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「酵母エキス」—自然には存在しないもの。

 自然食品店に売っている加工食品も、近頃では豊富になって、カレールウだけでなく、レトルトカレーもあるし、お総菜、冷凍食品・インスタントラーメンだってあります。いちおう食品添加物、たとえば、保存料・着色料・増粘多糖類・蛋白加水分解物・化学調味料などは使われていません。ところが、どういうわけか、そのほとんどに、「酵母エキス」というものが使われています。
 私はいつの頃からか、たとえばインスタントラーメンの中でも、もっともいろいろな物が入っていないのに、かなりの完成度であると思っているインスタントラーメンを食べたあとに、何か口の中にいやな後味が残って、食べなければよかったと感じるようになりました。
 一体これはなんのせいだろうと、最初は分からなかったのですが、レトルトカレーなども同じ後味を感じたり、インスタント味噌汁でも……と確認していくと、共通しているものは「酵母エキスだ!」ということが分かったのです。それは、昔、添加物まみれのカップラーメンなどを食べたときと同じ後味です。
 そこでいろいろ調べていくうちに、「酵母エキス」の問題点が分かってきました。
 いちばんの問題点は、こんなものを食べていたら、大切な味覚を失ってしまうこと。野菜には、得も言われぬ甘みや苦み・酸味などがあるのです。それを、ほんの少しの自然塩で引き出した時のおいしさは、格別。この繊細な味覚を失いたくないと思ったら、他の人びとにもそのことを伝えして、「酵母エキス」をやめようと言わずにはいられなくなりました。
 こうして、私が経営していた自然食品の店「あらいぐま」では、「酵母エキス」を使った加工品を、いっさい扱わないことにしました。
 数か月の準備期間の後、以下のようなお知らせを、店のPRニュースレターに掲載しました。

自然食品の店「あらいぐま」だよりより。


 自然食品の店「あらいぐま」に売っている加工食品には、「化学調味料」(代表的商品名「味の素」) を使ったものは、いっさいありませんと、お伝えしてきました。現時点でも、それは確かにその通りです。かつて、「化学調味料」といわれたものは、現在では、「うま味調味料」と名を変えましたが、うま味の元となる物質(グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸) を精製した調味料のことで、原材料表示では「アミノ酸等」と表示されています。
 ところが、1970 年代以降、従来の「うま味調味料」だけでは作れなかったコクや自然なうまみを作ることができるものとして、「タンパク加水分解物」というものが、出現しました。それは瞬く間に日本の加工食品に取り入れられ、現在、スーパーなどで売られているものには、たいてい使われています。一部自然食品の中でも使われている製品もありました。
 化学的に生み出された白い粉を、いろいろ組み合わせれば、豚肉や鶏肉を使っていなくても、豚骨味も、チキン味も、どんな味も出来てしまう「魔法の粉」であることは、元食品添加物を売っていた阿部司氏が、著書『食品の裏側』で紹介しました。数年前には、この目黒にもおいでいただき、実演もしていただきました。
 さらに、阿部氏はその著書の中で、重大なことを発言しています。この「タンパク加水分解物」によって、子どもたちの味覚が壊れてしまっているということです。化学的に作られた濃厚な味を、おいしいと感じてしまい、本来の野菜や天然の出しの味など、繊細で淡泊な、しかし深い味わいのある味が、分からなくなってしま
うのです。いわゆる味覚というものが麻痺してしまうというのです。
 しばらく前に、阿部氏のこの著書がベストセラーとなった結果、自然食品業界でも、それまで使われていた「タンパク加水分解物」の使用を、やめるようになりました。
 代わりに出現したのが「酵母エキス」です。

「酵母エキス」ってなんだろう?
  酵母エキスなんていう名前が付いているからあたかも天然自然のものみたいですが、実際はそうではあり
ません。ビールの製造過程で出る廃液の酵母など、元々は産業廃棄物だった食品の残りカスに含まれる蛋白
質に、酸や酵素などを加え人為的にアミノ酸を作り出した調味料です。現状では、食品添加物として分類され
ていませんが、これを食品というのは、あまりにも……です。
 いわば精製一歩手前の状態なので、「化学調味料」といわれないだけのものと考えていいと思います。

「酵母エキス」製造過程には問題がある。
  製造過程は明らかにされていませんが、人為的にアミノ酸を作り出すわけですから、何かをしなければなりません。たとえば、ビールの廃液は苦みがあります。その苦み成分を取り除くために、水酸化ナトリウムが使われ、そのアルカリを中和するために塩酸が使われていることもあるようです。
 また、以下のようなさまざまな問題点があります。
 ①酵母菌からエキスを作るために、酢酸エチルを使う。
 ②原料の酵母菌にも、X線・紫外線・ガンマ線・化学物質などの突然変異誘発物で、突然変異させている。
 ③酵母の培養に肉汁やグルタミン酸ナトリウムを原料とした培養液を使う。
 ④酵母エキスを酵素分解をする場合、その酵素の製造方法が不明。

どう考えても、自然食品に「酵母エキス」を使うのは、間違っている。
 冒頭で、自然食品の店「あらいぐま」では、「化学調味料」を使った加工食品はありませんとお伝えして来
たと述べました。
 では、「酵母エキス」はどうなんでしょう? 
 「酵母エキス」は、本来の味覚を壊さないのでしょうか? いいえ、やはり「タンパク加水分解物」と同じよ
うに、味覚は壊れます。逆に、それらを極力、口にしないで何年か経つと、食べた時の後味の悪さが分かるようになります。
 自然食品も最近はさまざまな加工食品やインスタント食品、レトルト食品が増えてきました。一見、スーパー
やコンビニにあるものと同じように見えるものが、いろいろあります。それらも、「酵母エキス」は使っていても、その他の保存料や訳の分からない食品添加物は使っていません。しかし、「酵母エキス」は、けっして自然の素材の味ではないし、むしろその味を壊してしまうものだと思います。

出しを取るのは簡単なこと。でも、料理の決め手は、「出し」じゃありません。
 水に昆布を入れて10 分ほど置いたのちに、その水の味を見てください、おいしい昆布の味がします。
時間がなければ、煮物を作るときに、昆布を一緒に入れても構いません。でも、出しがなくても、無農薬の
おいしい野菜と昔ながらの手作りの醤油ならば、充分においしい煮物は作れます。
 「料理は出しが決め手!!」なんて、人工的に作られた「だしの素」を売るためのコマーシャルトークに過ぎ
ません。私たちが作るのは、毎日のお総菜です。どんな作られ方をしたか分からないものを避けて、出しが
必要なら、目の前で水に浸けて旨みを出したものを、使いたいと思います。

超簡単! 昆布&椎茸だしの取り方
 1ℓくらいの麦茶などを冷やすガラス容器(空き瓶でもOK)に、昆布10㎝角1 枚・干し椎茸2 枚(小さめなら)を入れ、水をいっぱいに入れて一晩おく(冬は常温、夏は冷蔵庫)。
 前日に忘れたときは、料理に取りかかるいちばん最初に、鍋に500CC の水を入れ、昆布を入れてごく弱火にかける。鍋肌に泡がポツポツついてきたら火から下ろしておく。別の鍋に800CC ほどの水を入れ、干し椎茸を入れて、中火にかけ沸騰させながら、水が500CC ほどになるまで煮出す。

タイトルの写真は、ある日の食卓。2013年6月。

沖縄に来て最初に買った車。東京・目黒にあった店の看板データーを使って、
シールを作ってもらった。今はもうない。

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