解してみました。

 ほんとに嫌な体験でした。混んでいるときは、老若多くの女性たちがいたから、目をつぶって列に並び、順番が来た時にはなるべく男の背中が並んでいる方向を見ないように、時にはカニ歩きして個室へたどり着きました。だーれもいなそうなときは、入り口からそーっと覗いて、男性用小便器の前に男がいないことを確かめて、急いで個室に入りました。で、誰かが入ってきた気配がしたときは、出て行った気配がするまで、個室で待機していました。
 当時は、盗撮ができるような機材はなかったけど、個室トイレの壁に穴がいているのも、よく目にしました。その穴を塞いだ後も……。
 今は、誰でも盗撮が容易に出来ますね。

  今年、2月はじめに台湾へ行きました。帰国便の待ち時間、桃園空港のイートインにあるトイレにいくと、なんと男が長い行列を作っていました。そう、いわゆる「ジェンダーレストイレ」=男女共同便所になっていたのです。空港という場所柄、デカい西洋人の男が並んでいて、とてもそこに並ぶ気はしなかったので、遠くの女性専用トイレまで行きました。

 私は「女だから、こうしろ、ああしろ」と言われるのが、ほんとうに嫌で、自分の好みや興味にあることを、好きなようにやってきたし、両親もうるさく言うような人ではありませんでした。服装にしても、当時はあまり女性が着なかったジーズも履いたし、ジーンズの上着は女性用がなかったので、男児用のいちばん大きいサイズを手に入れて着たりしていました。  
 だからといって、常に、男性のような服装をしているわけではなく、女性性を強調した服装が嫌いなだけで、普通にワンピースも、スカートも身につけます。
 ちなみに、ホテルオークラやニューオータニなど、開業したばかりの当時は高級とされていたホテルの入り口には、「女性のスラックスはお断り」というようなプレートが立っていた時代です。裾が広がった女性用のスラックス(今はパンツと言いますね)を「パンタロン」といって、ヨーロッパから入ってきた流行の最前線とも言えるファッションでも、入れませんでした。
 そのくらい「女」であるが故に、「こうしろ、ああしろ」という規範がひどい時代でした。にもかかわらず、トイレは男女別でなかった、つまり、女に対する規範は、女のためではなく、男のため、男の趣味とか、性的嗜好のためだったわけです。

 まあ、服装の好みは人それぞれなので、お好きなようにとは思います。でも、女性の服装を好む生得的男性の服装は、ほとんどの場合私は好みません。なぜならば、女性を性的対象として強調するようなデザインだからです。たとえば、露出が多い、ボティコンであるみ、極端なハイヒール、真っ赤な口紅や舞台化粧のようなアイメーク……。

 公衆トイレの男女別を維持してほしいとか、女性限定スペースに生得的男性が入ることを認めないでほしいとか主張すると、あたかも、保守的な、つまり、男女の社会的に作られた規範を守るべきだと言っているかのように言われるようですが、それはまったく違います。

 私から見れば、ジェンダーレストイレを望む人びとの方が、男女の社会的規範を守るべきだと言っているように見えます。たとえば、男の趣味とか、性的嗜好によって作られた「女性的な服装」を好むひとたち……。

男が望む女性像を作り上げるためのファッションを批判的にとらえ、指摘した画期的な本。
マドンナやレディーガガを好ましく思っていなかったので溜飲が下がった。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?