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可愛い子には旅をさせよ①

ずっと、ここではないどこかに行きたかった。

そうすれば、新しい何かを見つけられて、息がしやすくなって、新しい景色を見られる。

そう信じて目の前のことを耐えるしかなかった時が長らく続いた。

そう思うことで自分を必死に保っていたのかもしれない。


リゾートバイトに行こうと思った時、私は高校生だった。

当時、母にその旨を伝えたところ「女の子がひとりで行くのは危ないから辞めなさい」とのことだった。

今は、その気持ちも十分に理解できるようになった。

しかし、高校生の当時の私には何を言っているのか全くわからなかった。

というか、自分のやりたいことを否定されたような気持ちになり落ち込んだ。

結局、私のやりたいことは大人になってからしかできないのか。

母がそういう理由も、当時の私にはわかっていた。

これは家庭環境が絡んでくるのだが、その理由として捉えているものも、あくまでも私の一意見だし、家族のことを詳細に話すのはここでは控えたい。

とにかく私は旅に出たかった。

新しい世界を見たかったからだ。
世界がどうなっているのかを知りたかった。

中学生の時、人生で初めて一人で美術館に行き、大きなアンディウォーホルの作品を見た時には、なんと言い表して良いのかわからない気持ちになった。

作品の大きさに圧倒されたことも、
カラフルな色使いに感動したことも、
一人でこんなものを見にこれたという達成感もあった。

カラフルなものが好きなのは昔から変わっていない。

美術館に行くのは良しとされていたので、いろんな展示を見に行った。

毎回、世界が広がるような気持ちになったのだ。

大学の進路選択ではファッション系に行くか旅で現地の人の文化に触れることができる観光文化系に行くか悩んだ。

私は、放浪するような旅に出たい。

結局どちらの学部も受け、観光系の学部には受からなかったのでファッション系に進むことになった。

大学に進学すると、私の「普通」は音を立てて崩れる。

ここでも新しい世界が広かったのだ。

私が今まで着てきた周りから眉を顰められるような服は、ここでは褒められる。

私が憧れていた髪色は、ここではみんながやっている。

とにかく、自由なんだと気づいた春だった。

自由には責任が伴うと気づくのはもう少し先の話だ。

大学卒業を控える頃には、また就職するか否かで人生の岐路に立つことになる。

とにかく就活がしたくなかった私は、リゾートバイトに行くと決め、就活の準備に関しては、何もしなかった。

塾講師のバイトやカフェ、ピアス屋さん、アパレルのバイトをその時々で掛け持ちしながらいろいろなアルバイトをして過ごした。

ようやく卒業をして、旅に出られることになった。

女の子が1人で行くのは危ないとの母の忠告を守り、当時お付き合いをしていた人を引き連れて北海道に向かった。

続く

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