002. 神秘体験
二〇〇九年二月二十七日付の過去の記事が目にとまった。
「神秘体験がしたかった」と語った井上嘉浩さんは、オウムでも群を抜く神秘力の持ち主だった。
神秘体験とは、「クンダリニー」とよばれる人間に眠っている霊的エネルギーの覚醒とともに起こるさまざまな体験のことだ。「霊能力」「超能力」「神秘力」「神通力」どういう言葉をつかってもいい。オウムにいたことのある人に、「神秘的な能力、霊的な能力が高かった修行者はだれか」と質問すれば、多くが「アーナンダ師」の名をあげるだろう。「アーナンダ」は井上さんの宗教名(ホーリーネーム)で、ブッダの十大弟子の一人「阿難陀」に由来していた。
神秘体験にひかれていた井上さんには際立った霊性があり、厳しい修行をすることでさまざまな神秘体験をした。「ヨガ」にのめり込み、「真理」を求めていたつもりが、「事件」にかかわってしまったと彼は言う。「神秘体験」「ヨガ」「真理」、そして地下鉄に猛毒サリンをまき、無差別に人を殺す「テロ」。
それらをつなぐものは、この短い新聞記事からなにも見えてこない。
※クンダリニーは、クンダリーニ、クンダリニと表記されることもある。
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