石井栄造

石井栄造

最近の記事

コンセプト評価の話法

グループインタビューのテーマは新製品のコンセプト評価がもっとも多いのではないか。 この世にまだない商品・サービスのコンセプトを文章で表現したものを提示して「買ってみたいか」まで聞き出すのだからある意味無謀な作業である。 <コンセプトシートは無言で呈示する> FGI(グループインタビュー)でコンセプトシートを提示するときは、モデレーターは無言か「どう?」くらいの発言促しに徹する。 間違っても「好きですか?嫌いですか?」などの評価を聞いてはいけない。 黙って提示し、しばらく時間を

    • マーケティングの生態系

      市場をひとつの生態系と考える。それはいくつかの生態系の重なり合いになる。海の生態系と陸の生態系はほぼ分離できるが、平原の生態系と山岳の生態系は重なり合う部分が多い。 生態系のメンバーはドメインを作り、ニッチ戦略を取り、レジリエンスによって進化していく。進化とは生き残り戦略である。 この生態系概念でマーケティング分析を行う。 <生態系と市場> 生態系概念は進化論と親和性が高い。ダーウィン自身は言ってないらしいが「適者生存」という考えがあり、「生き残った者が正しい。変化できた者が

      • ドメイン知識

        「データサイエンスを現実に適応するとき、ドメイン知識の不足から分析が『絵に描いた餅』になりやすい」というデータサイエンティストの嘆きを聞くことがある。切れる包丁を持っても魚の知識がないと三枚におろすこともできない。 <ドメイン知識って何?> ドメイン知識なしで分析し、提案を出すなどは普通、考えられないが、ネットや機械計測で自動的に大量データが収集されてしまい、そもそもの手法が、与えられたデータの中からある関係性、構造、仮説をみつけようとするものなので、データサイエンティストは

        • アイトラの違和感

          マーケティングリサーチでアイトラッキングを体験したリサーチャーは多いはず。 普段の調査では見ることのないヒートマップやゲーズプロットで新鮮な昂奮を味わうが、分析・解釈の段階で詰んでアイトラを放棄する?ことが多い。 <アイトラデータは納得的ではない> アイトラッキングのデータを扱うと、このデータはネットリサーチの集計データのようにそのまま使って分析・解釈するできないことに気づく。 それがわかった後はアイトラには必ずインタビューをセットにするようにしている。アイトラデータを取った

        コンセプト評価の話法

          モデレーター話法Ⅱ

          マーケティングインタビューは日常の会話や面談とは違う話法を使う。 日常会話や面談は「質問⇔返答」のスパイラルで成り立つが、モデレーター話法はそれとは違ったダイナミックスを持っている。 一般的なマーケティングインタビューは、認知、行動、評価、信念・習慣を明らかにする。それぞれの項目別にモデレーター話法を述べる。 <認知はマーケティングでは2つの意味内容で使い分けている> 認知というコトバは2つに分けられる。 ひとつは意識・態度に近い使い方で「健康に関する認知」などの使い方をされ

          モデレーター話法Ⅱ

          自己紹介はいらない

          前回はイントロダクションのやり方を述べた。そのときモデレーターの自己紹介に少しふれた。 今回は対象者の自己紹介を考える。FGIではほぼ自動的に自己紹介をするが、これの期待効果は何か。 <FGIの対象者同士の自己紹介はいらないと言われた> イントロダクションの最後に「皆さん、始めて顔をあわせた方たちですのでお一人づつ簡単な自己紹介をお願いします」と進めるのがFGIの常識、慣習になっている。 一度だけ外資のクライアントから「自己紹介など無駄な時間。自己紹介なしで本題に入れ」と要求

          自己紹介はいらない

          イントロダクション

          イントロダクション

          モデレーター話法

          現在、「定性調査を哲学する」をかかげてマーケティングインタビューの体系化をはかっている。 インタビュー対象者の人数での特性、背景科学による個性、話法の体系化を3つの柱に考えている。 まず、「聞き出す」と「発言間(行間)解釈」をキーにモデレーター話法を体系化したい。 <定性調査のモデレーターに期待されること> モデレーターは対象者自身のマーケティング活動への印象、評価を引き出す(聞き出す)を期待されている。聞き出すことは簡単ではないので対象者発言の「行間が読める」会話を続けるこ

          モデレーター話法

          遠いデータ

          市場調査は定量調査、定性調査ともに言語表現を使って仕事をしている。 使う言語は一意性が強い表現と多義性をもつ表現がある。 <言語表現の一意性と多義性> 調査を企画・実施・分析するとき、回答選択肢や対象者への問いかけで使われる表現(コトバ)を一意性と多義性で分ける。 一意性が強いとは誰がどこでどんな場面で表現しようと本人と周囲の人間の意味することと感情に大きな差異がない表現のことである。 多義性とはその表現が各自の文化や社会や状況によって意味があいまいになったり、意味内容や感情

          遠いデータ

          定性分析はパロール思考

          我々人類は複雑で体系だった言語を使用している。 言語の使い方に発話(パロール)と書記(エクリチュール)の違いがある。 パロール(発話)思考とエクリチュール・ラング(書記)思考に違いがあり、前者は自由で野性的であり、後者は論理的、倫理的で秩序だっている。 インタビュー分析はパロール思考、言語解析(KH-Coder)はラング思考である。 <おしゃべりな脳:内言仮説> 人は考えているとき、何かしているとき、頭の中で盛んにおしゃべりしているらしい。これを内言ともいう。 インタビュー対

          定性分析はパロール思考

          インサイトに至る

          マーケティングインタビューのモデレーション、バックルームで観察のときの「インサイト」にたどり着く方法を提案する。 <インサイトは定着した> インサイトは輸入?当初は購入の最後のひと押し、とか、心のボタンといわれ購入に強く結びついた解釈だった。 いっときはバズワードで終わるかと思われたが、多様な解釈を許容することでマーケティング用語として定着した。 多様な解釈とは新発見、Aha!体験、エウレカ、システム1のような概念とうまく融合し、「単なる気づき」として扱われることである。 マ

          インサイトに至る

          インタビューの分類

          ダーウィン進化論がスタンダードになってもリンネの分類学の価値は失われていない。 分類には知識の整理効果がある。ここでマーケティングインタビューの分類を試みる。 対象者の人数は1人、2人、3人以上の3つに分類でき、1on1インタビュー、ペアインタビュー、グループインタビューと名付けられている。 1人と3人以上のインタビュー対象者は基本は他人同士、独立した個人であり関係性はない。リサーチという方法論はサンプル同士は独立であるという原則があるので当然である。 2人のインタビューはこ

          インタビューの分類

          レジリエンス

          レジリエンスは物理学の用語で「外力・ストレスによる歪み」に対して「対抗、復元する力」と定義される。 心理学では、ストレスに対する抵抗力や回復力の意味で使われ、個人の特性として働き方改革、人事評価関連で使われている。 我々は、レジリエンスを「生態系のネットワーク構造」の視点で捉え直し、マーケティングのひとつの分析軸にすることを考えている。 <「レジリエンス思考」を定義する> 富士山麓の樹海も釧路湿原も独自の生態系(ニッチ)を保持することで持続性を得ている。 樹海は植生の遷移(変

          レジリエンス

          DaybyDayインタビュー

          同じ対象者個人に翌日も同じテーマでインタビューする方法をDaybyDayインタビューとし、発表したのは2010年のことです。 きっかけは、夫婦喧嘩、飲み屋での議論、上司の説教、など白熱した会話のやり取りの後、「ああ言えばよかった」「こう切り返すべきだった」と後悔・反省して眠れない夜を過ごしたことがあるとする人がたくさんいたことです。 さらに、「そうか!相手は実はこのことを言いたかったのかもしれない」「自分は案外そのように考えているのかもしれない」と自分の認知そのものの組替えに

          DaybyDayインタビュー

          世代論の終焉

          あまり、めくじら立てることではないが、Z世代を主語にしたコメントはしない方がよさそうである。 ニュースやネット記事ではキャッチーな表現で済むが、マーケティングレポートでZ世代を主語にするのは「無能の証明」と言える。 <世代論の期間とボリューム> 世代論の元祖、団塊の世代の出生数は800万人近い。 この人数が1947から1949年の3年間に生まれ、成長していったのだから、特に個性がなくてもひとつの塊とするだけで個性感がでてくる。 Z世代は1995~2009年に出生のコーホートと

          世代論の終焉

          カスタマージャーニー

          <カスタマージャーニーの目的と効用> カスタマージャーニーはダイナミックなPDCAサイクルを確立することを期待して作成される。 期待のひとつは、カスタマーの「きっかけから購入」までを旅程(ジャーニー)として分割し、その間の態度変容・感情変化を時系列に記述することで消費者心理の動きをわかろうとすることである。 もうひとつは、タッチポイントのそれぞれに自社のマーケティング施策が届いているか、ヌケはないか、それぞれの施策の効果が測定ができることである。こうしてPDCAサイクルを回し

          カスタマージャーニー