石井栄造

石井栄造

最近の記事

DaybyDayインタビュー

同じ対象者個人に翌日も同じテーマでインタビューする方法をDaybyDayインタビューとし、発表したのは2010年のことです。 きっかけは、夫婦喧嘩、飲み屋での議論、上司の説教、など白熱した会話のやり取りの後、「ああ言えばよかった」「こう切り返すべきだった」と後悔・反省して眠れない夜を過ごしたことがあるとする人がたくさんいたことです。 さらに、「そうか!相手は実はこのことを言いたかったのかもしれない」「自分は案外そのように考えているのかもしれない」と自分の認知そのものの組替えに

    • 世代論の終焉

      あまり、めくじら立てることではないが、Z世代を主語にしたコメントはしない方がよさそうである。 ニュースやネット記事ではキャッチーな表現で済むが、マーケティングレポートでZ世代を主語にするのは「無能の証明」と言える。 <世代論の期間とボリューム> 世代論の元祖、団塊の世代の出生数は800万人近い。 この人数が1947から1949年の3年間に生まれ、成長していったのだから、特に個性がなくてもひとつの塊とするだけで個性感がでてくる。 Z世代は1995~2009年に出生のコーホートと

      • カスタマージャーニー

        <カスタマージャーニーの目的と効用> カスタマージャーニーはダイナミックなPDCAサイクルを確立することを期待して作成される。 期待のひとつは、カスタマーの「きっかけから購入」までを旅程(ジャーニー)として分割し、その間の態度変容・感情変化を時系列に記述することで消費者心理の動きをわかろうとすることである。 もうひとつは、タッチポイントのそれぞれに自社のマーケティング施策が届いているか、ヌケはないか、それぞれの施策の効果が測定ができることである。こうしてPDCAサイクルを回し

        • ラダー図からペルソナ

          前回、レパートリーグリッド発展法、評価グリッド法、ラダリングの考え方と使い方を述べた。 今回はラダリングのラダー図の使い方を詳しく述べる。前回同様、ライトウェイトスポーツカーの開発プロセスをとりあげる。 <開発プロジェクト> ベストセラーのユーノスロードスターとCRXデルソルの比較価値分析することでスポーツカーの新ブランドを開発したい。(30年前) そのための調査として両車10人ずつ20人のオーナードライバーに1on1インタビューを行い報告した。 この調査を含め膨大な予算と時

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          評価グリッド法再考

          最近、分析事例を聞かないようだが、評価グリッド法は定性調査の方法論として数少ない確立された方法論である。 ここで再認識してみる。 <評価グリッドの歴史> 評価グリッド法の歴史の始まりはG.A.Kellyのパーソナルコンストラクト理論(1955)にあると言われている。この理論は「個人はその人の経験を通じて作られたコンストラクト・システムと呼ばれる固有の認知構造を持つ。この構造をもって環境や出来事を理解し、結果を予測しようとしている」とするもので、感覚器が環境情報を捉え、つまり知

          評価グリッド法再考

          脳・AIハイブリッド

          ERTO 池谷脳AI融合プロジェクトはBMI(Brain Machine Interface)のMをAIに置き換えることであろう。 マーケティングの脳科学応用は失敗が多い。ここで、マーケティングへの脳科学とAIのハイブリッド活用の途を妄想する。 <ニューロマーケティング> 2000年に入ってから脳科学が急発展した。特にfMRIのデータ活用によって脳の各部位の機能特化の分析が大きな流れになった。 極端に言うと消費者の購入意思決定は脳のある部分が発火するかどうか観察すれば決まる的

          脳・AIハイブリッド

          チェルシーは売れた(はず)

          4月3日のセミナーでチェルシーのブランディングの状況を分析し、終売の意思決定の妥当性を分析した。 終売でなく「どこかに売った」方が消費者ニーズに合致していた、もったいない、買うメーカーはあったはずという結論になった。 <リエゾンインタビューでわかったチェルシーの完成されたブランド> 女性2人のリエゾンインタビューからわかったこと。 ブランディングは完成され強化なもので、硬直性はなく状況の変化に対応してきたフレキシブルなものであった。 食用TPOも確立していて頻度は多くないもの

          チェルシーは売れた(はず)

          「晴れ風」と凱風快晴

          4月2日にキリンがビールの新定番と銘打って発売した「晴れ風」。 このネーミングの背景をリバースエンジニアリング的に探り、マーケティング的批評を試みる。 パッケージデザインとネーミングだけを頼りに振り返る(CMその他は参考にしない)。 <晴れ風のコンセプトをリバースする> 特徴は水色のベースカラーに「晴れ風」が白抜きであることであろう。この点だけ見ればビールではなく清涼飲料のデザインといえる。 上部の金色の聖獣マークと中央を横切る金地に黒文字の「KIRIN BEER」を大きくデ

          「晴れ風」と凱風快晴

          対幻想を解明する

          10年くらい前からだろうか、n=1分析の有効性が言われ、実例も多く出て来るようになった。たったひとりの分析が一般性を持つわけがないという統計理論からの非難は完全に無視である。ここで、n=2分析、リエゾンインタビューの可能性をさぐる。 <神は細部に宿り給う、またはフラクタル> n=1分析の正統性を保証しようという理論はない。実施してみて「使える」ことがわかったから使い続けるということである。 文学、芸術の世界ではある作品ひとつがその時代を象徴したり、代表することはあるが、マーケ

          対幻想を解明する

          新手法が体験できる

          4月3日実施の第29回「アウラ・コキリコセミナー」はマーケティング症例研究の第一弾として「チェルシー終売」をテーマに取り上げる。 マーケティング症例研究として、CHELSEA終売の原因・理由を仮説的に検討し、現ユーザーにリエゾンインタビューを実施し、CHELSEAブランドのブランド力の構造分析・リバースエンジニアリングをおこなう。 そこから、CHELSEA終売の代替戦略を検討する。http://www.auraebisu.co.jp/ <CHELSEAブランドの現状仮説> 以

          新手法が体験できる

          リバースエンジニアリング

          この30日でロングセラー明治チェルシーが終売になるニュースが2月に流れた。そこでチェルシーのブランディングをリバースエンジニアリングすることを試みた。なお、明治さんの許可はとっていないのでこちらの勝手なわめきであることと、ソースはホームページのデータのみであることを断っておく。4月3日の「マーケティング症例研究」で詳しく述べる。                    http://www.auraebisu.co.jp/ <教科書通りの市場導入戦略> HPによると1971発売

          リバースエンジニアリング

          新手法:リエゾンインタビュー

          2018年にリエゾンインタビューという方法論を開発したまま放置していた。 ここで、改めてリエゾンインタビューの有効性を紹介したい。 <インタビューが抱える2つの困難> 1on1インタビューでは、モデレーターが質問者、対象者は回答者との役割分担が自然にできてしまう。これは先生と生徒のような上位者、下位者の関係であり、詰問されてる、尋問されているとの負の感情が対象者に湧き上がる。 この状況は対象者を萎縮させて無難な回答しておこうとの意識を生む。モデレーターはモデレーターで、フロー

          新手法:リエゾンインタビュー

          症例研究スタート

          マーケティングの症例研究会を始めます。 MBAで行われているケーススタディよりも簡便、タイムリーな研究会。 MBAはとりあげるケース企業の了解を得てある、社内データも提供してもらっていると思われる。 内部データがあると分析にリアリティが出るが、当然、過去のデータでタイムリー性はない。 我々は、タイムリーさと教科書的でない分析をめざして「マーケティング症例研究会」をスタートさせます。 <症例研究とは?> ググったら「個人の病気または症状を、可能な限り正確かつ包括的に記述、分析し

          症例研究スタート

          定性分析のやり方Ⅲ

          インタビュー、デブリーフィングで直感や発見の瞬間がない、頭が沸騰しないインタビュー、いわゆる盛り上がらないFGIももちろんある。 それらも含めて、分析は箇条書きした調査目的にひとつずつ「回答」を書く作業である。 <速報・トップラインレポートも「寝かせて」から書く> ノートPCがない時代の話。デブリーフィング中にリーダーがレポートを書き始めていた。聞くと、FGI終了翌日の朝10時までに結論をA41枚にまとめてマネジャーに報告するというシステムで全ての定性調査プロジェクトが進行し

          定性分析のやり方Ⅲ

          定性分析のやりかたⅡ

          FGI終了後はデブリーフィングを必ず実施する。毎回やるのがよいが、ひとつのプロジェクトの最終グループ終了後は必ず実施する。 このデブリーフィングにはモデレーターを必ず出席させるし、モデレーターは必ず出席する。これはデフォルトにすべきである。 <デブリーフィングは混沌をめざす> デブリーフィングはプロジェクトリーダー(クライアント)かモデレーターが中心になって進行する。 デブリーフィングの目的は今、終わったインタビューの「結果分析やまとめ」であると考えるのは大いなる誤解である。

          定性分析のやりかたⅡ

          定性分析のやりかた

          定性調査の分析には集計表やグラフはない。発言録、録画・録音とモデレーターの記憶(メモ)があるだけである。 これらにモデレーション体験・マーケティング知識、消費者理解などを合わせて分析・報告書を作成する。方法論は体系化されてない。 <定性分析の6ステップ> FGI分析は、次の手順に留意して行う。①インタビュー中から分析視点を持つ、②インタビュー直後の「印象」を大事にする、③デブリーフィングを活用する、④冷却期間を置く、⑤始めたら一気に結論まで書く、⑥表現方法はクライアントの好み

          定性分析のやりかた